2005年のリリース以降、進化し続けてきた「ロイヤル オーク オフショア ダイバー」。その完成形と言えるのが、2021年の新しいモデルである。
高い基礎体力に加えて、簡単に交換できるストラップは、本作の魅力をさらに増した。新しく追加された18KWGケースのモデルは、その究極だ。オーデマ ピゲは、重いケースに交換式のストラップは採用できないという常識を軽々と覆したのである。
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(本誌):文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2021年11月号]
ストラップを替えられるダイバーズウォッチという偉業
創業以来、ジャガー・ルクルトのエボーシュを使っていたオーデマ ピゲは、2000年以降、まったく新しいムーブメントの開発に取り組んだ。03年に完成したのが、自社製自動巻きのキャリバー3120である。コンパクトで摩耗しにくいスイッチングロッカー式の自動巻き機構は、今までのジャガー・ルクルトのキャリバー889に同じ。しかし、テンプから緩急針を省くことで耐衝撃性は大きく高まり、振動数を落とした結果、パワーリザーブも約60時間と大幅に延びた。
この優れた自社製ムーブメントを得たオーデマ ピゲが、新しいスポーツウォッチを構想したのは当然だろう。05年発表の「ロイヤル オーク オフショア ダイバー」は、300mという防水性能を持つ本格的なスポーツウォッチだった。以降、このダイバーズウォッチはオーデマ ピゲの成熟と歩みを合わせるように進化し続けた。13年にはフルセラミックスのモデルを追加。21年には、新型自動巻きのキャリバー4308を載せることで、性能を大きく向上させた。
21年の新しいロイヤル オーク オフショアダイバーは、いわゆる〝ラグジュアリースポーツウォッチ〞の枠を大きく超えた時計となった。高い振動数に大きな慣性モーメントを持つフリースプラングテンプ、長いパワーリザーブと高い巻き上げ効率を誇る自動巻き機構を載せたキャリバー4308は、第一級のスポーツウォッチに肩を並べるほどの性能を誇る。
その新しいロイヤル オーク オフショア ダイバーに追加されたのが、セラミックス製のベゼルと18KWGケースを持つ本作だ。既存モデルの素材違いを、あえて取り上げるのには理由がある。このゴールドケースを持つ新作にも、SSケースのオフショアダイバーに同じく、簡単にストラップを交換できるインターチェンジャブルストラップシステムが採用されたのである。
ラフに使われるスポーツウォッチに、そもそも交換式ストラップは向いていないとされてきた。しかし、オーデマ ピゲは、300m防水のダイバーズウォッチに採用しただけでなく、今回は重厚な18KWGケースにも転用したのである。よほどの自信がなければ、採用できるものではない。
ストラップの交換は驚くほど簡単だ。ストラップをつなぐふたつのリンクには、スクエアのプッシュボタンが内蔵されている。このふたつのボタンを押して軽く引っ張ると、ストラップはリンクから外れる。ふたつのリンクだけで支えられているため、理論上はストラップの取り付け部にガタが出やすい。しかし、遊びがまったくないのは、リンクが頑丈なだけでなく、ケースと接触するストラップの平面に金属板を埋め込んだためだ。ちなみに、金属板はレザーやラバーでくるまれているため、ストラップがケースに傷を付けることはない。
バックルの交換も容易である。バックルの下部にはフラップが内蔵されており、それを手前に引き上げるとロックが外れる。その状態でスライドさせると、バックルはストラップから外れる。シンプルな仕組みだが、ストラップをつなぐリンク同様、無駄な遊びはまったくない。筆者は何度か試したが、ストラップとバックルを外すのに必要な時間は、わずか30秒足らず。これほど簡単ならば、シチュエーションに応じて、気楽にストラップを替えられるに違いない。
ケースの内製化がもたらした優れた外装仕上げと卓越した実用性
オーデマ ピゲは、ケースの精度を高めるため、その内製化に取り組んだ。エッジが切り立ち、しかも均一の筋目が施された「ロイヤル オーク」や「CODE 11・59 バイ オーデマ ピゲ」のケースは、その帰結と言える。しかし、新しいオフショア ダイバーを見ると、同社が目指していたのは、そこに留まらなかったことが理解できる。
頑強さと非凡な使い勝手を両立させた、新しいインターチェンジャブルストラップ。仮に普通のドレスウォッチが採用したならば、正直驚きはしない。それを重厚な18KWGケースの、しかもダイバーズウォッチで実現してしまったところが、オーデマ ピゲのオーデマ ピゲたる所以なのである。
大ヒット作に新しく追加されたのが、セラミックス製ベゼルと、18KWGケースを持つ本作だ。かなり重厚な貴金属ケースの、しかもスポーツウォッチにもかかわらず、交換式のストラップシステムが採用された。なおバックルも18KWG製。最近のロイヤル オーク同様、外装の仕上げは極めて良い。
自動巻き(Cal.4308)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWG(直径42mm、厚さ14.2mm)。300m防水。682万円。
Contact info: オーデマ ピゲ ジャパン TEL:03-6830-0000
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