Cal.1200S1を搭載したスケルトンモデルで、再び薄型路線に返り咲いた「ピアジェ ポロ」。さらに今年の新作では、小径の36mmモデルが追加された。1970年代最後の年に、ブレスレット付きゴールドウォッチの嚆矢として誕生し、その後はスポーティー路線に傾注してきた「ピアジェ ポロ」。ピアジェを代表するラグジュアリースポーツウォッチは今、どのような進化を遂げようとしているのか?
鈴木裕之:文 Text by Hiroyuki Suzuki
2021年9月21日掲載記事
薄型へと回帰を遂げたピアジェイズムの真骨頂
「ピアジェ ポロ」スケルトン
自動巻き(Cal.1200S1)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KPG(直径42.0mm、厚さ6.5mm)。3気圧防水。インターチェンジャブルストラップ。519万2000円(税込み)
右:ピアジェ「ピアジェ ポロ」スケルトン
自動巻き(Cal.1200S1)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約44時間。SS(直径42.0mm、厚さ6.5mm)。3気圧防水。インターチェンジャブルストラップ。336万6000円(税込み)
1970年代に始まるブレスレット付きラグジュアリーの原点
1957年に発表されたCal.9Pで、超薄型ムーブメントの作り手として揺るぎない地位を確立していたピアジェ。そんな同社の歴史に「ポロ」の名が初めて登場するのは1979年のことである。ラウンドやスクエアなど多彩なケースバリエーションを誇った初代ポロに共通するのは、ルーローリンクを備えた専用ブレスレットと一体化されたケースデザイン。その登場は、ブレスレット付きのラグジュアリーウォッチが普及してゆく、その黎明を飾るに相応しいものだった。
スポーティーさを強めた2000年代のアプローチと原点回帰
しかし2000年代に入ると、次第に「ピアジェ ポロ」は、ラグジュアリーウォッチの要素に加えてスポーティーな性格を強めてゆくようになる。現行モデルへと受け継がれる最新のスタイルは、2016年に発表された「ピアジェ ポロ S」の流れを汲むもので、そのアイデンティティは、クッション型のダイアルにラウンド形状のベゼルを組み合わせる“シェイプインシェイプ”へと変貌を遂げてゆく。そうしたデザインコードを守りながら、ピアジェの原点である“薄型時計”へと回帰を果たしたモデルが、Cal.1200S1を搭載する「ピアジェ ポロ」のスケルトンだ。
約2年の期間をかけて熟成改良された新世代スケルトン
「ピアジェ ポロ」のスケルトンモデルが搭載するCal.1200S1のベースは、往年の世界最薄自動巻きとして知られるCal.12Pの誕生50周年を祝って2010年に発表されたCal.1200Pがベース。その後、ブティック限定の「アルティプラノ」などの搭載するために開発されたCal.1200Sが直接のルーツとなる。基本的なムーブメントデザインを踏襲しつつ、地板や受けのコーティングに、CVD加工によるピアジェブルーと、ガルバニック処理によるスレートグレーを採用。約44時間のパワーリザーブ自体は変わらないものの、トルクマネジメントを見直すことで精度の安定化を図るために、約2年の熟成期間を要している。さらにスイス標準での耐磁性も確保されており、使い勝手も大きく向上しているようだ。歴代の「ピアジェ ポロ」で最も薄いモデルとなったスケルトンは、歴代で最もタフなムーブメントを搭載したモデルなのかもしれない。
自動巻き(Cal.1200S1)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約44時間。SS(直径42.0mm、厚さ6.5mm)。3気圧防水。インターチェンジャブルストラップ。336万6000円(税込み)
右:ピアジェ「ピアジェ ポロ」スケルトン
自動巻き(Cal.1200S1)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KWG(直径42.0mm、厚さ7.3mm)。3気圧防水。インターチェンジャブルストラップ。699万6000円(税込み)
バイカラーで表現されるデザインセッターの資質
「ピアジェ ポロ」クロノグラフ
自動巻き(Cal.1160P)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径42.0mm、厚さ11.2mm)。10気圧防水。世界限定888本。インターチェンジャブルストラップ。183万9200円(税込み)
薄型を足掛かりに華開いたピアジェのデザインクリエーション
初代の「ポロ」が登場した1970年代は、ピアジェの独特なクリエーションが一気に華開いた時代でもあった。その足掛かりとなったのは、やはり薄型ムーブメントである。超薄型のムーブメントを持つが故に、ともすればファットな印象になりがちなアプローチでも、全体をスリムに仕上げることが可能だった。それ自体を薄く仕上げることが難しい、ストーンダイアルなどを積極的に採用できたのも、薄型ムーブメントがあればこそだ。
稀代のクリエイターたちに愛されてきたピアジェのスタイリング
そうした一方で、ピアジェは異形ケースの採用にも積極的だった。例えば、アンディ・ウォーホルが愛用したゴドロン入りのクッションウォッチなどはその好例だろう。なぜそうした異形ケースが作れたのかは後に述べるが、ピアジェとは時代時代の空気感に寄り添いつつ、常にその先を提示してきた優れたデザインセッターでもあったのだ。
バイカラーのダイアルデザインを採用する新色クロノグラフ
近年になって、急速に数を増やしてきたのがバイカラーのダイアルを持つクロノグラフだ。“パンダ”、あるいは“逆パンダ”と呼ばれるモノトーンのバイカラーダイアルは、モダンレトロ調を目指したヴィンテージ風クロノグラフから火が付き、今やあらゆるクロノグラフに波及しようとしている。同社にとって、「ピアジェ ポロ」のクロノグラフにこれを採用することは極めて自然な流れだったろう。配色はいわゆる“パンダ”だが、シルバー地にピアジェブルーのインダイアルを配したことで、モダンレトロとは一線を画するラグジュアリークロノグラフに仕上げられている。
自動巻き(Cal.1160P)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径42.0mm、厚さ11.2mm)。10気圧防水。インターチェンジャブルストラップ。413万6000円(税込み)
右:ピアジェ「ピアジェ ポロ」クロノグラフ
自動巻き(Cal.1160P)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KPG(直径42.0mm、厚さ11.2mm)。10気圧防水。インターチェンジャブルストラップ。169万8400円(税込み)