どんなものにも名前があり、名前にはどれも意味や名付けられた理由がある。では、有名なあの時計のあの名前には、どんな由来があるのだろうか? このコラムでは、時計にまつわる名前の秘密を探り、その逸話とともに紹介する。
シチズン時計の高度な技術を内蔵しながらも、哲学に裏打ちされたロマン溢れるブランド「カンパノラ」の名前の由来をひもとく。
コスモサイン初のメタルブレスレットを装備したモデル。文字盤が従来のブルーからブラックに変更され、果てしなく続く漆黒の宇宙に輝く星々を一層際立たせる。サファイアクリスタル風防には反射を抑えるコーティングに加え、表面の汚れを防ぐ撥水膜も施されているため、文字盤に表現された精緻かつ壮麗な宇宙の美しさを堪能することができる。クォーツ(Cal.4398)。月差±20秒。SSケース(直径44.0mm、厚さ15.5mm)。日常生活防水。34万1000円(税込み)。
(2021年4月24日掲載記事)
シチズン「カンパノラ」
シチズンの「カンパノラ」が2020年、誕生20周年を迎えた。
「カンパノラ」は、それまでのほかのどの時計にも似ていない、独特の魅力を持った時計だ。いちばんの特徴は、クォーツ式により永久カレンダーやミニッツリピーター、グランドコンプリケーションといった機械式時計の古典である超複雑機構を表現したところにある。そのため「カンパノラ」は、クォーツ式にありがちな「冷たさ」「つまらなさ」といったことがなく、さながらヴィンテージウォッチのような「愉しさ」「愛しさ」を感じることができる。そこが、それまでのどの時計にも似ていない。独特で魅力的なのだ。
2019年に、トノー型としては13年ぶりにフルモデルチェンジされたカンパノラのパーペチュアルカレンダー。西暦2000年を基準に前後100年のカレンダーを自在に呼びだすことができるのが大きな特徴。具体的には、1900年3月1日~2100年2月28日までの200年間について、2時位置と4時位置のプッシュボタンを押すことによって選んだ任意の日付が何曜日かを知ることができる。8時位置のリセットボタンを押すと、表示が現在時刻に戻る。上のモデルは黒文字盤にワニ革ストラップを合わせたモデル。クォーツ(Cal.6704)。月差±20秒。SSケース(縦52.8×横41.0mm、厚さ15.7mm)。日常生活防水。39万6000円(税込み)。
ただし、シチズンがこうした試みをしたのは初めてではない。
1996年にはアンティークウォッチの名店であるシェルマンのオリジナルモデル「グランドコンプリケーション」を製作。同モデルは1997年にスイスのラ・ショー・ド・フォン国際時計博物館の永久展示品に認定されている。
ほぼ同じスペックのグランドコンプリケーションが銀座の老舗時計店である天賞堂のオリジナルモデルとして製作され、いまも販売されているのを、ご存じの方もおられるのではないか。
さらに遡ると、1989年には「アバロン スーパーカレンダー」を発表。1900年から2100年の間の200年分のカレンダーを呼び出せる機能は、現在の「カンパノラ」にそっくりそのまま受け継がれている。
というように、シチズンは以前よりクォーツ式により複雑機構モデルを製作してきた。だが「カンパノラ」は、そのどのモデルにも似ていない。なぜか?
大きな理由のひとつは時代である。「カンパノラ」の誕生した2000年は、機械式時計の復権が揺るがないものとなり、高級機械式時計の世界的大人気が頂点に達しようとしていた時期だ。また、パネライに代表される大きく厚いケースなど、時計のデザインが転換期を迎えつつもあった。
だから「カンパノラ」は、そういう新しい時代に向けた、新しい時計としてつくられた。当時の資料によれば、技術者やデザイナーをはじめ、企画、営業など、多領域の部署からメンバーを集めるという、異例の全社的プロジェクトとして開発をスタート。市場分析から製品化まで約1年半がかけられたという。まさに「カンパノラ」は前例のない、まったく新しい時計として誕生したのだ。