2006年に「L.U.C」の誕生10周年を祝して来日したとき、改めて「L.U.C」について訊くと、こう答えてくれた。L.U.Cとは「最高のもの」を目指したものなのだ、と。
「ご存じのように私たちは女性にとっての最高のものとしてジュエリーをつくっています。そこで10年前に私が思いついたのが、ならば男性にも最高のものをつくろう、ということ。そうして生まれたのが『L.U.C』なのです」
開発を行ったのは「ブレゲの再来」「神の手を持つ時計師」と称されるミシェル・パルミジャーニ。この人選にもカール-フリードリッヒの美学が感じられる。最終的にまとめたのはパテック フィリップ出身で、ジュネーブ時計学校の教授でもあった、ダニエル・ボロネージ。この人選にもまたカール-フリードリッヒの美学が感じられる。
なお、ダニエル・ボロネージは現在もショパールのムーブメント部門のトップを務めている。また、この開発の直後にミシェル・パルミジャーニが、ショパールがムーブメント工場を設立したのと同じスイスのフルリエに、自身のブランドであるパルミジャーニ・フルリエを創業したのはとても興味深い出来事でもある。
L.U.Cムーブメントの開発が始まったのは1993年。1996年に完成した初号機「Cal.L.U.C 1.96」は素材も、機構も、仕上げも、すべてが最高。まさしく「最高のもの」であった。続く2号機以降のL.U.Cムーブメントもすべてが最高。もちろん時計自体もすべてが最高につくられている。
そのため「L.U.C」は生産本数が多くない。だが、それもまたカール-フリードリッヒの美学によるものである。「製造本数は自分の目の届く範囲」というのを誕生以来の一貫した方針にしているのだ。
また、聞くところによると、近年ますます生産本数を少なくしようとしているらしい。そして、その目論見は、2019年にデビューした「アルパイン イーグル」の世界的ヒットが、より容易にするだろう。
だから「L.U.C」が今後、さらに稀少で、さらに精緻で、さらに美しい「最高のもの」になる可能性はきわめて高い。となれば、デビュー以来ずっと憧れているのだから、そろそろ手に入れた方がよいのかもしれない。
ただ本当に数が少ないから、気に入ったモデルが入手できるとは限らない。まぁ、そういうところも魅力なのだから仕方ないのだが。
2021年4月に発表されたL.U.Cの最新作。ショパール マニュファクチュール設立25周年を祝して、たった25本のみ製造される稀少なステンレススティール製の限定モデル。スイス公式クロノメーター検定局であるC.O.S.C.に加え、より一層厳格な基準で知られるカリテ フルリエ(QF)財団の認定も受けている。なお、同モデルはカリテ フルリエ財団の認定を受けた初めてのステンレススティール製のL.U.Cタイムピースである。自動巻き(Cal.L.U.C 96-09-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SS(直径39mm、厚さ8.92mm)。30m防水。世界限定25本。182万6000円(税込み)。
「L.U.C QF ジュビリー」が搭載するショパール マニュファクチュール製ムーブメントCal.L.U.C 96-09-L。香箱を垂直方向に重ねた積載式二重香箱を備え、L.U.Cの初号機である「Cal.L.U.C 1.96」と同じ約65時間のパワーリザーブを持つ。マイクロローターは22Kゴールド製。カリテᅠフルリエ財団が定める厳格な基準をクリアした証しである「FQF認定オート・オルロジュリー」の保証マークが輪列受けに刻まれている点にも注目。
Contact info: ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
ライター、編集者。『LEON』『MADURO』などで男のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』にて時計連載や動画出演など多数。
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