2000年に誕生したシチズンのカンパノラ。「宙空の美」をデザインコンセプトとして、限られたスペースに奥行きと立体感を巧みに表現。時に荘厳な神殿を思わせる建築物のようでもあり、時に星々が煌めく宇宙を具現化した神秘的な意匠によって多くの時計愛好家を魅了してきた。その「エコ・ドライブ コレクション」の最新作は、月と星がさらに際立ち、時を愉しむ悦びを与えてくれる。
鈴木幸也(本誌):取材・文 Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年9月号掲載記事]
さらに視認性と審美性を高め、調和させた「カンパノラ エコ・ドライブ」
カンパノラのデビューから11年後に発表された「エコ・ドライブ コレクション」。光のエネルギーを時計の動力に換えるエコ・ドライブらしく、宇宙の景観を文字盤デザインのモチーフとし、6時側のサブダイアルを宇宙船の窓に見立て、漆をベースとして金粉蒔きや螺鈿細工などによってそこから見える宇宙を巧妙に表現。さらに、12時側のサブダイアルを電気鋳造で成形し、緻密な放射状のパターンを与えることで宇宙空間に輝く太陽を象徴させた。これらのディテールを積み重ねることによって、デザインコンセプトの「宙空の美」は壮大な〝宇宙の美〞へと見事に昇華され、カンパノラらしさを体現すると同時に、時計愛好家の間で人気を博した。
それからさらに10年を経た2021年。このエコ・ドライブ コレクションがリニューアルされた。黒をベースとした「天彩星(あまいろほし)」、白ベースの「天満星(あまみつほし)」、そしてブルーを基調とした「紺瑠璃(こんるり)」の3モデルである。前作では漆と金粉を組み合わせるなど、モデルによって漆による〝宇宙の美〞の表現を変えていたが、今作ではすべて漆と螺鈿の組み合わせに統一された。だが、漆の面積が拡大され、螺鈿もその大きさと形が多様になり、数を増やすことで一層輝きを増している。
文字盤全体をホワイトとシルバーカラーのモノトーン調に揃えることで、漆と螺鈿によって表現された6時位置の“満天の星”を強調した天満星。リング状のソーラーセルを見返し部に配置し、そこで受光することにより、電気鋳造による精緻な金属文字盤の採用を可能にした。光発電エコ・ドライブ(Cal.8730)。月差±15秒。SS(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活防水。34万1000円(税込み)。
そして、最も変わったのが、6時位置のムーンフェイズ表示である。丸い小窓によって月の形を表示していた前作に対し、今作では傘型の窓に変更され、大きくなった開口部からのぞく月には、より写実的な表情が与えられた。この月のディテールは8回も版を重ねて印刷することで描写されるほど凝ったものだ。
こうしてカンパノラを象徴する「宙空の美」は、より宇宙的で優美なる意匠に洗練されつつも、時計としての視認性が向上した点も見逃せない。3時位置と9時位置に配された月と曜日表示は、文字が大きく太く改められ、読み取りやすくなったにもかかわらず、書体はより優雅なフォルムに整えられた。加えて、時分秒針には蓄光塗料が塗布され、かつての装飾的なフォルムから、より時計としての機能性の高い形状へと更新された。
デビュー以来、「時を愉しむ、日常を愉しむ、個性を愉しむ」をテーマに、常にその時々の先端技術と職人技を盛り込んで進化を遂げてきたカンパノラ。最新モデルもその伝統を踏襲し、個性的でロマンティックな意匠を受け継ぎつつも、視認性・判読性を高めるという日常使いにおける利便性と実用性に配慮したアップデイトが施された。光が駆動するエコ・ドライブを、月と星とともに愉しむには最適な新作3モデルである。
アワーマーカーリング、時分針と12時位置の日付表示針をブルー基調とし、さらに6時側のサブダイアルに青漆を採用することで、宇宙から見た地球を表現した紺瑠璃。同時に、紺色のカーフストラップを採用することで色味に統一感を持たせた。光発電エコ・ドライブ(Cal.8730)。月差±15秒。SS(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活防水。28万6000円(税込み)。
シルバーカラーの五徳リング以外、ローマンインデックスを配したアワーマーカーリングとメインダイアル、曜日・月表示ディスクを黒ベースでまとめた文字盤を持つ天彩星。ブラックダイアル上で大小さまざまな螺鈿の星々が一層際立つ。リング状のソーラーセルを採用することで、多彩な文字盤表現が可能となった。光発電エコ・ドライブ(Cal.8730)。月差±15秒。SS(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活防水。34万1000円(税込み)。
動画コンテンツ「CAMPANOLA STORIES」
シチズン カンパノラ公式サイトでは動画コンテンツ「CAMPANOLA STORIES」を配信中。
本記事で紹介したエコドライブ・コレクション以外にもカンパノラの独創性や魅力に触れることができる。
「宙空の美」をデザインコンセプトとしたカンパノラがどのように生まれたのか?
開発ストーリーやカンパノラ コスモサインの設計者インタビュー、漆塗り文字盤制作を担った伝統工芸士 儀同哲夫氏や、カンパノラのオーナーでありエヴァンジェリストを務める生物学者 福岡伸一氏へのインタビューなどを通して語られるカンパノラの世界を覗いてみよう。
CAMPANOLA STORIES
唯一無二の存在感を放つカンパノラについて、
作り手や使い手、さまざまな人がその魅力を語るストーリー。
https://campanola.jp/stories/index.html
https://www.webchronos.net/features/51574/
https://www.webchronos.net/features/63786/
https://www.webchronos.net/news/64709/