【インタビュー】Chrono24創業者兼共同CEO「ティム・シュトラッケ」

2021.02.08

本誌やウェブクロノスでも再三取り上げてきたChrono24。創業者のティム・シュトラッケはマーケットの価格を比較するサービス会社を起こした後、Chrono24の共同CEOに転じ、同社を世界最大の高級時計売買プラットフォームに成長させた。なぜ彼は、畑違いのビジネスに足を踏み入れたのか?

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)


良い体験をもたらすのは良い情報と透明性、グローバルマーケット

「理由は3つある。ひとつはアントレプレナーシップ。私の両親も祖父も起業家だった。もうひとつは時計が好きだったこと。最初に買った新しい機械式時計はムーブメントが見えるもので、私はそれに魅せられた。最後のひとつは、深い時計専門知識を持たない人にも良い購入体験を与えたかった。家の購入と同じだね。経験のある人だけが、完全な家を手に入れられる。人々に良い体験をもたらすには良い情報と透明性、そしてグローバルマーケットが必要だと思った」

ティム・シュトラッケ

ティム・シュトラッケ
Chrono24創業者兼共同CEO。ドイツ生まれ。大学卒業後、アメリカでMBAを取得。その後、複数の会社を創業する。2006年に設立した価格比較サービスのMentasysGmbHを売却後、ベンチャーキャピタルを設立。加えて、介護ビジネスの共同創業者となった。2010年3月からは、Chrono24の共同CEOに就任。同社を100カ国以上から約50万点の高級時計を提供する世界最大の時計売買プラットフォームに成長させた。

 トリガーになったのは、彼がアンティークウォッチを探したときだった。あるサイトで時計を探した彼は、そのサービスに満足しなかったという。そんなシュトラッケは成功の理由をこう語った。「理由のひとつはもちろん安全性と透明性。それと最良のスタッフのみを集めてきたこと。そして、創業してから6〜7年の間は、私たちは予算をマーケティングではなく、サービスの改善のみに使ってきた。今なおマーケティング予算は少ないし、むしろ人々が褒めるようなサービスを作りたい」

 それと成功のもうひとつの理由は、多言語への対応だろう。現在Chrono24は、なんと22カ国語に対応している。「時計は非常にグローバルなものだ。ニューヨークでもパリでも東京でも同じ言語として語れる。他にそういうものは少ないだろう。それに時計は小さいからすぐ送れるし、送料も安い。消費税はかかるにせよ、ヨーロッパからは25ユーロもあれば海外に送れてしまう。時計とはグローバルなもの。だから私たちは翻訳サービスを始めた。コストがかかるが、究極的には良い投資になるはずだ。それぞれの地域でのローカルサービスのように思ってもらいたい」

 そんな彼は、時計市場の未来をどう見ているのだろうか?「人々は新品以上に、中古やヴィンテージウォッチに興味を持つようになった。ひとつは価格が理由。もうひとつはストーリーがあるからだ。多くの中古やヴィンテージウォッチは偉大なストーリーを持ち、しかも今後作られない。それともうひとつの理由は、資産の保全になるからだ」

 非常に長期的な視野で、サービスの充実に努めてきたChrono24。なるほど、同社が時計に関する世界最大のマーケットプレイスに成長したのも当然ではないか。

Chrono24
2003年に創業した高級時計売買マーケットプレイスが「Chrono24」である。現在は年間取引額24億ドルを超える世界最大の市場に成長を遂げた。現在、フォーカスしているのは「ロジスティックスサービスの充実、バイヤーとさらに関係を深めること、そして安全性が高く、より良いサービスの提供」。2019年には、写真を撮るだけでモデル名や詳細がわかる「Watch Scanner」サービスを開始した。


Contact info: https://www.chrono24.jp
https://www.chrono24.jp/info/watch-collection.htm