【インタビュー】IWC CEO「クリストフ・グランジェ・ヘア」

2021.06.26

リシュモン グループの中でも、極めて評価の高いCEOがクリストフ・グランジェ・ヘアだ。彼は、いま時計業界が抱えている課題に、常に明確すぎるほどのコメントを残してくれる。聞きたいのは今年の新作、環境への取り組み、そしてジェンダーレスへの対応だ。

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年7月号 掲載記事]


辣腕CEOが語るサステナビリティとジェンダーフリー

クリストフ・グランジェ・ヘア

クリストフ・グランジェ・ヘア
1978年、ドイツ生まれ。ロンドン芸術大学などを卒業した後、建築家としてキャリアを積む。2006年、IWCに入社。IWCミュージアムの設計や、IWCとロジェ・デュブイのリブランディングに携わった後、複数の部門でさらなるキャリアを重ねる。17年より現職。元建築家である彼は「建築家が定義するのはビジョンの構築。建築家は社会の文化的創造者です」と語る。

「なぜ今年、直径43mmのビッグ・パイロット・ウォッチを出したのか? 冗談めかして言うと、その歴史はダウンサイジングの歴史だよ。当初は55mmで、46mmになり、今年は43mmだ。もっとも、2002年にビッグ・パイロット・ウォッチを発表した時は、腕の太い人たちが多い国が主なマーケットだった。オランダのようにね。しかし今はブランド名の通り、市場はインターナショナルになった。そこで小さなモデルもリリースした。IWCの時計は実際に使うものだからね。装着感に配慮したものだ」

 続いては環境問題。IWCはスイスの時計メーカーの中で、環境対策が一番進んでいるとユネスコに評価された。

「もともとジョーンズが会社を起こした時点で、IWCはサステナブルな会社だった。水力で発電し、それで工場を動かす。また、昔からデザインも設計も製造もマーケティングも、ひとつの場所で行ってきた。パンデミクになって、どこで作られるのかは重要になった。その点、ひとつの場所で製作してきたIWCには歴史がある。今後重要なのは、時計に関わるすべての要素をダウンサイジングすることだと考えている。シッピング、サプライチェーン、ショップ、マテリアルなど。非常に長い旅だが、やらねばならないと思っている。IWCの時計はそもそも長く使えるものになっている。これはサステナビリティだろう」

 そして最後の質問は、各メーカーが取り組むジェンダーレスへの対応だ。筆者の知る限り、IWCは性別を超えた取り組みも早かった。

「私たちは性別でターゲットグループを分けていない。区別するのはあくまでライフスタイルだ。アビエーション、ナビゲーション、ダイビングなど、性別ではない。新しくチューリヒにできるフラッグシップストアは、コンセプトをクラシックなレーシングの世界に寄せている。伝統的な見方をすれば、これは男性向けだろう。しかし、性別は関係ないし、男性用、女性用のコーナーも設けていない。子供用は必要かもしれないが(笑)。事実、1994年以降、『ポルトギーゼ・クロノグラフ』は多くの女性にも愛されてきた。デザインは性別ではなく、ライフスタイルに応じたものになっていくだろう。そして私たちは伝統的なジェンダーのステレオタイプに対して、こういった議論を続けていく必要があると思うね」

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ エディション“AMG”

IWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ エディション“AMG”」
「パイロットウォッチはアビエーションだけでなく、どこでも使えるスポーツウォッチ」というグランジェ・ヘアの意見を反映した新作。ケースには軽いチタン素材を、文字盤にはカーボンを採用する。限定版ではなくレギュラーモデルである。自動巻き(Cal.69385)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。Ti(直径43mm、厚さ14.9mm)。6気圧防水。128万1500円(税込み)。



Contact info: IWC Tel.0120-05-1868


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