Q:気温の変化は時計に影響与えますか?
今でこそ素材の進化によりあまり目立たないですが、多くのヒゲゼンマイは金属製のため、気温によって硬さが変わります。そのため、温度が高い日は遅れ、低い日は進み傾向を出すことが多かったのです。
A:高いと遅れ、低いと進み傾向と、精度に影響を与えます
時計(特に機械式)にとって、大敵は3つ存在します。「水」「磁力」、そして「衝撃」です。しかし意外に大きな影響を及ぼすものが他にもあります。それが気温です。今でこそあまり目立たなくなりましたが、一昔前は、気温が変わると時計の精度に影響が出るのは当たり前でした。具体的には気温が上がると時計は遅れ、気温が下がると時計は進みます。
基本的にすべての機械式時計は、振り子の役割を示すテンプとそれを元の位置に戻すためのヒゲゼンマイを持っています。ヒゲゼンマイの多くは金属性で、その太さは髪の毛ほどしかありません。そのため一昔前のヒゲゼンマイは、非常に外気温の影響を受けやすかったのです。
というのも、金属は気温が高いと柔らかく、低いと固くなります。つまり、暑くなるとヒゲゼンマイが柔らかくなって時計は遅れ傾向になり、寒くなるとヒゲゼンマイが硬くなって時計は進み傾向になります。ちなみに昔の天文台クロノメーターの中には、ヒゲゼンマイの拡大収縮に合わせてテンワの慣性を自動的に変えて、温度補正を行うものもあります。ですが、こういった物を搭載する量産品はほぼありません。
気温が変わると遅れ進みが生じるのは、昔のクォーツ時計も同様です。しかし1980年代に温度補正機能を載せることで、クォーツは温度が変わっても一定の精度を保つようになりました。
現在の機械式時計もヒゲゼンマイの素材が良くなったため、以前のものほど気温の影響受けにくくなりました。とりわけシリコン製ヒゲゼンマイは、温度変化に強いとされています。また従来の金属製ヒゲゼンマイでも、アナクロンを用いたものやシュトラウマンヘアスプリング、ロレックスのパラクロム・ヘアスプリング、セイコーのスプロン製などは温度変化に強いとされています。同じように見える機械式時計でも、この20年で、性能は大きく変わったと言えるでしょう。
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