競争激しいミドルレンジを勝ち抜く、ノルケインの展望

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2021.11.02

多くの時計ブランドがEコマースに参入する中、2018年に設立されたまだ若いスイスブランド、ノルケインは世界各地の小売店での販売を広げてきた。現在、ノルケインは米国や日本で主に成功している。そして2020年には、スイスのムーブメントメーカー、ケニッシと長期パートナーシップを締結したことを発表した。この注目すべきブランドの展望をCEOのベン・カッファーより聞き出した。

NN20/1

2020年、ノルケインはケニッシとと長期パートナーシップを締結した。
Originally published on EUROPA STAR
Text by Serge Maillard
2021年11月2日掲載記事

競争の激しいミドルレンジへの参入

 スウォッチ グループが幅を利かせ、タグ・ホイヤー、フレデリック・コンスタントなどの強豪がひしめく、2000スイスフラン程度の価格帯の機械式スイス時計という競争の激しいニッチ市場において、ノルケインというちょっと変わった名前のブランドは、徐々に頭角を現し、私たちの目に留まるようになってきた。そのノルケインがこのたび、あのケニッシとムーブメント供給についてのパートナーシップを結んだという発表を聞き、私たちはこの新しいブランドに注目すべきだと確信した。

 2018年に設立されたノルケインは、起業家のベン・カッファーと、アイスホッケーのスター選手マーク・ストライトや、ブライトリングの元オーナーの息子テッド・シュナイダーなど名のある投資家が手を結んで生まれた。CEOベン・カッファーの父であり、プライベートブランド専門のロベンタ・ヘネックス社の元取締役であるマーク・カッファーが取締役会の会長を務めている。このような著名な人物の協力は、コロナ禍のため寒冷期にあったスイスの時計業界にとっては閉ざされていた扉を開けるものとなるだろう。特に、リスクを取りたがらない小売業者の場合がそうである。

ベン・カッファー

ノルケインCEOのベン・カッファー。

「当初は、近年多くの人が行っているように、眠っているブランド名を買収して再出発させることを考えていました」とベン・カッファーは語る。「そのほうが簡単だったかもしれません。しかし最終的には、大きなグループに支配されつつあるビジネス環境の中で、情熱を持った独立企業としての自分たちのストーリーを貫くことにしたのです」。

 この外部資本に頼らないブランドは、業界に旋風を巻き起こそうとしていた。ほとんどの新興企業(そして多くの既存ブランド)が従来の流通を捨ててEコマースやクラウドファンディングを採用しているような時代に、ノルケインは競争力のある価格の機械式モデルで小売店の門を叩いた。ここで、創業者たちのプロフィールが役に立った。

フリーダム 60 クロノ

「フリーダム 60 クロノ」。自動巻き(Cal.NN18/ETA7753ベース)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径43mm)。100m防水。カーフレザーストラップ。50万500円(税込み)。

「私たちのセグメントでは、小売り価格が大幅に上昇していましたが、私たちは代替案を考えました」とカッファーは語る。この代替案は、特にふたつの市場で成功した。日本と米国だ。ノルケインはEコマースのプラットフォームを日本以外で立ち上げたが、オンライン販売が全体の利益に占める割合はごくわずかでしかない。

 特に目の肥えた日本では、ノルケインの主張が響いたようだ。日本では、スイスの独立した機械式ブランドであることが評価され、1年目にして35の販売店を開設することができたのである。米国ではアイスホッケーのスター選手、マーク・ストライトの評判が、このブランドのスポーツウォッチの認知度を高めるのに役立った。また、アメリカの大手小売店「トルノー」とのパートナーシップにより、さらにいくつかの販売店への進出を計画している。

ノルケイン

ノルケインはすべてのコレクションにスイス製の機械式ムーブメントを搭載する。

ケニッシとの力強い同盟

 ノルケインは現在、スイスのタヴァンヌとニダウで約15人の従業員を雇用し、世界各地で約70の販売拠点を持つ。時計製造本数は増やしていくことを目指している。「私たちは完売の罠にはまることなく、完売し続けるブランドでありたいと思っています」とベン・カッファーは強調している。

 ノルケインの大きな特徴のひとつに、オプションとしてケースサイドのプレートへの刻印サービスがある。このオプションについてはまずアメリカで実証され、人気を博した。スイスや日本で購入されたモデルも刻印サービスの申し込みが増えてきている。

NN20/1

2020年夏からノルケインの現行コレクションの仲間入りを果たした、ケニッシの3針キャリバーNN20/1。約70時間のパワーリザーブを保持する。

 2020年2月、ノルケインはスイスのムーブメントメーカー、ケニッシと長期パートナーシップを締結した。両者は、約70時間パワーリザーブを搭載した3針のNN20/1、ジャンピングアワーGMT機構を搭載したNN20/2というクロノメーター認定を取得した2種類のムーブメントを完成させ、ノルケインはそれぞれのムーブメントを搭載したモデルを発表している。ケニッシは報道関係者に向けた発信を行うことがなく、謎めいたところが多い。ベン・カッファーはケニッシに関してはあまり語ってくれなかった。

 ただ、ケニッシが「ノルケインのデザインとプロフィールに魅了された」であろうことは、確実と思われる。ベン・カッファーは「私たちにとって、納期遅れのリスクを考慮すると、単一のムーブメントサプライヤーに依存しない長期的な戦略を構築することが不可欠です。また、ケニッシのキャリバーを統合することで、さらに差別化を図ることができます」と説明してくれた。

アドベンチャー スポーツ オート

「アドベンチャー スポーツ 42mm」。自動巻き(Cal.NN09/ETA2824ベース)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。DLC加工SSケース(直径42mm)。100m防水。ファブリックストラップ。29万3700円(税込み)。

 ノルケインが展開するアドベンチャー、フリーダム、インディペンデンスの各コレクションには、今後もケニッシのムーブメントを搭載したモデルが登場予定だ。2000スイスフラン以下のモデルには、引き続きETA製のムーブメントが搭載される。ノルケインの平均価格は2800スイスフランだ。ベン・カッファーは「機械式時計を身につけることを人々に納得してもらうには、まだまだ膨大な作業が必要です。私たちの規模と主張をもってすれば、この業界全体の目標に対して役割を果たすことができると信じています」と付け加えている。



Contact info: ノルケインジャパン Tel.03-6864-3876


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