日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2021年に発表された時計の中からベスト5を選んでもらうこの企画。
時計とジュエリーを専門とする日本でも稀有な存在のジャーナリスト、本間恵子が選んだ5本は、これまでのジャーナリストたちとは明確に一線を画する。
パンデミックがなかなか収束しない中、その暗い世相を吹き飛ばすかのような輝きを放つカラフルな宝石で飾り立てられたジュエリーウォッチたち。その華やかさは、心を浮き立たせる“光のビタミン”となってくれるに違いない。
TASAKI「プチ スカル」
スカルをモチーフにした時計で知られるフィオナ・クルーガーが、パールブランドとコラボレーション。デザインとは裏腹に、生きる喜びと感謝の想いを大切にして今日という日を生きようというポジティブなメッセージを感じさせる。
自動巻き(Cal.Soprod A10)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦48×横34.5mm、厚さ9.8mm)。30m防水。330万円(税込み)。(問)TASAKI Tel.0120-111-046
ブルガリ「ディーヴァ ドリーム モザイカ」
ローマのカラカラ浴場に残る古代のモザイク模様を描き出したのは、色鮮やかなツァボライト。グリーンの美しさで人気を集めるガーネットの一種だ。精密にカットしたツァボライトをインビジブルセッティングで留めた技が秀逸。
自動巻き(Cal.BVL191)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KWGケース(直径37mm)。30m防水。2100万8900円(税込み)。(問)ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100
ハリー・ウィンストン「アルティメイト・エメラルド・シグネチャー」
珊瑚礁の海を思わせる澄んだブルーグリーンで、極めて高い人気を誇るパライバトルマリンを贅沢にあしらったモデル。ウォッチ本体からストラップを取り外し、ペンダントやブローチとしても使える仕立てはジュエラーならではだ。
クォーツ(Cal.HW1051)。18KWGケース(縦46×横32mm)。30m防水。1650万円(税込み)。(問)ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション Tel.0120-346-376
ピアジェ「ライムライト ガラ」
大小のサファイアとガーネットで描き出した色彩のグラデーションが見事。なめらかな虹色のグラデーションを表現するには、忍耐強く時間をかけて宝石を揃える必要がある。パレス装飾の彫金も、虹色をよく引き立てている。
自動巻き(Cal.501P1)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPGケース(直径32mm、厚さ9.98mm)。30m防水。1196万8000円(税込み)。(問)ピアジェ コンタクトセンター Tel.0120-73-1874
パテック フィリップ「ノーチラス・ハイジュエリー 7118/1454R-001」
ピンクダイヤモンドの約9割を産出していたオーストラリアのアーガイル鉱山は、枯渇のため2020年に閉山してしまった。その貴重な石を小出しに使うのではなく、全面にスノーセッティングでちりばめた贅沢さには驚きしかない。
自動巻き(Cal.324 S)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRGケース(直径35.2mm、厚さ8.65mm)。30m防水。時価。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
本間恵子のコメント
自粛また自粛の1年だった。未曾有のパンデミックが収まらない中、「メメント・モリ」や「カルペ・ディエム」を主題にしたスカルモチーフが散見されたが、今の状況下ならではのことではないかと思う。筆者の身辺でもいろいろあり、落ち込んでいるときにこうしたセンチメンタルな時計に出合うと、胸が締めつけられるような思いがして目が離せなくなってしまう。
ところでジュエリー界のワールドトレンドはというと、圧倒的に「宝石」だった。色鮮やかな宝石、稀少性の高い宝石が、ジュエリーに惜しげなくあしらわれたのだ。時計もこれを反映してか、カラフルな宝石で飾り立てたウォッチが目を引いた。中でもパライバトルマリンは一度は鉱山が枯渇してしまったため、通好み中の通好みな宝石として人気が高い。
この流れで登場したのが、レインボーカラーの宝石で取り巻いたウォッチだ。レインボーはかつてゲイプライドのシンボルカラーだったが、近年ではダイバーシティ&インクルージョンのシンボルともなり、ハイブランドが積極的にクリエーションに取り入れている。ジェンダーレス化の波が時計界にも押し寄せているので、レディスだけでなくメンズにも虹の七色があしらわれたのが興味深い。
ジュエリーウォッチに「色」が戻って来たのは、やはり、暗い影に覆われた世相において心を浮き立たせるような艶やかさが求められたからではないか。このトレンドはまだまだ続きそうだ。
本間恵子のプロフィール
時計・ジュエリー専門ジャーナリスト。元ジュエリーデザイナーながら、紆余曲折を経て物書き業に転身。キズミと宝石用の高倍率ルーペを常に持ち歩く。『フィガロジャポン』や朝日新聞などで連載を持つ。
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