シチズン「カンパノラ」の名前の由来をひもとく

 さて、「カンパノラ」のホームページによると、「カンパノラ」の名前の由来はこういう話だという。

 南イタリア・カンパニア地方にノラという名の町がある。紀元5世紀のある日、この町に響き渡った教会の鐘の音は、人類史上初めての時を知らせる音だった。ひとびとはそれを「カンパノラベル」と呼んだ。

 なんだかとても素敵な、御伽噺のような話である。でも、生来のへそ曲がりである筆者は、いつものように疑念を持ってしまう。というか、違和感があるのだ。なぜなら、イタリア人は「ベル」なんて英語は使わないはず。それに「カンパノラ」の「カンパ」が何なのか、この話ではわからないではないか。

 そこで思ったのは、こういうことだ。

 イタリア語で鐘を「campana」という。ちなみに、教会の鐘のような大きな鐘は「campana」、牧師の持っているような小さな鐘は「campanella」。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のカムパネルラは「campanella」である。

 だから「カンパノラ」=「campanola」とは教会の鐘「campana」にノラ「nola」を合わせた造語。それを翻訳して「カンパノラの鐘」となったのだろう。

 なお、カンパニア地方は「campania」。そのためだろうか、「カンパノラ」の「カンパ」をカンパニア地方のことだと思っているひともいるようだけれども、それは違う。それではまったく意味が成り立たないではないか。

 と、まぁ、それはさておき、ヨーロッパの教会では5世紀のころから鐘を鳴らすことで修道士たちの生活を管理することを始めた。そして、その鐘の音が外にも聞こえ、それが周辺のひとびとの生活のリズムをつくっていった。つまり教会の鐘は、最初期の時計であったのだ。

 だから「カンパノラ」とは、何とよい名前だろう。こんな素晴らしい名前を持った時計は、きっとほかにはないはず。やはり「カンパノラ」は、ほかのどの時計にも似ていない、独特の魅力を持った時計なのだ。

カンパノラ コスモサイン

カンパノラ コスモサイン CTV57-1231
北緯35度の全天星座を文字盤上に表現する「コスモサイン」。壮大な文字盤には、4.8等星以上の恒星1027個に加え、アンドロメダ銀河やオリオン大星雲などの星雲・星団を166個も配し、さらに恒星の表面温度を4色で表している。クォーツ(Cal.4398)。月差±20秒。SSケース(直径44.0mm、厚さ14.5mm)。日常生活防水。30万8000円(税込み)。

 

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福田 豊/ふくだ・ゆたか
ライター、編集者。『LEON』『MADURO』などで男のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』にて時計連載や動画出演など多数。


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