精度の「良い」「悪い」とは?〜ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

2021.12.03

Q:時計の精度が「良い」「悪い」とは?

実際の時刻に対して時計の遅れ進みが小さければ、「精度が良い」。大きければ「精度が悪い」と言えます。また、実際に腕に載せた際の時計の正確さを「動態精度(携帯精度)」、時計を動かさない状態での精度を「静態精度」と言います。

広田雅将

2021年12月3日掲載記事

A:時計の表示と実際の時刻の差が小さいと「良い」、大きいと「悪い」

しばしば時計好きの話題に上るのが、「精度」という言葉です。厳密に言うといろいろな基準がありますが、時計好きやメディアが精度と言う場合は、基本的に、腕に載せた際の時計の正確さ(動態精度、携帯精度)を表します。精度がいいという場合は、時計の遅れ進みが小さいことを意味し、逆に精度が悪いという場合は、遅れ進みが大きいと判断できます。

なお、スイスのクロノメーター規格では、時計の精度が記されています。クロノメーター規格が定めた基準は、1日の遅れが-4秒から+6秒以内であること。またオメガやパテック フィリップ、グランドセイコーやロレックスなども、精度基準を明記するようになりました。

クロノメーター

現在、クロノメーター認定はスイスのC.O.S.C.の他、フランスのブザンソン天文台やドイツのヴェンペ天文台などでも行われる。例に挙げた3つは静態精度を基準に行われる点や、検査日数、姿勢差の数などが共通するが、写真のヴェンペ天文台のみケーシング状態での検査で、C.O.S.C.とブザンソン天文台はムーブメント単体での検査となる。


必ずしも静態精度が良い=動態精度が良いとは言えない

しかし、各メーカーが言う精度は、時計を動かさない状態での精度(静態精度)でしかありません。そのため時計を腕に巻いて、腕を振ったり衝撃を与えたりすると、実際の精度(動態精度)が大きく変わってしまう場合があるのです。一般的に、時計の振動数が低くて、テンワが小さいものは静態精度と動態精度に開きが生じやすく、振動数が高くて、テンワの大きな物は、両者の開きが小さいと言われています。現在、多くの時計メーカーが、静態精度と動態精度の開きを小さくするような開発に取り組んでいます。

なお、静態精度と動態精度に大きな開きがある場合でも、調整によって差を詰めることが可能です。その場合は、どういう状況で時計を使っているかを、時計師に正しく伝えること。また、時計を保管する向きを工夫することで、時計の遅れ進みを調整できます(調整方法に関しては下記参考記事を参照)。


C.O.S.C.について知っておきたい5つのポイント

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