【インタビュー】パネライ CEO「ジャンマルク・ポントルエ」

2021.07.10

これまで海とミリタリー、そして自社製ムーブメントを打ち出してきたパネライ。2021年の新作では、海の環境保護というテーマを打ち出した。「日本は環境問題に敏感だね」という話題から話を始めたのが、パネライCEOのジャンマルク・ポントルエだ。

広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年7月号 掲載記事]


環境対策としてサプライヤーを公開したのは初だ

ジャンマルク・ポントルエ

ジャンマルク・ポントルエ
1964年、フランス生まれ。オーデンシア・ナント経営学院を卒業後、レザーグッズのメーカーでセールスディレクターを務めた後、LVMHグループに参画。ジバンシーを経て、2000年にリシュモン グループに入社。モンブランで副社長を務めた後、11年にロジェ・デュブイに転籍。12年2月から同社のCEOとなった。18年4月1日から現職。ラインナップの整理を終えた彼は、環境対策に取り組む。

「私たちのエコロジーに対する取り組みが『エコロジコ』であり、今年発表したコンセプトウォッチの『サブマーシブル eLAB-ID』だ。これは素材の約98%がリサイクルによるもので、取り組んだサプライヤーの名前も明かしたもの。スイスの時計業界では、サプライヤー情報は秘密だ。しかし私たちは情報を開示したし、技術を利用されることを望みたい。日本のメーカーが私たちにアクセスしてくれるなら、素材のレシピやプロトコルを示すよ。ちなみに、レギュラーモデルの『ルミノール マリーナeスティール』もある。これは素材の約60%をリサイクルしたもの。また、環境問題を教育すべく、ユネスコにも協力している」

 2017年、スイスのユネスコは、同国にある時計・宝飾メーカーの環境に対する取り組みをランク付けた。以降、各社は急速に環境問題に取り組むようになったが、まさかパネライが、サプライヤーまでオープンにするとは意外だった。

「サプライヤーやコストなどを明かしたのはパネライしかないと思うね。昨日、パネライが使っている夜光塗料の会社の人と会った。彼はパネライが使っている夜光塗料を使いたいという電話を毎日受けているそうだ。ちなみに情報を開示したからといって、紹介料はもらっていないよ(笑)」

 彼のもうひとつの取り組みが、一層のイタリア化だ。確かにパネライのビデオを見ると、今まで以上にイタリアが強調されている。フランス人である彼なればこその着眼点だろう。しかし、何がイタリアらしいと思うのか?

「イタリアニティとは佇まいだと思う。パネライは、イタリアが生み出す美しいもの、着るもの、アクセサリーなどに影響されたデザインオブジェクトだ。いろんなオブジェクトが影響し合っているのがイタリアだ。イタリア人は楽観的でデザインに長けている。パネライは機能と歴史に従っているが、こういう環境の影響を受けた。パネライがデザインスタジオをイタリアに持っているのもそういった理由だ。私にとって、イタリアとは文化と美だと思う。それと色だね。ちなみに、ストラップの種類は、時計の3倍もあるよ(笑)」

 ミリタリーと海の歴史に加えて、環境保護とイタリアニティを強調する現在のパネライ。ここまで変わるとは予想外だった。

サブマーシブル eLAB-ID™

パネライ「サブマーシブル eLAB-ID™」
ECOチタン™を含む、素材の98.6%をリサイクル素材で作り上げたモデル。夜光塗料であるスーパールミノバや、脱進機に使われるシリコンも100%リサイクルされたものだ。また時計業界では初めて、サプライヤー名やコストなども開示している。自動巻き(Cal.P.900e)。17石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。ECOチタン™(直径44mm、厚さ13.35mm)。300m防水。世界限定30本。745万8000円(税込み)。



Contact info: オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110


2021年 パネライの新作時計まとめ

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パネライ【2021 新作】リサイクルベースの素材でつくられた「サブマーシブル eLAB-ID™️」

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海軍由来パネライの看板「ルミノール」を解説。主要モデルと選び方

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