映画「スター・ウォーズ」のレイア姫役で知られる女優キャリー・フィッシャーの腕時計は？

一流のセレブたちは一体どんな腕時計を選ぶのか？　世界のセレブたちのワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は映画「スター・ウォーズ」シリーズのプリンセス、レイア・オーガナ役で知られるキャリー・フィッシャーの腕時計を紹介しよう！

キャリー・フィッシャー

　1956年10月21日、米国カリフォルニア州出身のキャリー・フィッシャーは、ミュージカル映画「雨に唄えば」で知られる女優デビー・レイノルズと、歌手のエディ・フィッシャーという大スターの両親のもとに生まれた2世セレブだ。73年の高校生のときに母親が出演していたブロードウェイのミュージカルに出演し、女優としてキャリアを歩み始めた。映画デビューを果たしたのは75年で、2本目の出演作が77年の「スター・ウォーズ／新たなる希望」である。これが“銀河宇宙のプリンセス”レイア・オーガナ役としてのブレイクにつながり、共演のハリソン・フォード、マーク・ハミルとともに一躍スターとなった。2017年に急逝する直前まで女優として活動を続けた彼女の遺作は、同年の「スター・ウォーズ／最後のジェダイ」である。19年の「スター・ウォーズ／スカイウォーカーの夜明け」では、過去に使われなかった映像によってアーカイブ出演を果たした。

　今回の写真は、女優としての活動が軌道に乗り始めた1980年に撮られた1枚である。この時に右腕に着けられていた腕時計を見てみると、映っていたのは、ポルシェデザインがデザインを手掛け、オルフィナが時計製造を行った「ポルシェデザイン バイ オルフィナ」の腕時計であった。

「ポルシェデザイン バイ オルフィナ」

「ポルシェデザイン」は、ポルシェ911の初代モデルをデザインしたフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが創設したデザインスタジオである。1972年の設立から現在まで、時計やアパレル、筆記具、家具などを幅広く手掛けている。現在はポルシェの傘下にあり、時計はスイスにある独自の拠点で製造しているが、創業から2013年までの間は、3つの時計ブランドと順に手を組んで共同事業を行っていた。その最初のパートナーが「オルフィナ」だ。オルフィナは1922年にスイス・グレンヘンで創業し、軍用やパイロット向けのクロノグラフウォッチを得意とした時計ブランドである。なおポルシェデザインのパートナー企業に関して付け加えると、1972年から78年までがオルフィナで、78年から98年までIWC、98年から2013年までエテルナという順に移っていく。

　現在では多く見掛けるようになったオールブラック仕様を早期に実現したのが、この「ポルシェデザイン バイ オルフィナ」だ。フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェは自動車塗装の知識を活かし、時計にブラックPVD加工を施した。ポルシェデザインといえば斬新な素材の採用や処理法で知られるが、その原点がこのコレクションなのである。

　なお、コレクションの中核となったのはクロノグラフモデルだ。初期の頃はムーブメントにバルジュー7750を採用し、75年頃よりレマニア 5100へと変更した。そしてこのクロノグラフのペアウォッチとなる位置付けで展開されたのが、直径29mmのレディスモデルである。3針で月／日付表示付きのETAムーブメントを搭載したこのモデルには、ほぼ同じ外観の自動巻きとクォーツ式が存在した。6時位置に2行で「PORSCHE DESIGN / AUTOMATIC」あるいは「PORSCHE DESIGN / QUARTZ」と印字された違いがあり、キャリー・フィッシャーの着用モデルは前者の自動巻きだったと思われる。

素顔のキャリー・フィッシャーを感じる1枚

　この写真が撮られた1980年は、キャリー・フィッシャーが映画「ブルース・ブラザース」で共演した俳優のダン・エイクロイドと交際していたとされる時期だ。ダンは車好きとして知られた人物である。もしかしたらキャリーはダンの影響でこの時計を選んだのだろうかと筆者は想像を巡らせている。気が強く、毅然としたキャラクターのレイア姫とは少し違った、恋愛を謳歌する一面がこの写真からうかがえる気がした。