圧倒的な開放感と濃密な体験。ヴァシュロン・コンスタンタンの旗艦店は何を目指すのか?

FEATUREその他
2021.12.16

12月5日に東京・銀座にオープンしたヴァシュロン・コンスタンタンの旗艦店「ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店」。ヴァシュロン・コンスタンタン取り扱い店がひしめく銀座エリアになぜ、同店は居を構えたのか? 同店が担う役割、そしてその魅力を見ていきたい。

三田村優:写真
Photographs by Yu Mitamura
細田雄人(クロノス日本版):文
Text by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)

ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店
〒104-0061
東京都中央区銀座4-3-9
TEL:03-6862-1755
営業時間 12:00~20:00


銀座4丁目にオープンした旗艦店

 ヴァシュロン・コンスタンタンが12月5日、銀座4丁目に新ブティック「ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店」をオープンした。かつて銀座天賞堂の本店があった場所(天賞堂ビル)、と書けば多くの時計愛好家はピンとくるだろう。

 中央通り沿いの銀座7丁目に位置するブティック「ヴァシュロン・コンスタンタン銀座店」をはじめ、「アワーグラス」「日新堂 銀座本店」など、ヴァシュロン・コスタンタンを扱う店舗が軒を連ねる銀座エリアに誕生した旗艦店。ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店の役割、そしてその魅力を見ていきたい。

1階:山崎杉夫のアートと自然光が飾り立てる空間

 ヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店に入って驚くのが、その明るさである。晴海通りと銀座レンガ通りがぶつかる交差点の角地に建てられた同ブティックは、日中の日当たりが非常に良好だ。高いビルが立ち並ぶ銀座4丁目であるが、大きな晴海通りに面している上、その数十m先は銀座4丁目の交差点のため、日光を遮るような建物がないのである。

 このことは上記画像からもお分かりだろう。この写真を撮影したのは午前10時過ぎで、日が昇り切った時刻である。銀座店のオープンは正午。つまり開店から日が沈むまで、ブティックには太陽光が当り続けるのだ。

 そしてこの好立地を生かすのが、晴海通り側に面している大型のガラスだ。自然光をふんだんに採り入れた店内は大理石の床や木を用いた什器、さらにはイラストレーターの山崎杉夫による切り絵アートと相まって、店内を明るく飾り立てる。既存のヴァシュロン・コンスタンタン銀座店をはじめ、多くの高級時計ブティックはエクスクルーシブな雰囲気を強調すべく、外からは中の様子が見えないような構造を取ることが多い。店内も落ち着いたトーンの配色と暗めの照明を合わせるのが一般的と考えると、これまでにない大胆な作りだ。

自然光を取り入れた明るい店内。既存の「ヴァシュロン・コンスタンタン銀座店」とはだいぶ印象が異なる。随所にはイラストレーターの山崎杉夫によるアート作品が飾られる。なお青いアートピースは、銀座本店のために作られた藁の象嵌、ストローマルケトリーによって作られた。

 そしてこの自然光が差し込む、明るい店内は単に珍しいだけでなく、顧客にとっても大きなメリットをもたらす。時計の色味をしっかりと確認することができるのだ。腕時計のケースや文字盤の色は照明の種類や太陽光下で、印象が異なる場合が多い。自然光がここまで入り込むブティックであれば、より実際に着用するシチュエーションでの色味に限りなく近い状態でチェックできるだろう。

現在、一部のコレクションが需要増によって入手しづらいヴァシュロン・コンスタンタンだが、在庫は豊富だ。写真は同店で力を入れて展開されるパトリモニーコレクション。

 そんなヴァシュロン・コンスタンタン 銀座本店の1階フロアにはもう1点、注目ポイントが存在する。それがガラス面近くに設けられたメティエ・ダールコレクションを取り扱う一角だ。なんとここには常時4品のメティエ・ダールコレクションが置かれており、販売されているのだ。まさかこの距離で、ヴァシュロン・コンスタンタンのメティエ・ダールが、それも4本も拝めるとは思いもしなかった。フラッグシップショップならではの試みだ。

1階のハイライトともいうべき、メティエダール・コレクションのディスプレイ。来店時には2021年の新作「メティエ・ダール『レ・グランヴォヤージュ』・ペドロ・アルヴァレス・カブラル」が販売されていた。