開発に5年の歳月をかけ、10年間のメンテナンス不要を謳い、10年間保証まで付けて、オリスが堂々と送り出した新しい自社製ムーブメント「キャリバー400」。約5日間にわたるパワーリザーブに加え、高い耐磁性まで備えるこの機械を搭載した「オリス アクイスデイト キャリバー400」、今回はその性能テストを実施した。
Text by Alexander Krupp
2021年12月8日掲載記事
"トップレベルの時計"と評するに足る計測結果、ロングパワーリザーブ、耐磁性、長いサービス期間
本モデルは一瞥するだけでは"至って普通"のオリス アクイスデイトに見える。中になにが控えているかはすぐには分からない。外観からすぐに認識できるのは、中央の鮮やかなブルーから縁のほぼ黒まで色が徐々に変わる、よく知られたグラデーションダイアルだ。それを取り囲むのは、アクイス デイトが機能的なダイバーズウォッチであることを示す逆回転防止ベゼルである。30秒単位で回転する刻みのついたラチェット式リングには、傷が付きにくいダークブルーのセラミックインレイが施されている。これは明るく浮かび上がるスーパールミノバが塗布されたアワーマーカーや針と共に、安全なダイビングのための設計となっている。
文字盤の下部には「30BAR/300M」という防水性能の表示のすぐ下に、「5 DAYS」のパワーリザーブ表示が見て取れる。これはオリスが「革命的」と呼ぶキャリバー400の技術力を示す控えめな表現だ。この表示はねじ込み式のトランスパレントバックを通してはっきりと見ることができる。そのユニークな構造は、オリスのムーブメントで知られているレッドローターのような"ハイテク"のトレードマークを一切含んでおらず、これが新しいものであることは一目瞭然である。自社製手巻きキャリバーシリーズ110から115に加えて、新しい自社製自動巻キャリバー400は、セリタのようなメジャーサプライヤーが実施するような量産ムーブメントの仲間入りを果たす。オリスは良い時計を手頃な価格で提供することを重要視する。そのためキャリバー400は既存のスタンダードムーブメントを置き換えるためのものではなく、それらを補完するものであり、既存ムーブメントを搭載したモデルの価格を上昇させるものではない。
ブランドの矜持を示すキャリバー400
オリスはキャリバー400を自社開発し、その性能をオリスの時計の個性と顧客の要望に沿わせた。この自動巻きムーブメントはボトムアップで再設計され、すべてのディテールが検証された。チームを率いて新キャリバー開発に臨んだCOO、ビート・フィッシュリは、高効率で堅牢なムーブメントを設計することが目標だったと語る。生み出されたものは現代のニーズに応えたものとなった。手頃な価格において最高品質を提供し、顧客に真の価値を届けるだけでなく、オリスが長年にわたり数多くのモデルで追求してきたサステナビリティのコンセプトを強調すること、これらはブランド哲学に根差した野心的な目標であり、現代のニーズに応えるものでもあった。
5年という開発期間を経て誕生したこのムーブメントは、トランスパレントバックから一目でわかる強固な基盤を持っている。マット仕上げのブリッジや、肉抜き加工されたローターに施された丁寧な仕上げはブランドの技術力を示し、キャリバー400に堅牢な印象を与えている。自動巻きローターに関して、オリスはボールベアリングを廃止し、注油された円筒にステンレススティール製のシャフトが通る、滑らかな動きのスライドベアリングに置き換えた。技術者たちは、片巻き上げ機構に発生する問題は、巻き上げローターを自由に回転させるボールベアリングと関係があることに気が付いた。キャリバー400の巻き上げシステムは効率的な片巻き上げを行い、スライドベアリングによって摩耗しにくい。
キャリバー400の自動巻き機構は完全に巻き上げた状態で約5日間にわたる動作が可能だ。この間、振動数は驚くほどの安定性を保っている。振り角は完全巻き上げ時に平均300゜、5日目になると240゜という数値を示した。このような性能を実現するためには、ふたつの大きな香箱と長い主ゼンマイが必要であった。ふたつの香箱は直列に配置されており、ムーブメントのほぼ半分を占めている。各香箱には約60時間分の動力が蓄えられている。このシステムは効率的な動力管理を実現し、低いトルクのため輪列にかかる圧力も軽減され、摩耗も抑えられている。また輪列の設計の見直しによって、動力の伝達効率も改善されている。全体としては、ムーブメントは香箱の供給する動力の85%を消費している。これは通常だと70%というところだ。
動力が伝達されていく先には、まったく新しい脱進機がある。精密に組み合うアンクルとガンギ車はシリコン製で、軸とテンワには非鉄合金が採用されている。135点からなるパーツのうち30点以上が同様の素材となっており、これにより一般的なスイス製ムーブメントに比べ、キャリバー400における磁場による影響は軽減され、その数値はマイナス90%を示す。オリスはラ・ショー・ド・フォンのラボラトワール・デュボアの実験工房と連携して、キャリバー400に対し1日あたり2250ガウスの負荷テストを実施。その後の数字は日差10秒以内であった。他モデルを比較対象として挙げると、ロレックスが「ミルガウス」に採用する軟鉄製ケージの耐磁性は1000ガウスまでである。現在のISO 764規格では、200ガウスの磁気にさらされても1日あたり30秒以上のずれがなければ耐磁性があるとされている。この基準は少々古いように思えるが、オリスのキャリバー400はその11倍以上の磁場にさらされた後でも、日差は3分の1に留まっている。
今回、我々はオフィスでアクイスデイト キャリバー400に対して以下のようなテストを行った。多くの人が日常生活で浴びるとされる約1000ガウスの磁場を一定時間かけて時計にかけ続けるものだ。テストの間、振り角は大幅に落ち、数値の乱れも見られた。しかしこれは正常な状態であり、他の耐磁テストでも見られてきたものである。磁場を除去した後、わずかな時間で振り角はすぐに正常化した。ブランドが公言するように、日差マイナス7秒に落ち着いたのである。これは信頼性の高さを示すと共に、標準以上の結果であろう。磁場から遠ざけた後には、全てが「正常値」に戻ったのである。
このテスト機をほぼ全巻き状態で日常生活で着用したところ、日差約3秒の値を示した。これはタイムグラファーによる計測値とほぼ同じである。2日目、3日目においては安定性が向上し、日差は約2秒となった。4日目にはほとんど変化は見られず、5日目になって少々遅れが見られたが、前述したように振り角・姿勢差に関しては非常に良い結果が出たと言えよう。これには、既に自社製手巻きムーブメントに採用されている独自のシステムであるレギュレーター制御が大きく貢献していると考えられる。
キャリバー400に対する10年保証
オリスはこの最新技術に確信を持っており、アクイスデイト キャリバー400と、このムーブメントを搭載した今後の全ての時計に10年保証を付けている。「キャリバー400は新しいスタンダードです」とオリスCEOのロルフ・スチューダーは語る。「これに匹敵するものはありません。オリス アクイスデイト キャリバー400の構造的なソリューションのおかげで、我々は10年保証を提供するだけでなく、同じくらい長いメンテナンスサービスを提供することができます」と誇らしく付け加えた。
オリス アクイスデイト キャリバー400は、プロのダイバーズウォッチとして従来通りに防水テストも通過している。300mの防水性能に貢献しているのはねじ込み式のケースバックとリュウズで、リュウズはねじ込み式のリュウズガードに守られている。大きさなリュウズはサイドの刻みによってつかみやすく、ロックされた状態から外すのも容易だ。中央位置ではデイトの早送り調整を行うことができる。通常通り日付は6時位置に表示されるが、今回はグラデーションダイアルのブラックトーンと相性の良いブラックリングに白色の数字が配され、窓も大きくなっている。つまりデイトリングは以前より大きくなり、動かすためにより多くのパワーが必要となっている。通常、デイトが動き出すのは午前0時の約1時間で、この時間に次の表示へとほぼ正確にジャンプする。時刻調整においては、リュウズを引き出す際に分針のわずかな針飛びが見られた。キャリバー400は現代的なストップセコンド機能であるため、時計をセットする際にまず分針を少し戻してからセットすると、秒単位で正確にセットすることができる。
アクイスデイト キャリバー400の高品質なステンレススティールブレスレットには、現在ではほぼ標準仕様となっているオリス独自のストラップチェンジシステムが採用されている。しっかりとしたフラップがバーにかかり、カチッという音とともにしっかりと所定の位置にロックされる信頼性の高いものだ。ロックを解除するには爪を立てれば十分である。またフォールディングクラスプは両サイドのプッシュボタンを押すことで開き、ここには20mmのダイバーズセキュリティとエクステンションが内蔵されている。ラバーストラップで水に入ることを好む人には「クイックストラップチェンジ」システムが有効だ。
日常使いの要望に応えるキャリバー400
アクイスデイトはステンレススティールブレスレットのコマひとつに至るまでプロ仕様のダイバーズウォッチである。そして革新的なキャリバー400が搭載される最初のモデルとなったことにも意味がある。堅牢でスタイリッシュ、最新の技術と手頃な価格で提供されるこのモデルは、オリスの哲学を体現している。キャリバー400を搭載したこのモデルは、安定した計測結果、長いパワーリザーブ、信頼性の高い耐磁性、長いサービス期間など、顧客に付加価値を提供する。それは見た目も内面もたくましい一流アスリートに似ているだけでなく、日常使いの要望にも十分に応えてくれるトップレベルの時計だ。
精度安定試験
着用時: | +3.1 |
文字盤上: | +2.9/-0.1 |
文字盤下: | +4.8/+1.7 |
3時上: | +1.8/+3.2 |
3時下: | +3.9/+1.7 |
3時左: | +3.6/+3.7 |
最大姿勢差: | 3.0/3.8 |
平均日差: | +3.4/+2.0 |
平均振り角 | |
水平姿勢: | 318°/309° |
垂直姿勢: | 290°/278° |
※この記事はクロノスドイツ版の翻訳記事です。
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