驚くべき結果を残した「第12回香港時計オークション」、その結果を振り返る

2021.07.05

海外で行われる時計オークションについての情報をお届けする、webChronosの新連載。第1回はオークションハウス「フィリップス」が2021年6月5日(土)・6日(日)の2日間に開催した「第12回香港時計オークション」の結果を振り返り、実際に落札された注目モデルを紹介する。

第12回香港時計オークション

©️PHILLIPS
土井康希(クロノス日本版):文
Text by Kouki Doi(Chronos-Japan)
2021年7月5日掲載記事

数々の“アジア最高額”を記録した「第12回香港時計オークション」

 英国発祥のオークションハウスであるフィリップスは、オークション事業のコンサルタントを行うバックス&ルッソ社と共同で「第12回香港時計オークション」を開催した。2021年6月5~6日の2日間で行われたこのオークションでは、さまざまな良い結果が生まれた。

 驚くべきことに、アジアで行われた時計オークション落札総額の史上最高額を記録したのだ。出品されたのはクロックなどを含む時計311点で、落札合計金額は1億9123万9320香港ドル。これを日本円に換算すると27億円(1香港ドル=14.30円 2021年7月5日現在、以下同)を超える額となる。事前に掲げられた最低落札予想額は合計9100万香港ドルだったのに対し、その2倍以上の金額に到達したのだ。

 これに加えて100%の販売率を実現。出品された時計が完売したことを示す「ホワイトグローブ」を達成した。これらの結果から、今回の「第12回香港時計オークション」は、アジアで開催された時計オークションの中で最も成功したと言えるだろう。

第12回香港時計オークション

©️PHILLIPS
今回のオークションで最高落札額を記録したパテック フィリップ Ref.2499の競りを行う、フィリップスのアジア時計部門ヘッドのトーマス・ペラッツィ氏。

「ホワイトグローブ」達成の理由のひとつとして、オンラインでの参加者が急増したことが挙げられる。腕時計は近年、資産価値という観点からも世界中のコレクターから注目を集めており、国や地域に縛られないオンラインという場は、参加へのハードルを大きく下げている。また、昨今の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、地域間の移動が難しくなっていることも、オンラインが重宝される要因のひとつである。

 オンラインでの参加者は55カ国から1705人にも上り、前のシーズンと比較して約30%の増加が見られた。これは、フィリップスがアジアで開催したオークション参加者数で最も多い数となった。


スペシャリストの見解とは?

 記録的な結果をもたらした今回のオークションについて、フィリップスのアジア時計部門のヘッドを務めるトーマス・ペラッツィ氏からコメントをいただいた。内容は以下の通りだ。

トーマス・ペラッツィ

トーマス・ペラッツィ
イタリア系スイス人。オークションハウス「フィリップス」のアジア時計部門ヘッド。アンティコルム・イタリア時計部門、サザビーズのヨーロッパ時計部門副部長、クリスティーズ時計部門副部長、クリスティーズのヨーロッパ時計部門のヘッドを歴任した後、2017年11月にフィリップスへ入社。現在は香港を中心に活動する。インターナショナル・オークショニアでもある。

「フィリップスの春に行われた時計オークション(香港オンライン:4月、ジュネーブ:5月、香港:6月)すべてにおいてホワイトグローブセール(落札率100%)を記録した。このような結果は今まで見られなかった。新型コロナウイルスの影響でオンラインの参加者が増えているのも、その要因のひとつだと思う」

「世界各国から新規の参加者、また比較的若い人の参加が目立つ。そのため、これからもオークションというプラットフォーム(特に稀少価値が高く、品質や状態が良いアイテム)は成長していくと思われる」

「出品された数多くの時計の中では、独立時計師の初期の作品が目立った。これらは数が少ないため、金額が伸びる傾向にある。最も驚いた結果は、アラン・シルベスタインの『マリーン トゥールビヨン “ブラック シー”』(ロット809)だった」