香港の著名オークショニアの目に留まった2021年の新作時計とは？

世界で行われる時計オークションの情報をお届けするwebChronosの連載記事「グローバルウォッチマーケットからの最新ニュース」。第2回は、老舗オークションハウス「ボナムズ香港」の時計部門国際ディレクターを務めるティム・ボーン氏が、時計愛好家の友人と過ごした近況を語る。

時計という共通言語

　昨今のコロナ渦による厳しい状況の中にあっても、香港の時計コレクターや時計業界の関係者たちと直接会うことができたのは、大変良いことだったと思う。時計とは、「ウォッチメイキング」について語り合い、交流を深めるために有用な、誰もが理解できる共通言語として我々を導いてくれる、驚くべきものである。

　時計には、多くの文化や国籍を結び付ける特別な力がある。その経歴や出身国がどうであれ、知人や新しい友人に会うたびに常に容易にコミュニケーションを取ることができるため、情報を共有し、その結果として笑顔になり、大きな楽しみを得ることができるのだ。

　最近、香港を散歩している時、古くからの友人と久しぶりに会ったが、ここ数カ月の間に手に入れた新しい時計についての話を聞くことができ、とても有意義な時間を過ごした。今年発表されたいくつかの新作はとても魅力的で、もしオークションに出品されたなら大きな需要があると思われる。

私が注目する今年の新作

　2021年9月、ヴァシュロン・コンスタンタンが「オーヴァーシーズ」の新作発表会を行った。とても長い歴史を持つブランドであるため、新たなデザインに感銘を受けることは必然だろう。

　その中でも、特に人気の高い3つのモデルを紹介しよう。「オーヴァーシーズ・エベレスト」のGMTデュアルタイムとクロノグラフは、どちらもチタンとステンレススティールを組み合わせた外装を持ち、洗練されたスポーティーな魅力を放っていた。それぞれ150本しか生産されないため、非常に長い行列ができそうだが、いずれも手を出しやすい価格帯だ。

　しかし、より裕福なコレクターには、永久カレンダーを搭載したホワイトゴールド製の「オーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー」をおすすめしたい。

　次は、タイに住むコレクターの友人が最近購入した、目を見張るような時計だ。美しいグリーンダイアルを備えたジャガー・ルクルトの「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」で、以前のヴィンテージモデルへのオマージュであり、シンプルでありながら手首に上品な印象を与える。鮮やかなダイアルには、ファセット加工されたバトン型のインデックスが採用されており、蓄光塗料は塗布されていない。

　さて、私が次にコレクターに会いに行ったのは、香港のK11アートモールにある、とても魅力的でリラックスできるジェントリークラブだ。ここでは、香港でも有数の時計とウイスキーの愛好家に出会った。

　彼がこの日購入したのはブルガリの新作、「オクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダー」のチタンモデル。デザインやダイアルのレイアウトは魅力的だが、この時計の軽さや薄さにも驚かされた。

　ケースの厚みはわずか5.8mmで、ブルガリはジュエリーで名を馳せるだけでなく、自動巻きパーペチュアルカレンダーの世界最薄記録を保持しており、コレクターの間で非常に人気を博したオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」の超薄型パーペチュアルカレンダーをも凌駕している。ブルガリは高い評価を得ている時計ブランドへと生まれ変わり、オクト フィニッシモのデザインは、今や世界中で高い人気を誇っている。

　そして、私が楽しい時間を過ごしていたジェントリークラブでは、アジアで初めて展示されるという時計を見ることができた。これは腕時計ではなく、ヨーロッパで家族経営を行うスモールブランド、ラ・ヴァレが手掛けた「Attimo（アッティモ）」というクロックで、ゴルファーがドライバーでボールを打とうとしてアドレスをとっているという外観が印象的だった。

　世界でわずか50個しか作られないこの純銀製のクロックには、控えめに宝石があしらわれており、極めて高い時計製造技術と精緻な立体造形に見られる芸術的な創意工夫を融合された、モダンクロックの最高傑作と言えるだろう。

　ビジョンや芸術的要素、質の高い仕上げ、洗練された美しさのすべてがそろった、このような創造性にあふれた逸品の数々をマーケットで見られるのは、とても素晴らしいことだ。