『クロノス日本版』編集長の広田雅将と副編集長の鈴木幸也、ほそやんこと細田雄人の3人が、話題のモデルのインプレッションを語り合う連載。今回は、オリス「ビッグクラウン プロパイロットX キャリバー115」を好き勝手に論評する。
Photographs by Masanori Yoshie
阿形美子:文
Text by Yoshiko Agata
2021年12月3日公開記事
オリスの隠れた名ムーブメントを検証!
細田「「今回は、オリス初の自社製ムーブメントCal.110系の最新作を搭載したモデルです。Cal.400が出た時に『初めての自社製キャリバーおめでとう!』みたいなコメントが世の中にあふれていて、110系って知名度がないのかなと思って……もっと110系を知ってもらうためにも今回レビューすることにしました」
オリス初の自社製ムーブメントCal.110系の最新作を搭載するパイロットウォッチ。文字盤の裏表は大胆にスケルトナイズされ、10日巻きのロングパワーリザーブムーブメントを存分に覗くことができる。インダストリカルな意匠の外装はオリスの新境地。手巻き(Cal.115)。38石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約240時間。Ti(直径44mm)。100m防水。89万1000円(税込み)。
鈴木「正真正銘の自社開発だし、特にCal.115はブランド115周年を記念したものだから気合が入りまくってます」
細田「Cal.115はモダンなスケルトナイズが特徴ですね」
広田「パワーリザーブ機構もまるまる見えるので、個人的にはすごく萌える(笑)。僕はこれ、好きです」
細田「さて、使ってみて、スケルトンウォッチにありがちな視認性問題はいかがでしたか?」
広田「針が太かったから意外と良かったよね」
鈴木「スモセコは紛れちゃうけど、スケルトンとしては時分針がすごく見やすかったし、夜光もよく光った。これだけ大きくて太い針を載せられるのはトルクが強いから」
外装にも力が入りまくりの傑作
広田「オリスは、今までエタ、セリタの汎用ムーブメントを使っていて、途中から外装に力を入れることで独自の路線を打ち出したわけですが、その究極形って感じがしますね。このモデルは外装を頑張った! チタン素材なのにかなり凝ってる! それから今どきのチタンには珍しく、ツヤツヤ仕上げじゃなく、昔ながらのザラザラしたサンドブラスト。そこもツールっぽくて良い」
鈴木「サラサラした肌触りも良いですね」
細田「ベゼルはジェット機のエンジンタービンを模しているそうです。チタンでここまで細い刻みを入れるのはスゴいですよね」
鈴木「うん、今までのオリスにはないくらいイカツい感じ(笑)。あと、シートベルト方式のバックルも特徴的。着けるときにはフラップを一度開けるのには若干の慣れが必要かもしれないけど、外す時はワンタッチ。セーフティ面でも優れてますね」
広田「オリスの時計ってちょっとかゆいところに手が届く感じがあって、このモデルはバックルの作りにそれが現れていますね」
鈴木「自信作のスケルトンムーブメントに対応させて外装にも力を入れまくって釣り合わせてる。デザインはちょっと目立つかもしれないけど、チタンなので軽くて腕なじみは良いです」
10日巻きのメリット・デメリットはいかに?
細田「個人的に良かったのは、ノンリニアパワーリザーブインジケーター。一般的なインジケーターって目盛りが等間隔になっていますが、ロングパワーリザーブだと案外いつ巻けば良いのか分かりづらい。これは終わりに向かって幅を広くしているので、巻くタイミングが分かりやすいですね」
鈴木「10日巻きであっても、精度を高く使い続けたい人は早め早めに巻くのが良いです」
広田「ただし、110系には弱点がございまして……」
・「おおっ!?」
広田「精度や針合わせの感触など使用感はすごく良いんですけど、なにしろ10日間もパワーリザーブがあるので、ゼンマイを巻くのが、超〜オニ(笑)。手巻きマニアにはオススメしますが」
鈴木「そうっすね(笑)。固いゼンマイだから、全部巻き上げるのにはけっこう骨が折れます。あと、リュウズにもベゼルに合わせて刻みが入っているけど、これも指先にはなかなか痛くなる……」
広田「リュウズを巻くと丸穴車を仲介してゼンマイが巻き上がりますが、このムーブメントは丸穴車が極端に小さくてテコが効かない。それもいっぱい回さなくちゃいけない理由ですね」