アブラアン-ルイ・ブレゲって何をやった人なの?/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

2021.10.22

Q:アブラアン-ルイ・ブレゲって何をやった人なの?

「時計の歴史を2世紀進めた」時計師と称されるアブラアン-ルイ・ブレゲ。彼はトゥールビヨン の発明や自動巻き機構の改良などを行いました。

広田雅将

2021年10月22日掲載記事

 

A:数多くの機構の開発・改良を行った

 時計好きならば一度は、アブラアン-ルイ・ブレゲ(1747~1823年)という名前を聞いたことがあるはずです。18世紀末〜19世紀初頭にかけて活躍した彼は、「時計の歴史を2世紀進めた」時計師とも言われています。にもかかわらず、何が彼の凄さなのかは意外に知られていません。彼の主だった業績は以下です。

・自動巻き機構の改良(1780年)
・ミニッツリピーターの改良(1783年)
・いわゆる「ブレゲ針」の発明(1783年)
・天真に付ける耐衝撃装置「パラシュート」の開発(1790年)
・いわゆる「ブレゲヒゲ」の発明(1795年)
・トゥールビヨンの発明(1795年、特許取得は1801年)
・盲人時計の発明(1799年)
・効率の高い脱進機の発明(1802年)

 彼は薄いムーブメントを作り上げたアントワーヌ・レピーヌや、ピエール・ル・ロワなどのマリンクロノメーター製作者たちから影響を受けつつも、それに留まらないさまざまな機構を発明しました。ではなぜ彼だけが、毎年のように新しい発明に取り組めたのか。理由のひとつは、彼が人付き合いに巧みだったため、と言われています。色々な時計師たちと情報交換をすることで、ブレゲは新しい発明に対するアイデアを育んでいきました。また彼は、才能があったにもかかわらず生活に困窮していた、アンティード・ジャンヴィエに手を差し伸べました。こういった彼の性格が、多くの発明につながったのです。

1801年6月26日に特許を取得した「トゥールビヨン・レギュレーター」の資料。キャリッジを回転させることで偏差を補正する装置であることが記される。


個人ではなく工房を設立して設計に専念した

 そしてもうひとつの工房が、個人ではなく、工房として時計を製造するようになったこと。彼は設計と発明に専念し、時計は時計師たちに製造させる。分業を進めることで、ブレゲは新しいアイデアを熟成させるだけの時間を得たのです。

 もっとも、ブレゲの業績が改めて評価をされるようになったのは、20世紀に入ってからです。時計コレクターであるセシル・クラットンや、独立時計師のジョージ・ダニエルズが、彼の作品を細かく評価するようになりました。以降、さまざまな時計師たちが、ブレゲの手掛けたアイデアを、自らの時計に盛り込むようになりました。そのひとりが、独立時計師のフランソワ・ポール・ジュルヌです。時計の歴史を2世紀早めたブレゲは、今なお多くの時計師たちにとっての、インスピレーションの源であり続けています。


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