【インタビュー】H.モーザー CEO「エドゥアルド・メイラン」

2021.02.22

インテグレーテッドブレスレットを持つ「ストリームライナー」が大ヒットを遂げたH.モーザー。成功の大きな理由は、極めてアイコニックなデザインと独創的かつ優れたクロノグラフ機能に加えて、ブレスレットの完成度が非常に高かったためだ。

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)


ストリームライナーはH.モーザーのアイコンになるだろう

エドゥアルド・メイラン

エドゥアルド・メイラン
1976年、スイス生まれ。H.モーザーCEO。ペンシルバニア大学でMBAを取得後、アナリストに転じる。スイスでトゥールビヨンを載せた携帯時計の製作に携わった後、実父のジョージ・ヘンリー・メイランが会長を務めるMELBホールディングの取締役に就任。2013年から現職。H.モーザーの質を向上させるだけでなく、グラデーションを強調したフュメダイアルや挑発的な「アルプウォッチ」などで、一躍注目を集めるに至った。

「父はロイヤル オークに携わったし、作るにあたってはいろいろアドバイスをもらったよ。それでもブレスレットを完成させるには約7年かかった」。そう語るのはCEOのエドゥアルド・メイランだ。

「いろんな形をテストしてみた。3連や5連のブレスレットも作ってみた。結果、選んだのはシングルリンクだった。もっとも、表がシングルに見えるだけで、実はふたつのコマを内蔵している」。ブレスレットを完成させた彼は、このデザインにふさわしいムーブメントを考え、クロノグラフである「アジェングラフ」に至った。

「このムーブメントにフライバックを加え、クロノグラフであることにフォーカスした。時積算のインディケーションを省き、必要な情報だけを載せた。私たちの作っているパーペチュアルモデルと同じ考えだ」

 大事なのはクォリティであって量ではないと語るメイラン。その表れが極めてユニークなグロボライト製の針だ。これはセラミックスに蓄光塗料を混ぜた新素材である。

「アジェングラフが針のふらつきを抑えられるようになったので、針を長くできると思った。このモデルには可能な限り長い針を載せたかったので、軽いセラミックスは素材としてうってつけだった。蓄光塗料を混ぜたグロボライトは、ヘリテージのインデックスで採用し、今回は針に使った」

 彼は当たり前のように語るが、針先は昔のクロノグラフのように大きく曲がっている。おそらく削ったのだろうが、どうやって作っているのか想像もできない。製法を尋ねたところ「それは秘密」とのこと。

 加えて、H.モーザーのマーケティング戦略も功を奏した。

「正直、多くの予算を持っていなかった。ブランドアンバサダーなんて立てようもない。そこで5、6年前に、自分たちがアンバサダーになった。結果、アメリカなどでは功を奏したね。情報の共有とユーザーとのつながりができた」。確かに、インスタグラムで積極的にユーザーと絡むH.モーザーは、オンラインで最も成功したマーケティングの事例となりつつある。

「ストリームライナーは、パーペチュアルのようなアイコンになってほしいし、弊社の成長に寄与してほしい」と語るメイラン。「2021年はパーペチュアルのモデルを追加しますよ」とのことだから、その人気に一層の拍車がかかるに違いない。

ストリームライナー・フライバック クロノグラフ

H.モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ」
2020年にジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)のクロノグラフ部門で最優秀賞に輝いた限定モデルをレギュラー化。アイコンとも言えるファンキーブルーの文字盤を採用したのが違いである。完全に統合されたブレスレットを持つほか、現行品では極めて珍しいフライバック付きの同軸積算計を備える。自動巻き(Cal.HMC 902)。55石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約54時間。SS(直径42.3mm、厚さ12.1mm)。12気圧防水。480万円。



Contact info: エグゼス Tel.03-6274-6120


ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ 2020でH.モーザー社がダブル受賞

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シンプルを極めたクロノグラフの革命、H. モーザー「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」

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