日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2021年発表時計からベスト5を選んでもらうこの企画。
今回は時計専門誌からファッション誌、果ては新聞まで、幅広い媒体で執筆をするウォッチディレクターの篠田哲生が選んだ5本を紹介する。
篠田が選ぶのは、貴金属のゴールドにセラミックスを組み合わせてしまった新しい「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ」や、今流行のラグジュアリースポーツでも目を引く小径ケースの「ピアジェ ポロ」デイトなど、新鮮な驚きを与えてくれるモデルだ。
オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ」
ミドルケースにセラミックスを使った、新感覚のコンビモデル。ピンクゴールドとの組み合わせは、かなり色気があって楽しい時計に。縦筋目のダイヤル装飾も、モダンさを表現する新しいスタイルとして定着しそうだ。
自動巻き(Cal.4401)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KPG×セラミックス(直径41.0mm、厚さ12.6mm)。30m防水。495万円(税込み)。(問)オーデマ ピゲ ジャパンTel.03-6830-0000
ピアジェ「ピアジェ ポロ」デイト
ケースは小ぶりで、インデックスにはダイヤモンドをセッティング。ブルーダイヤルの発色もよく、ラグジュアリー感はありつつも、しっかりと個性を主張する。パートナー間で共有するシェアウォッチとしても人気が出そう。
自動巻き(Cal.500P1)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径36.0mm、厚さ8.8mm)。5気圧防水。154万円(税込み)。(問)ピアジェ コンタクトセンターTel.0120-73-1874
ゼニス「クロノマスター・スポーツ」
遂に名機エル・プリメロがリニューアル。クロノグラフ針が10秒で1周するそのスピード感も見所だが、時計自体のデザインもバランスが良くて美しい。クロノグラフはかくあるべしという“普通の良作”ではないだろうか。
自動巻き(Cal.エル・プリメロ3600)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径41mm)。10気圧防水。116万6000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座Tel.03-3575-5861
チューダー「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」
ケース素材にスターリングシルバーを使用。アクセサリー用素材とは異なり、すぐに黒ずむことはないそうだが、柔らかな素材感や鈍色の雰囲気などは、これまでのダイバーズウォッチとは違ったカッコよさがある。
自動巻き(Cal.MT5400)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。シルバー925(直径39mm)。200m防水。46万7500円(税込み)。(問)日本ロレックス/チューダーTel.0120-929-570
カシオ「MY-G-SHOCK」
サイト上でパーツの色を選んでカスタマイズしていく新サービス。王道の5600シリーズを自分流に楽しめるというのは、かなり魅力的。ちなみにこのサービスの仕組みやカラーリングを作ったのは若手デザイナーだそう。
クォーツ。樹脂(縦48.9×横42.8mm、厚さ13.4mm)。20気圧防水。54g。1万5400円(税込み)〜。(問)カシオ計算機お客様相談室Tel.03-5334-4869
篠田哲生のコメント
1年間、時計ばかりを見ていると、どうしてもブランドの都合や戦略が透けて見えることがある。「ああ、こう来たのね」、なんてちょっと斜に構えてしまうのだ。しかし、たくさんの時計を見てきたからこそ、新鮮な驚きに出合えるのも事実。ということで2021年の新作から、「うまい!」と膝を打ったモデルを選んでみた。
まずはオーデマ ピゲの「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ」。ミドルケースの素材を変えてコンビにするのはすでに採用していた手法だが、今年はミドルケースをセラミックスにして、質感の違いで立体的で美しいケース構造を演出。ゴールド×ブラックの色気あるスタイルを作り上げた。色気といえばピアジェの「ピアジェ ポロ 36mm」もうまかった。今年もラグジュアリースポーツウォッチが圧倒的に人気だが、最近はどうにもケース径が大きくなりすぎているように思える。その点このモデルは36mmという小径ケースで、しかもダイヤモンドインデックスで“ラグジュアリー”部分もしっかり表現している点に好感が持てた。
単純にカッコいい! と思ったのはゼニスの「クロノマスター スポーツ」とチューダーの「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」。何かが特別に目新しいわけではないけれど、デザインの妙や素材の妙で魅力的な時計に仕上げている。
そして最後は、カシオの新サービスの「MY G-SHOCK」。G-SHOCKは“着けて出掛ける”というコト消費に強い商材だが、そこに王道の「5600シリーズ」のカスタムという新たな体験が加わることでもっと楽しさが増した。うまい戦略であり、つい即注文してしまった。やっぱり時計って楽しいね。
篠田哲生のプロフィール
1975年生まれ。講談社『ホットドッグプレス』編集部を経て独立。時計専門誌、ファッション誌、ビジネス誌、新聞、ウェブなど、幅広い媒体で硬軟織り交ぜた時計記事を執筆している。また仕事の傍ら、時計学校「専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」のウォッチコース(キャリアスクールウォッチメーカーコース)に通い、時計の理論や構造、分解組み立ての技術なども学んでいる。近著に『教養としての腕時計選び』(光文社新書)がある。
https://www.webchronos.net/features/72509/
https://www.webchronos.net/features/70011/
https://www.webchronos.net/specification/70833/