かつて時計業界にあって、質と量で際立っていたのが、スイスのバーゼルで開催されていた「バーゼルワールド」と、同じくジュネーブで開かれていた「SIHH」だった。しかし、バーゼルワールドは2020年で事実上廃止となり、一方のSIHHのみが「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」と改称して残り、2020年にその第1回が新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響によりオンライン上のみで執り行われた。現状、今や唯一と言える世界最大の時計見本市「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」がいよいよ4月7日より開催される。その傾向を予想する。
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」4月7日から13日までオンラインで開催!
2021年もウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブが開催される。しかも、旧バーゼルワールドから流れてきたメーカーなどを加えて、規模はいっそう拡大される。期間は4月7日(水)から13日(火)までの7日間。コロナ禍が続く現在、開催は引き続きオンラインのみの展開だが、4月14日(水)から18日(日)まで中国・上海で開かれる「ウォッチズ&ワンダーズ上海」には19のブランドが実際に出展する。
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ」 デジタル版に参加するのは以下の38ブランドである。
ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ参加予定ブランド
A.ランゲ&ゾーネ(リシュモン グループ)
アーノルド&サン(プロサー ホールディング:シチズン グループ)
ボーム&メルシエ(リシュモン グループ)
ブルガリ(LVMHグループ)
カール F. ブヘラ(独立系)
カルティエ(リシュモン グループ)
シャネル(独立系)
ショパール(独立系)
クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー(独立系:ショパール)
クロノスイス(独立系)
コルム(独立系)
グルーベル フォルセイ(独立系)
エルメス(独立系)
H.モーザー(独立系:MELBホールディングス)
ウブロ(LVMHグループ)
IWC(リシュモン グループ)
ジャガー・ルクルト(リシュモン グループ)
ルイ・モネ(独立系)
ルイ・ヴィトン(LVMHグループ)
モーリス・ラクロア(独立系:DKSH)
モンブラン(リシュモン グループ)
ノモス・グラスヒュッテ(独立系)
オリス(独立系)
パネライ(リシュモン グループ)
パテック フィリップ(独立系)
ピアジェ(リシュモン グループ)
パーネル(独立系)
レベリオン(独立系)
レッセンス(独立系)
ロジェ・デュブイ(リシュモン グループ)
ロレックス(独立系)
スピーク・マリン(独立系)
タグ・ホイヤー(LVMHグループ)
トリローブ(独立系)
チューダー(独立系:ロレックス)
ユリス・ナルダン(ケリング グループ)
ヴァシュロン・コンスタンタン(リシュモン グループ)
ゼニス(LVMHグループ)
また、「ウォッチズ&ワンダーズ上海」にリアル出展する19ブランドは以下の通りだ。
ウォッチズ&ワンダーズ上海参加予定ブランド
カルティエ
ロレックス
ジャガー・ルクルト
ヴァシュロン・コンスタンタン
IWC
ピアジェ
A.ランゲ&ゾーネ
ショパール
パネライ
ユリス・ナルダン
ロジェ・デュブイ
モンブラン
チューダー
ボーム&メルシエ
H.モーザー
アーミン・シュトローム
アーノルド&サン
クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー
パーネル
参加ブランドは大きく増えたが、懸念はある
2021年の大きな変化は、20年にバーゼルワールドを離脱した「ビッグ・ファイブ」がウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブに加わったこと。昨年の時点で、ロレックスとチューダー、パテック フィリップ、シャネル、ショパールのビッグ・ファイブは、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブと同時期に、別の見本市を開催することをほのめかしていた。しかし21年は、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブに合流することになった。
併せて、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループに属するブルガリ、ウブロ、ゼニス、タグ・ホイヤーにルイ・ヴィトンなども、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブに名前を連ねることとなった。意外なのは、オリスやノモス、モーリス・ラクロアといった独立系のメーカーが加わったこと。これは、見本市の幅を広げようとする主催者の意向が反映されているのかもしれない。
参加ブランドを増やすことで、魅力を増したウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ。しかしながら、懸念はある。小メーカーを集めて開催されていたブースが消滅したため、ニッチで高級なブランドは、新製品を発表する機会を完全に失ってしまったのである。もちろん、新しいウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブには、そういったブランドも一部残された。しかし、ウルベルクやMB&F、ローラン・フェリエなどが不在の見本市は、いささか魅力を欠くだろう。
ウォッチズ&ワンダーズで見るべきは文字盤、限定品、そして“ラグスポ”
では21年はどのような新作がお目見えするのか。実際に蓋を開けるまでは断言できないが、あえて予想すれば、大メーカーが中心となった見本市で、目立つのは“売れ線”になるだろう。コロナ禍から脱出すべく、各社は売れる時計にフォーカスするようになった。しかし、ムーブメントやケースに手を入れるほどの時間はない。そこで各社は、文字盤に手を加えて、消費者たちを刺激するようになった。
あくまで推測だが、この傾向は21年に、いっそう顕著になるだろう。また、景気のいかんを問わず時計を買い続ける「愛好家」たちに向けて、各社は多くの限定版をリリースするだろう。
さらに成熟市場に対し、今年も各社は、いわゆるラグジュアリースポーツウォッチを拡充するだろう。製法の進化によって、エントリークラスのモデルであっても、薄くて立体的な防水ケースを持てるようになった。モーリス・ラクロア「アイコン」の大ヒットは、この流れをいっそう加速させるはずだ。
21年の時計業界を代表する一大見本市が、いよいよ4月7日から開催される。webChronosおよび『クロノス日本版』では、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブはもちろん、同フェアと同時期に発表される新製品を可能な限りウェブサイトと誌面で取り上げていく。
明日、4月7日以降の本サイトに刮目すべし。