日本、そして世界を代表する著名ジャーナリストたちに、2021年発表時計からそれぞれのベスト5を選んでもらった。
今回は、『LEON』などで男のライフスタイル全般について執筆する福田豊がセレクト。
「各ジャンルから代表作を挙げようと思ったのだが、それだと皆同じような選択になりそうだ。そこで極私的な、つまり本気で欲しくなった新作を選んでみた。4本は非限定だから、まだ買うことができる。そこがうれしくも悩ましいところだ」と語った5本を紹介する。
ショパール「L.U.C QF ジュビリー」
ショパール マニュファクチュールの創設25周年記念モデル。カリテ フルリエ財団認定初のステンレススティールモデルというのが大きな特徴。搭載されるのは名作ムーブメントCal.L.U.C 1.96の系譜に連なるCal.L.U.C 96.09-L。直径39mmの小ぶりなケースサイズもよい。と、すべてが完璧に好みだったのだが、世界限定25本で即完売。レギュラー化を切に願う。
自動巻き(Cal.L.U.C 96.09-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ8.92mm)。30m防水。世界限定25本。182万6000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレスTel.03-5524-8922
ゼニス「クロノマスター スポーツ」
2021年1月に発表されるや、たちまち世界的大人気となった、今年いちばんの話題作のひとつ。最大の特徴が「エル・プリメロ」の進化版「エル・プリメロ3600」の搭載で、クロノグラフ秒針が10秒でダイアルを1周し正確な1/10秒の計測が可能。「A386」を基調に「レインボー」「ストライキング」など、各時代のモデルの特徴を組み合わせたデザインも魅力だ。
自動巻き(Cal.エル・プリメロ3600)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。10気圧防水。116万6000円(税込み)。(問) ゼニス ブティック銀座Tel.03-3575-5861
チューダー「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」
「ブラックベイ フィフティ-エイト」のケースをシルバー925にしたモデル。シルバーケースは、かつては懐中時計などにしばしば用いられたが今日では珍しく、そこが新鮮。独特の重量感や手触りも好ましい。また特別の配合比率により経年変化が起きにくく、美しいエイジングが楽しめるというのもよい。唯一、シースルーバックは不要だったように思う。
自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。シルバー925ケース(直径39mm、厚さ12mm)。20気圧防水。49万600円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダーTel.0120-929-570
パテック フィリップ「カラトラバ 6119R」
リファレンスが示すように「5119」の後継機となる新モデル。最大の見どころが、新開発ムーブメントCal.30-255 PS。手巻きでカレンダーなしという、およそ売れ筋ではないムーブメントを、これほど本気でつくりあげたところが感動する。直径39mmの小ぶりなケースサイズも好み。久々のクル・ド・パリベゼルの復活もファンには朗報だ。
手巻き(Cal.30-255 PS)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KRGケース(直径39mm、厚さ8.1mm)。3気圧防水。339万9000円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンターTel.03-3255-8109
H.モーザー「ストリームライナー・パーペチュアルカレンダー」
2020年に発表され、新世代のラグジュアリースポーツウォッチとして世界的人気となっている「ストリームライナー」に、新たに加えられたモデル。2006年のH.モーザーのブランド復活時に発表されたパーペチュアルカレンダームーブメントの名作Cal.HMC 341をセンターセコンドにしたCal.HMC 812を搭載。「シグネチャーフュメ」のダイアルも魅力だ。
手巻き(Cal.HMC 812)。33石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約168時間。SSケース(ケース径42.3mm、厚さ11mm)。12気圧防水。687万5000円(税込み)。(問)エグゼスTel.03-6274-6120
福田豊のコメント
新型コロナウイルスの影響により、今年も大規模な発表会は事実上ほぼすべて中止。しかしそれを逆手にとり、複数回にわたって新作を発表するブランドがいくつも登場した。要するに、年に一度の締め切りに合わせて一挙に見せる必要はない。じっくり自分のペースで納得のいくものを開発して見せていこう。そういうことなのだろう。そして、そのため例年以上に見応えのある新作が多かった。
ちなみに、複数回での発表会は、我々見る側にとっても利点が大きい。バーゼルやジュネーブの大会場を駆けずり回って、たったの1時間で全部を見なければならないのと、国内でゆっくりと見せてもらえるのとでは段違い。なので、スイスに行けないのは残念だが、これはこれでよいところもある、と思うことにしている。
さて、新作をジャンル別でいうと、相変わらず多かったのが、グリーンダイアル、ブロンズケース。ブレスレット一体型の、いわゆるラグジュアリースポーツウォッチも、ここ数年の潮流だ。また今年目立って多かったのが、手巻き、アンダー40mm。永久カレンダーも好作が揃った。さらに、独自のゴールド素材、インターチェンジャブルストラップ、そしてECOといったところだろうか。
ということで、各ジャンルから代表作を挙げようと思ったのだが、それだと皆同じような選択になりそうだ。そこで極私的な、つまり本気で欲しくなった新作を選んでみた。4本は非限定だから、まだ買うことができる。そこがうれしくも悩ましいところだ。
福田豊のプロフィール
ライター、編集者。『LEON』などで男のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』にて時計連載や動画出演など多数。ぜひ、ご覧ください。
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