世界のセレブたちがどんな時計を着けているのか、ワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は「平成の怪物」こと松坂大輔がボストン・レッドソックス時代に着用していたベル&ロスを紹介する。
Text by Yukaco Numamoto
2021年7月30日掲載記事
ついに引退する「平成の怪物」松坂大輔
「平成の怪物」と呼ばれたプロ野球選手の松坂大輔投手が2021年7月7日、今シーズン限りでの現役引退を発表した。2001年の沢村賞をはじめ最多勝利3回、パ・リーグの投手としては最多記録となる7度のゴールデングラブ賞など、華々しい経歴を残した松坂が、メジャーリーグ時代に使用していた時計を見てみよう。
ベル&ロス「BR 03-94 カーボン」
航空計器からインスピレーションを受けたアイコニックなデザインが特徴のBR 03-94シリーズ。3時位置にスモールセコンド、9時位置に30分積算計が配置されるデザインだ。42mm径のBR 03シリーズが初めて発表されたのは2006年のことである。当時まだ時計業界に本格参入していなかったラルフ ローレン(時計愛好家で知られる)からも評価が高く、その熱愛ぶりは自社の広告に登場させるほどであった。
現行品とは異なるSSとPVDの仕様
松坂が着用している写真は2011年のものなので、現行品の「BR 03-94 ブラック マット」ではなく、その前身モデルである「BR 03-94 カーボン」だろう。BR 03シリーズの人気が上がりブランドの知名度も世間に広まってきた時期である。
現行のBR 03-94 ブラック マットでは高い耐摩耗性を持ち、変形しにくく、ステンレススティールよりも軽量であることが特徴なセラミックス製のケースを採用しているが、BR 03-94 カーボンはSSケースにブラックPVDだ。
ブラックマットとカーボンの2モデル。ケース素材も異なるが、実はケースの構造も全く別物だ。ねじ込み式裏蓋が使えない角形ケースで防水性能を付与することは困難だ。そのため松坂が着用するカーボンを含め、かつてのベル&ロスでは裏蓋とミドルケースが一体化した2ピースケースを採用することで100m防水を実現したのである。
しかし、ケースの加工精度が上がったためだろう、ケースは3ピースに改められた。BR 03-94 ブラック マットも同様だ。同じ防水性能が可能ならば、より整備性に優れる3ピースを選ぶのは当然だ。今やベル&ロスは3ピースの角形ケースで300m防水のダイバーズウォッチまで作れるようになっているのだから、ブランドの進化を感じずにはいられない。
自動巻き(BR-CAL.301)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS+PVD(直径42mm)。100m防水。販売終了。
メジャーリーグのボストン・レッドソックス在籍時代、松坂は「Daisuke(大輔)」という名前にDice(サイコロ)と、三振を表すKをかけて「Dice-K」の愛称で親しまれていた。航空計器をモチーフにした角形ケースのBR 03-94と、かつて150km/hを超える速球でメジャーリーグでも活躍をした勝負師には、「速さ」という点で通じるものが感じられる。もっとも、松坂本人がそこまで考えてこの時計を選んだかどうかは不明だが、潜在意識的にスピードをイメージするものを好む傾向があっても不思議ではないないだろう。