堅牢性に優れたヴェンペ「アイアンウォーカー オートマチック 40」をレビューする

ドイツの時計ブランド、ヴェンペが手掛けるラグジュアリースポーツモデルより「アイアンウォーカー オートマチック 40」が発表された。一体型ブレスレットとブルーダイアルを備え、クロノメーター認定ムーブメントを搭載し、堅牢性と優雅さを兼ね備えた日常使いできる時計だ。今回は本モデルについてレビューする。

クラシックなモデルを得意としきたヴェンペのラグジュアリースポーツモデル

　1878年に創業したヴェンぺは、ドイツ・ハンブルクに本拠地を構える老舗時計宝飾店である。販売店としてだけでなく、高級時計の販売を通じて培った経験と審美眼から2006年よりオリジナルブランドの展開を開始している。廃墟と化していたグラスヒュッテ天文台を修復し、そこに新たな自社工房を併設。さらにテューリンゲン州計量較正庁およびザクセン州計量較正公社とともにドイツクロノメーター規格を創設した。出荷されるすべてのモデルはクロノメーター規格を通過してている。
　
　クラシックなモデルを得意とし展開してきたヴェンペのラグジュアリースポーツモデルが「アイアンウォーカー」だ。20世紀初頭、マンハッタンの街を見下ろす摩天楼で、鉄製の建築物に囲まれながら建設作業員たちが軽やかに過ごしている姿がこのデザインの着想源である。確かな腕を持つ男たちが、目のくらむような高さで鉄材を巧みに取り扱っていた姿を想起させるように、このモデルは精密に設計されたステンレススティール製のケースと一体化したラグを備えている。トノー型のケースにはポリッシュ仕上げのエッジが施され、ベゼルは急峻に立ち上がっている。

　そんなアイアンウォーカーの新作「アイアンウォーカー オートマチック 40」は、現代のビジネスパーソンに向けてデザインされたようなエレガントな印象で、オフィスでもレジャーでもスポーツでも同じように着用することができる。一方で、リュウズのプロテクターは角張った印象を与え、またリュウズはしっかりとねじ込まれているので、肉体労働も厭わない。リュウズをほどいて操作するのには、適度な力が必要だろう。いくつかのポジションへの引き出しは容易でしっかりとしている。

クラスプの操作に力はいるが、ムーブメントのパワーがそれを補う

　角張った印象はラグに向かって続き、ケースはなだらかに傾斜してブレスレットと一体化している。ブレスレットとケースをつなぐ部分には、それぞれ2本のネジが使われている。しっかりと固定されているが、柔軟性があるため、細い手首にもしっかりとなじむ。また、クラスプ側のネジで3連ブレスレットの長さを調節できるアジャストメントが含まれている。

　ブレスレットの表面にはポリッシュ仕上げとサテン仕上げが施され、エッジにはファセット加工が施されている。改善を求めたい点としては、閉じた状態のセーフティ・キャッチの開けやすさ、クラスプのエッジの処理を挙げる。

　搭載されるムーブメントはETA2892-A2の改良版であり、グラスヒュッテ天文台をイメージしたエングレービングの施されたクローズドケースバックに覆われている。裏蓋はねじこみ式で、100mの防水性能を備える。ムーブメントは自動巻きで、ISO 3159に準拠したドイツ製クロノメーターの認定を受けている。ウェンペはこのムーブメントに自社製のバランスコックと調整機構の改良、衝撃吸収機構を採用した。今回レビューしたモデルは、理論的にクロノメーター認定が示すものを実地試験を通して確認されている。最も大切なレート値である着用時の数値は、数週間着用しても完璧な計時からほとんど逸脱していない。計時機での計測では、パワーリザーブの終わりに向かって精度が若干低下したものの、クロノメーターレベルとしては申し分なく、日差4.6秒と、クロノメーターの範囲内に収まっている。

　高精度の計時は、サンレイ仕上げの施されたブルーダイアルに表示され、光を受けてエレガントにきらめく。ここで特筆すべきは、分と秒の目盛りが付いた急峻なフランジ、蓄光塗料の塗布されたインデックスと針、日付窓の外周のシルバーフレーム、文字盤とマッチする日付ディスクのブルーなどだ。日付の数字は銀色、つまりステンレススティール色で、ウェンペが「アイアンウォーカー」のごく小さなディテールにまでスティールパワーを注ぎ込んだ証しを見て取れる。

技術仕様

精度安定試験 （日差　秒／日）