ロレックスの姉妹ブランドのイメージが強いチューダーだが、独自路線を歩み始めてからは、ひとつのブランドとして高い支持を獲得している。その特徴や歴史を知ることで、ブランドへの理解をより深められるだろう。近年注目を集めているチューダーの魅力に迫る。
名門チューダーの歴史
より広い普及のために誕生したチューダーは、今や名だたる高級ブランドにも引けを取らない名門へと成長を遂げている。まずはチューダーの伝統と歴史を見てみよう。
チューダーの誕生
チューダーは、ロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフが作ったブランドだ。1926年、スイスの時計ディーラー兼メーカーであるヴーヴ ドゥ フィリップ ヒュンターが、ウイルスドルフの代理でチューダーを商標登録したことに端を発している。
1936年、ヴーヴ ドゥ フィリップ ヒュンターはチューダーをハンス・ウイルスドルフへ譲渡した。それまではチューダーの独占的使用権のみを取得していたウイルスドルフへ、チューダーの経営権も移ったことになる。
1946年には、ブランドのアイデンティティの確立と事業拡大のためにモントル チューダー S.A.を設立し、現在のチューダーの基礎が確立された。
ロレックスの姉妹ブランドとしての立ち位置
ハンス・ウイルスドルフがチューダーを設立した大きな目的は、ロレックスの優れた技術を広く世間に知ってもらうことであった。
チューダーは当時から高い実力を備えていたロレックスの技術を時計に取り入れ、より手頃な価格で販売していた。見た目がロレックスの時計とほぼ変わらない、オーバースペックなモデルも作られていたほどである。
当時、ロレックスが本社を置いていたイギリスを中心に、チューダーは庶民の人気を獲得していった。結果として本家の認知度も高まり、ロレックスが現在の地位を築き上げた一因ともなったのである。
普及版ブランドからの脱却
当初こそロレックスの技術やパーツを利用していたチューダーだったが、1960年代後半から独自路線へかじを切り始めた。最たる例が短針をスノーフレーク針に変更したことだ。
スノーフレーク針はユニークな形状をしており、これを契機としてチューダーのモデルはオリジナル色が強くなっていった。
2015年には投資家のグループとともに設立したケニッシ社にて、チューダー機専用ムーブメントの開発にも成功している。本家ロレックスのムーブメントにも劣らない高性能ムーブメントだ。
その歩みからは、ロレックスの普及版ブランドからひとつの独立した時計ブランドへと進化していった、発想と技術の歴史が見て取れるだろう。
チューダーの特徴と魅力
時計愛好家のみならず、今や多くのファンを擁するチューダーはどのような特徴や魅力を備えているのだろうか。チューダーを一流ブランドへと押し上げた主な理由に迫る。
ユニークで独創的なディテール
チューダーが持つ大きな特徴として、独創性が挙げられる。デザイン面でチューダーの象徴となっているのが、ダイバーズモデルをメインとして採用されているスノーフレーク針だ。
1969年にこのディテールが誕生して以来、スノーフレーク針はブランドのアイコンとなっている。
また金属製ブレスレットに加え、チューダーではラバーベルトやレザーベルトの時計が豊富にそろっているのも特徴で、ダイアルカラーを含め、多彩なバリエーションから選べるのも魅力だ。
実用時計としての信頼性
チューダーは創業以来、デザインだけでなく実用性にも注力しているブランドだ。1948年にブランド初の広告を展開した際も、時計の美しさに加えて高い精度や防水性を強調している。
実用時計としての信頼性をより強く感じられるのが、ダイバーズモデルやスポーツモデルだ。1954年に誕生したブランド初のダイバーズコレクション「サブマリーナー」は、精度、耐久性、防水性において高い基準をクリアするように設計されている。
ダイバーたちの要望に応える形で、性能が進化し続けている点も強みといえるだろう。初期モデルでは100mであったサブマリーナーの防水性は、1958年には200mまで向上した。
圧倒的な競争力
確かな品質や、実用的かつ洗練されたデザインを備えつつも、すべてのモデルが入手しやすいプライスに設定されていることもチューダーの魅力だ。
近年の時計市場は高価格帯と低価格帯で売れ筋が二分している。チューダーの時計は、いずれにも属さないミドルレンジでありながら、優れた性能を備えている。
同等のスペックを持つ他社製品の価格を比較すれば、チューダーが圧倒的な競争力を持つことが分かるだろう。