自社の歴史を検証して生み出されたショパールの「アルパイン イーグル」は、高度なデザイン力と技術力を背景に持つショパールならではの志の高い新世代ラグジュアリースポーツであった。
1980年に発売され大ヒットとなった「サンモリッツ」にインスパイアされて誕生した新作。人生の進むべき方向を示すコンパスローズを刻んだねじ込み式リュウズは直径7.0mmという大型で巻き上げ感触は滑らか。自動巻き(Cal.01.01-C)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。ルーセント スティール A223×18Kエシカルローズゴールド(直径41.0mm、厚さ9.70mm)。100m防水。248万6000円(税込み)。
名畑政治:文 Text by Masaharu Nabata
[クロノス日本版 2021年11月号掲載記事]
絶妙なサイズ感と快適な装着感に秘められた
興味深いストーリー
正直、ラグジュアリースポーツに、それほど興味はなかった。大体、ステンレススティールのスポーティーな高級時計なら大昔からあり、やや高額なダイバーズやクロノグラフも「ラグジュアリースポーツ」ではないのか? と思っている。
そんな私の担当はショパールが2019年10月に発表した「アルパイン イーグル」。ではとにかく虚心坦懐に時計そのものと向き合うことにしよう。
まずは外観。ベースは1980年にショパールがリリースしたブランド初のステンレススティールモデル「サンモリッツ」だが、原型と比べ、装飾的要素が抑えられて骨太感が増したように思える。
装着感は文句の付けようがなく快適。重量もそれなりにあるが(実測で171g)、装着すると、そこまで重さは感じない。ケースも小ぶりに見える。ケース径は41mmだがベゼル径は38mm。これが実際よりコンパクトに見える秘密だろうが、実に巧妙な設計である。
何よりも好感を持ったのはダイアル。模様が刻まれたダイアルは、実はあまり好みではないが、このモデルの筋目の入ったダイアルは鉱物を思わせる落ち着いたグレーとあいまって魅力的だ。インデックスはローマ数字の枠に蓄光素材を流し込んでいるが、この蓄光の線がやや細い。もう少し太くすればベストだろう。
ブレスレットはガッチリしていて、ひねっても余分な遊びは感じられない。それでいてリンクの動きは滑らか。バックルは観音開きだが、ロゴを刻印したゴールドのセンターピースがあり、閉める際は上から下の順に操作する必要がある。できればセンターピースを廃して上下の順番なしに開閉できたら良いが、これは慣れなので使い込めば問題ないと思われる。
また、このタイプは装飾でビスを用いるモデルが多いが、私は飾りだけのビスが大嫌い。その点、「アルパイン イーグル」のビスはベゼルや裏蓋の固定用としてしっかり機能しているという。
ムーブメントの仕上げは極めてシンプル。ショパール自社製による「キャリバー01・01-C」は、きめ細かな筋目仕上げ。
そして何より興味深いのが「アルパインイーグル」の原型となった「サンモリッツ」は現ショパール共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏22歳の、いわば「処女作」という事実。
そして、さらにショパールらしいのが、「ルーセント スティール A223」という新しい合金をケースとブレスレットに用いていること。この素材は皮膚との高い適合性を持ち、ビッカース硬さは223。これは時計ケースに多用される316L(ビッカース硬さ180〜200)より硬く耐摩耗性に優れ、不純物が少ないことからゴールドに匹敵する輝きを持つという。
このようにショパールの「アルパイン イーグル」は、興味深いバックグラウンドを持ち、高機能な新素材を使って自社製造の高品質ムーブメントを採用した、実に志の高いラグジュアリースポーツと私は判断した。
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