毎シーズン新作が楽しみなカンペールの「TWINS(ツインズ)」。左右非対称が生み出すデザインの面白さに加えて、履きやすい優れたコンフォート性にも注目したい。ひねりの利いた英国風デザインの一足を紹介しよう。
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2021年11月号掲載記事]
英国のダービーシューズにインスパイアされたTWINSモデル。片足のみ外羽根部分(アイレット)が外側にずれているのがポイント。この“ずれるデザイン”は1998年に生まれ、現在まで受け継がれてきた。レザー製アッパー、ラバーソール。インソールの取り外しは不可。2万8600円(税込み)。
英国スタイルをベースにしたユニークな一足
今回紹介するカンペールは、スペインのマヨルカ島で1975年に創業。現在も島のインカという街に本社を構え、デザインから製造、販売まで行っている。マヨルカ島と聞くと、ジョアン・ミロを思い浮かべてしまう。1956年から83年に亡くなるまでこの地にアトリエを構え、創作活動を続けてきた画家だ。女性や星、鳥、花といった平和なモチーフを積極的に描き、彫刻やセラミックスを用いた作品まで制作している。こじつけかもしれないが、カラフルな色使いやユーモラスなデザインは、どことなくカンペールの靴に似ている気がするのだ。おそらく自然に囲まれたのんびりとした環境が影響しているのだろう。
さて、おすすめしたいカンペールの2021年秋冬の新作「NEUMAN(ニューマン)」というモデルは、1988年から続く「TWINS(ツインズ)」というデザインを継承するバージョンで、左右の靴がそれぞれ独自の個性を持っている。しかし、左右が並ぶと完璧なペアになるという革新的なデザインなのだ。この「NEUMAN」はクラシックな英国スタイルのダービーシューズ(外羽根式のシューズ)をベースにしながらも、片足のみ外羽根部分を外側にずらした、ひねりの利いたデザインで、控えめながらもユニークだ。こちらは「TWINS」シリーズのなかでも人気の高いデザインだという。
アウトソールにはグリップ性に優れるラバーソールを使用し、アッパーにレザーを使った軽量かつ、価格的にも魅力的な一足だ。ステッチとシューレースをアイボリーカラーにしているため、「TWINS」のユニークさがより強調され、遊び心溢れるカジュアルシューズに仕上がっている。僕自身もカンペールの靴を愛用しているが、コンフォート性とデザイン性のバランス感覚が良く、毎日でも履きたくなってしまう。スーツよりカジュアルなジャケットスタイルやデニムとの相性が良いため、出番も自然と増えるはずだ。安価な定番のキャンバススニーカーは若い世代にはおすすめしたいが、少し歳を重ねた方には、こんなユニークなカンペールの一足を履いてもらいたい。
https://www.webchronos.net/features/68333/
https://www.webchronos.net/features/66112/
https://www.webchronos.net/features/63552/