2014年から世界最薄ムーブメントの記録を塗り替え続けるブルガリの「オクト フィニッシモ」コレクション。2021年の新作としては、7度目の世界記録を樹立した「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」が大きな話題を呼んだが、ここではそれ以外の既存シリーズに加わった特に魅力的な3本を紹介しよう。待望のステンレススティールケースを採用した自動巻き3針の「オクト フィニッシモ S」と、機械式クロノグラフ&GMTムーブメントを搭載する「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」よりステンレススティールケースモデル、そしてスポーティー感を増したラバーストラップモデルだ。
Text by Roger Ruegger
2021年9月7日掲載記事
7つの世界最薄記録を誇るブルガリ「オクト フィニッシモ」コレクション
2014年に衝撃的なデビューを果たしたブルガリの「オクト フィニッシモ」。ミニマルなデザインでありながら、超薄型のケースがコンテンポラリーな要素となることを証明し、異彩を放った。ブルガリは「オクト フィニッシモ」によって、自社の伝統を進化させる新たなアイコンを生み出すことに見事成功したのだ。
素晴らしいことに、「オクト フィニッシモ」は誕生からこれまで7つもの世界記録を達成してきた。手巻きフライングトゥールビヨン(2014年)、ミニッツリピーター(2016年)、3針自動巻き(2017年)、自動巻きトゥールビヨン(2018年)、自動巻きクロノグラフ(2019年)、トゥールビヨンクロノグラフ(2020年)、そしてパーペチュアルカレンダー(2021年)の機能を備えるものであり、そのすべてが世界最薄として認められたのだ。そのうち3モデルは、「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)」でも受賞を果たした。
ブルガリのデザインは、機構の美学(L'Estetica della Meccanica)を基本とし、美学と機能性の結び付きを重視してきた。オクトもその例外ではない。8面体(オクト)の極薄ケース(フィニッシモ)は「ローマの建築から着想を得た円と四角の交わり」を表現しており、ライン全体では主にモノクロのミニマルな美しさが表現されている。しかしオクトは、ジェラルド・ジェンタのデザインが入念に現代化された後、さらに良くなった稀な例でもある(オクトは、2004年にリリースされたジェラルド・ジェンタ オクトのデザインに、スポーツウォッチの要素を加味して誕生した)。
これを可能にしたのは、ブルガリ ウォッチ デザイン プロダクト クリエーション シニア ディレクターとしてデザイン部門を率いるファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニだ。ボナマッサはオクトの初期のデザイン要素を尊重し、維持しながら、同時によりモダンでブルガリらしいものにする方法を即座に見いだした。このナポリ生まれのデザイナーはブルガリのウォッチ部門に約20年も従事しており、オクト フィニッシモは彼の傑作となっている。ボナマッサはこの独自の見方を持っていただけでなく、自身のデザインから何を削ぎ落とすべきかも知っていた。それは文字盤のミニマルな表現に最もよく表れており、彼がデザイン全般に対していかに利他的に考えているかということが表れている。時計をキャンバスのように捉えるボナマッサのアプローチは、いくつかの興味深いコラボレーションを可能にしてきた。例えば建築家・安藤忠雄や、日本画家・千住博らとコラボレーションしたオクト フィニッシモなどが挙げられる。
待望のSSケースをまとった「オクト フィニッシモ S」
改めて、ここからは2021年に「オクト フィニッシモ」のシリーズを拡張した魅力的な3モデルを紹介していこう。まずはラグジュアリースポーツウォッチの分野に再び新風を吹き込んだ、3針自動巻きムーブメントを搭載するステンレススティールモデルの「オクト フィニッシモ S」だ。直径40mmの極薄ケースにはサテンポリッシュ仕上げが施されている。既存のブラックダイアルに代わってバーティカルブラッシュ仕上げのシルバーダイアルが組み合わされた、モノクームな仕上がりだ。搭載される世界最薄ムーブメントのBVL138 フィニッシモ キャリバーはプラチナ製マイクロローターを備え、コート・ド・ジュネーブ装飾が施されている。ケースの厚さは既存のチタンモデルの5.15mmから6.40mmへとわずかに増した。またリュウズはねじ込み式になっており、これらにより防水性能は30mから100mへとさらに向上している。
「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」にもSSモデルが登場
これまでチタニウムモデルのみが展開されてきた、機械式クロノグラフ&GMTムーブメントを搭載する「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」に関しても、このたびステンレススティールモデルが追加された。ブルガリが「よりスポーツシックな外観を目指した」と胸を張るこのモデルは、既存モデルより若干サイズアップした厚さ8.75mmの8角形ステンレススティールケースをまとい、サテンポリッシュ仕上げのブルーダイアルとシルバー製カウンターが組み合わされている。3時位置のサブカウンターで表示されるのは、24時間表示の第2時間帯だ。この第2時間帯は、9時位置のボタンによって独立して操作することができるため調整もしやすい。
ブレスレットもケース同様にサテンポリッシュ仕上げが施されたステンレススティール製で、時計本体と一体型になっている。3針自動巻きモデルと同様にねじ込み式リュウズを採用したことで、防水性能は100mに引き上げられた。
ラバーストラップを組み合わせた「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」のチタンモデル
最後に紹介するのは、「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」に加わった、ラバーストラップ仕様のスポーティーなモデルだ。従来通り、ケースの素材はチタニウムで、ケースの厚さは6.90mmのまま、防水性能も30mである。ひとつ前で紹介したステンレススティールモデルと同様に、ケース内部には世界最薄のクロノグラフ&GMT表示機構を備え、プラチナ製ペリフェラルローターを採用する、厚さわずか3.30mmの自動巻きムーブメントを搭載している。ブラックダイアルにはオパーリン仕上げが施され、ラバーストラップにはテクスチャー加工がされており、チタン製のピンバックルが組み合わされている。これらの組み合わせにより、マットなチタニウムモデルの魅力が新たに引き出されて、精悍な印象が高まった。
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