コロナ禍で景気が悪いのに超高級時計が売れている理由とは?

2021.12.17

Q:なぜ景気が悪いのに高級時計は売れているの?

コロナ不況の対策として金融の緩和策を打ち出したりするした結果、一部で金余りが起こったため。また、中国が金融の引き締めを図ったことで、換金性の高い時計や宝飾にお金が流れ出したとも言われています。

広田雅将

2021年12月17日掲載記事

A:金余りや中国の金融引き締めが理由に挙げられます

コロナ禍によって大きな打撃を受けた世界経済。しかし、一部のサービスや製品などはむしろ売り上げを伸ばしています。そのひとつが、いわゆる高級機械式時計です。多くの関係者の話をまとめると、コロナ禍にもかかわらず、世界的に300万円以上の高級な機械式時計は売り上げが順調のようです。一方、高級な機械式時計のメインを支えてきた50万円から100万円程度の時計は以前のような勢いを失いつつあります。

こういう高額の機械式時計の中で、とりわけ売れているのはリシャール ミル、パテック フィリップ、オーデマ ピゲなどです。また100万円前後の価格帯でも、ロレックスやグランドセイコーは好調です。

一部の高額品に需要が偏っている理由のひとつに、いわゆる「金余り」があります。コロナ禍により景気の悪化を懸念した各国政府は、補助金を出したり、金融の緩和策を打ち出したりするなどして、景気のテコ入れを図りました。その結果、一部で金余りが起こりました。それらは仮想通貨に流れたり、あるいは時計や宝飾品、美術品といったものへの需要を喚起したりすることになりました。加えて最近は、中国が金融の引き締めを図った結果、お金が換金性の高い時計や宝飾に流れつつあるとも言われています。

ティファニー ノーチラス

コロナ禍における好調なブランドのひとつがパテック フィリップである。同社の「ノーチラス」は今や供給量に対して需要が大幅に上回ってしまった、“買えない時計”の最たる例だ。2021年に発表されたRef.5711/1Aのラストエディションであるグリーンダイアルモデルは販売価格401万5000円に対して、7月のオークションで約5400万円。先日発表されたティファニーとのダブルネームモデルは販売価格約600万円ところ、約7億3500万円という落札価格が付いた。


一部の時計は中古相場まで高騰している

こういった状況が続いた結果、一部の時計は、新品が手に入りにくくなっただけでなく、中古相場も暴騰するようになりました。一昔前はあまり注目を集めなかった時計の中にも、価格が2年で数倍にも跳ね上がった例があります。もっとも、一部の関係者は、今年の秋ぐらいから中古価格の暴騰に歯止めがかかったと述べます。

こういった状況がいつ落ち着くのかは分かりません。しかし、金余りの状況が続くことを考えれば、一部の高級時計や希少な時計は、当面の間入手しにくいままでしょう。対していくつかのメーカーは、転売対策などに取り組んでいますが、必ずしもうまく行っていないのが実情です。


話題をさらった"ティファニーブルー"のパテック フィリップ「ノーチラス」が7億円以上で落札!

https://www.webchronos.net/news/73594/
オークション初出品のパテック フィリップ「ノーチラス」新作が約5400万円で落札!

https://www.webchronos.net/features/67975/
時計経済観測所/「『資産』としての高級時計」再び

https://www.webchronos.net/features/60070/