「アクアタイマー」は、IWCのダイバーズウォッチコレクションだ。ポルシェデザインとの提携による「オーシャン 2000」の発表以降、進化を続けるこのツールウォッチは、時計愛好家から支持され続けている。その歴史や特徴、注目モデルについて解説しよう。
IWC「アクアタイマー」と「オーシャン 2000」の歴史
「アクアタイマー」は、IWCが展開するダイバーズウォッチコレクションだ。かつて販売されていた「オーシャン 2000」とともに、その存在感と人気は傑出しており、今なおヴィンテージ市場では多くのファンを引きつけている。
同機がなぜ人々を魅了するのか、その深奥を探るためアクアタイマーの歴史をひもといてみよう。
アクアタイマーの誕生と歩み
アクアタイマーは、スイス北部シャフハウゼンで1868年に誕生した高級時計ブランドIWCによるコレクションだ。
1868年の創立以来、同社は「ポルトギーゼ」や「パイロット・ウォッチ」「ポートフィノ」「ダ・ヴィンチ」、そして「インヂュニア」といった数々のコレクションを世に送り出してきた。
そのなかのひとつであるアクアタイマーは、1967年に発表されたコレクションだ。登場して間もなく高い人気を博し、以来、時代に合わせて機能を進化させてきた。
アクアタイマーに搭載されるセーフダイブ・システム付き回転式アウター/インナーベゼルは、防水性の飛躍的な向上を実現した仕様である。優れた視認性とルックスの良さを両立させたデザインによって、高い実用性がありながらも優美な雰囲気を放っている。
ポルシェデザインとの技術提携
IWCは、1980~90年代にかけて、ポルシェデザインとのコラボレーションによって、数多くのコレクションを世に送り出してきた。そのなかでも特に高い人気を集めたモデルが、1982年に登場した「オーシャン 2000」だ。
ポルシェデザインとの協業によって、IWCはチタン加工技術の分野で高度な技術を培った。チタン加工における技術は、ビジュアル面のみならず、ダイバーズウォッチとしての性能を飛躍的に向上させた。軽量化と高い耐水圧性能を備えることで、過酷な環境下においても確実な動作が約束されるのである。
アクアタイマー・オートマティックの特徴
アクアタイマーには、他のダイバーズウォッチにはない独自の機能が搭載されている。「オーシャン2000」の登場以降、アクアタイマーはプロフェッショナル仕様のダイバーズモデルとして試行錯誤を重ねながら進化を遂げていった。なかでも、同コレクションを象徴する機能が独自の回転ベゼルだ。
アウター式とインナー式回転ベゼルのメリット/デメリット
「オーシャン2000」を発表して以降、IWCがとりわけ試行錯誤を続けてきたのが回転ベゼル。潜水経過時間の計測が行える、ダイバーにとっての命綱となる重要な機能だ。
ダイバーズウォッチに用いられる回転ベゼルには、インナー式とアウター式の2種類が存在する。インナー式は防水性を高められ故障も抑えられるが、操作性に難がある。一方のアウター式は操作性が良い反面、誤作動を起こしやすいうえに故障する可能性も高くなる。
つまり、両者ともメリットとデメリットがあるのだが、このふたつのメリットを融合させたのが、2014年に発表されたアクアタイマーだ。
高い操作性と誤作動の防止を両立させた独自の回転ベゼル
2014年に発売された第6世代アクアタイマーが搭載したのは、セーフダイブ・システム付きの回転式アウター/インナーベゼル。アウターベゼルを反時計回りに操作すると、ケース内の歯車に噛み合い、ダイアル外周にセットされたインナーベゼルが反時計回りに回転する構造だ。
さらにこの回転ベゼルが実用的なのは、歯車に搭載されたクラッチ機構。アウターベゼルを時計回りに回転させた場合は歯車との連結が外れ、インナーベゼルは回転しないため、海中でも誤作動を起こすような心配がない。
アクアタイマー・オートマティックの注目モデル
信頼性の高い回転ベゼルと視認性を兼ね備えた同コレクションの中でも、特に注目される2モデルについて紹介しよう。
「アクアタイマー・オートマティック」
自動巻き(Cal.32111)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。30気圧防水。92万4000円(税込み)。
「アクアタイマー・オートマティック」Ref.IW328801は2022年に発表された、アクアタイマーの新世代モデル。前モデルから外観上の大きな変更点はなく、30気圧の防水性能や、特徴的なセーフダイブ・システム付きアウター/インナーベゼルの搭載も前モデルを踏襲している。
最大の違いは搭載されるムーブメント。Cal.30120から自社製のCal.32111に変わり、パワーリザーブは従来の約42時間から約120時間へと大幅に延伸した。
2022年発表のアクアタイマー・オートマティックは、ブルーダイアルのモデル以外にも、ブラックダイアルとブラックのラバーストラップを組み合わせたRef.IW328802、ブラックダイアルにブレスレットを組み合わせたRef.IW328803の3モデルがラインナップされている。
自動巻き(Cal.32111)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。30気圧防水。92万4000円(税込み)。
自動巻き(Cal.32111)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。30気圧防水。108万3500円(税込み)。
「アクアタイマー・クロノグラフ」
自動巻き(Cal.79320)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。SSケース(直径44mm、厚さ17mm)。30気圧防水。111万1000円(税込み)。
耐食性に優れ、30気圧の防水性能を備えたステンレススティール製ケースや、潜水時の安全性を向上させる回転式アウター/インナーベゼルといった性能はそのままに、クロノグラフ機能を加えたモデルが「アクアタイマー・クロノグラフ」Ref.IW376806だ。
深海を想起させるブルーダイアルには3つのインダイアルがレイアウトされているが、幅のあるインデックスや時分針、インナーベゼルに記された潜水時間の目盛りには夜光塗料を塗布し、水中でも高い視認性を確保する。
独自のクイック交換システムを採用しており、ブルーのラバーストラップは、別売のブレスレットに交換も可能だ。
回転ベゼルの操作性と独創のルックスを堪能しよう
「アクアタイマー」は長年の試行錯誤によって完成した回転式アウター/インナーベゼルを搭載してダイバーの安全性を高めるのみならず、マッシブでスポーティーなルックスも印象的なコレクションだ。
とりわけ、ムーブメントを自社製に変えた最新の「アクアタイマー・オートマティック」は実用性も大幅にアップ。シンプルなデザインながらも存在感を放つアクアタイマーを手に、その魅力を堪能してみてはいかがだろうか。