Q:なぜ機械式時計はパワーリザーブが長くなった?
最近の機械式時計では脱進機に軽量なシリコンを使用するため、フリクションロスが改善され、パワーリザーブが延びる傾向にあります。また、香箱に収められる主ゼンマイの長さをより長くするための試みや、振動数を落とすことでもパワーリザーブは長くなります。
A:シリコンを脱進機に使用し、フリクションロスを減らした
もはや機械式時計の性能は延ばすことが難しい。20年前はそう言われていました。しかし現在の機械式時計は性能を落とすことなく、耐磁性能を高めたり、パワーリザーブを延ばしたりすることに成功しました。磁気に強い素材を使えば、機械式時計の耐磁性を上げる事は難しくありません。ではどうやってパワーリザーブを長くしたのでしょうか?
2000年以降、各社は磁気に強いシリコン素材を脱進機などに使うようになりました。この素材は、加えて軽いという特徴がありました。その結果、シリコン脱進機を載せたムーブメントは脱進機のフリクションロスも改善され、パワーリザーブを延長することが可能になったのです。
最近目立つアプローチは、時計を動かす主ゼンマイを収める香箱の壁を薄くすることや主ゼンマイを巻きつける真を細くすることで、より長い主ゼンマイを載せられるようにするというものです。以前は、香箱に収められる主ゼンマイの体積は理論上決まっていました。
しかし、主ゼンマイの素材が進化した結果、よりゼンマイを詰め込めるようになったのです。その結果、いくつかのムーブメントはパワーリザーブを2倍近くまで延ばすことに成功しました。
振動数を落とすアプローチも有効
もうひとつ見られるアプローチが、時計の振動数を落とすと言うものです。例えば2万8800振動/時を2万1600振動/時に落とせば、そのエネルギーをパワーリザーブに振り分けることができます。もっとも、振動数を落とすと携帯精度、つまり実際使う際の精度が悪くなるため、この手法が使えるムーブメントは限られます。ロンジンのCal.L.888.5はシリコン脱進機や振動数の変更など、これらの方法を活用した好例です。
では、再調整に出さずして精度を良くする方法はないのか。最も有効な方法は、保管するときに時計の向きを変えることです。機械式時計は、置かれた向きによって精度が大きく変わります。これを「姿勢差誤差」といいます。姿勢差誤差はやっかいなものですが、使い方によっては、1日の精度を調整する有用な手段になるのです。
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