創業以来、ミラノの富裕層やハリウッドのセレブリティたちに愛されてきたラグジュアリーレザーブランドの「セラピアン」。クラフツマンシップ溢れる“メイド・イン・イタリー”のバッグは、審美眼を持つ日本のコニサーたちをも魅了するに違いない。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2021年5月号 掲載記事]
コットン混紡キャンバス生地にオリジナルカーフのカシミア レザーをあしらって仕上げられたトートバッグ。シボ加工を施したレザーの素材感が素晴らしく、カジュアルになりがちなキャンバス地とのコンビネーションながら、全体的に高級感を漂わせている。ファクトリーの熟練職人による逸品だ。内装は落ち着いたブラウンカラー。「LEISURE 14 EAST/WEST TOTE」。高さ42×幅44×マチ幅20cm。16万1700円(税込み)。
ハリウッド黄金期のスターも愛した「セラピアン」のバッグ
「セラピアン」は1928年にステファノ・セラピアンがミラノに創業したラグジュアリーレザーブランドだ。その後、2代目のアルダヴァスト・セラピアンを経て、現在は3代目となるジョバンニ・セラピアンに受け継がれ、ファミリービジネスとして90年以上の歴史を誇る。また、創業者のステファノ・セラピアンはデザインから製作までを行う職人であり、ヴィンテージレザーの収集家でもあったという。
妥協を許さないそのブランド哲学はレザーの品質だけではない。厳選された上質の皮をなめす工程から、細部の仕上げまで、すべての工程をイタリア国内で完結する真の“メイド・イン・イタリー”である。最高品質のセラピアンのバッグはミラノの上流階級の女性を中心に支持され、その後イタリア国内を飛び出し、ハリウッド黄金期のセレブリティに支持されていく。「黒蘭の女」(1938年)、「イブの総て」(1950年)に出演した大女優のベティ・デイヴィスをはじめ、「カサブランカ」(1942年)、「ガス燈」(1944 年)に主演し人気を博したイングリッド・バーグマン、20世紀を代表するエンターテイナーのフランク・シナトラも愛用していた。
映画の中では「おしゃれ泥棒」(1966年)にセラピアンのバッグが登場する。主演女優のオードリー・ヘプバーンがジバンシィのスーツを着て、白いセラピアンのバッグを手にしている。ちなみに、この作品の宝石はカルティエ。つまり、ジバンシィやカルティエと並んでセラピアンのバッグが世界に認められたということだ。
現在のセラピアンは革を編んだ「モザイコ」(1947年考案)、柔らかなカーフスキンの「カシミア」、水や傷に強い型押しカーフスキンの「エヴォルツィオーネ」、コットン生地にPVC加工を施した「ステパン」(1970 年代考案)など、独自のマテリアルをデザインごとに使い分けている。今回紹介するのはキャンバスとシボ加工のレザーを組み合わせたメンズコレクションの新作「LEISURE 14」だ。ナチュラルカラーと明るいブラウンがなんとも涼しげで、初夏に向けてぜひ持ちたいバッグと言える。
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