クラシック&ヴィンテージクロージングのディテールを随所にちりばめながらも、現代のアイテムにすんなりフィットする。それが「SHAMS」が手掛けるアイテムの魅力だ。ノスタルジックなコーディネイトも良いし、デニムやスニーカーに合わせても良い。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
パンケーキキャップには1940年代のデッドストックのTOOTAL LYSTAV FABRIC(レーヨン)を使用。2万8000円。「世界一クドイ白シャツ」の生地はトーマスメイソンのPortland 120(120番双糸のコットン)。しなやかさとハリを併せ持つ。4万5000円。ともに丸縫い(ひとりの職人が全工程を行う)。このほかにも派手な色使いの生地を用いたシャツも展開。fix Cufflinks“tragicomedy”は笑顔と泣き顔が対になっている。シルバー925。1万5000円。
ヴィンテージ感漂う、妥協を許さないモノ作り
最近のトレンドは、クラシックなディテールやシルエットを取り入れたアイテムだ。この「SHAMS(シャムズ)」も一見ノスタルジックだが、大胆な色やシルエットでクラシックからの“脱構築”を図っている。オーナー兼デザイナーの笹岡和弘氏いわく、ブランドには「古着も良いが現行品も良い。ビスポークも良いがプロダクツも良い」という柔軟な考えが根付く。古着と現行品の良いところを生かし、年代やジャンルを超えた表現を続けているというわけだ。
商品構成はシャツとパンケーキキャップを中心に、カフリンクスなどのアクセサリーを交えて展開。例えばシャツでは、1930年代風のロングポイントカラー(襟)や誇張したチビ襟のショートボタンダウンカラー、今回紹介するスタンダードなカラーなど、幅広く展開する。
この「世界一クドイ白シャツ」は、コンテンポラリーシャツブランドの「scylt(シルト)」とのコラボレーションから誕生したものだ。襟に、芯地と生地が接着していないフラシ芯と生地に接着させる接着芯を使用。首への当たりの柔らかさをフラシ芯で、経年変化によるバイアス生地の伸びを防ぐために接着芯を併用している。さらに剣ボロ(袖先のボタンホール周辺の切り込み部分)に施したグリカン(手縫いのカンヌキ留め)は、絹糸を用いた2連のカンヌキ仕様であり、1940年代~50年代のシャツに向けた笹岡氏のリスペクトがうかがえる。袖は身頃を完成させてからの後付けで、袖山の上半分は生地をいせ込み(形作るように縫う)、手でまつり縫い。下半分は脇の摩擦に耐えられるようにミシン縫いを用い、ボタンは極厚の白蝶貝を絹糸でしっかり根巻きしている。
一方のパンケーキキャップはフラットな1枚天井で、横幅が広いのが特徴。これは1910年代~30年代に流行したデザインで、現在巷で多く見られる、丸みのある8枚ハギのキャスケットや横幅の狭いハンチングとは異なるデザインだ。ただし、単なる当時の復刻ではなく、素材選びがユニークだったりする。シャツと帽子、いずれもクラシックなデザインをベースにしながら、現代の匂いをしっかりと表現している。これらは決してヴィンテージクロージングマニアのためだけには留まらない、現代のスタイルにフィットするアイテムなのだ。
https://www.webchronos.net/features/56730/
https://www.webchronos.net/features/53721/
https://www.webchronos.net/features/50952/