高品質な腕時計を、良心的な価格設定で展開するチューダー。自社のアーカイブに範を取りつつ、モダンで洗練された意匠を有する「ブラックベイ」が代表的なコレクションだ。とはいえブラックベイの中でも、さまざまなバリエーションが展開されている。また、「ペラゴス」「ロイヤル」など、ほかにもコレクションは用意されており、どれが良いのか迷ってしまうこともあるだろう。そこでこの記事では、チューダーの各コレクションの特徴を解説するとともに、それぞれのおすすめモデルを紹介する。
チューダーにはどんなコレクションがあるの?
チューダーの腕時計には、どんな個性があるのだろうか。定番コレクションと、それぞれの特徴を紹介する。
チューダーの象徴「ブラックベイ」
チューダーを象徴するコレクションのひとつ「ブラックベイ」。写真は、特徴的なスノーフレーク針に加え、マットバーガンディのアルマイト加工ディスクを備えた逆回転防止ベゼルがインパクトを放つ。自動巻き(Cal.MT5602-U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。200m防水。62万1500円(税込み)。
2012年に誕生した「ブラックベイ」は、チューダーの往年の名機「オイスター プリンス サブマリーナー」をリバイバルした時計だ。精悍なルックスやチューダーらしいディテールが人気を集め、フラッグシップコレクションとしてブランドを支えている。
ブラックベイの特徴において特に強い印象を与えるのが、個性的な形状のスノーフレーク針だ。1970年代のモデルに採用されて以降、すべてのダイバーズラインで用いられている。
ベゼルの独特なカラーやビッグクラウンと呼ばれるリュウズも、目を引くポイントとして押さえておこう。初期モデルにのみ、創業当時に使われていたバラのロゴが文字盤に採用されている。
小径サイズの「ブラックベイ 54」
一見すると「ブラックベイ」だが、ケース径37mmとクラシカルなサイズ感のモデルが「ブラックベイ54」だ。自動巻き(Cal.MT5400)。27石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径37mm、厚さ11.2mm)。200m防水。54万6700円(税込み)。
ブラックベイには、さらにさまざまなコレクションが存在する。2023年に登場した、径37mmとクラシカルなサイズ感を持つコレクションが「ブラックベイ 54」だ。1954年に登場した、チューダー初のダイバーズウォッチ「オイスター プリンス サブマリーナー」Ref.7922
から範を取っており、リュウズガードのないケースやロリポップ針、数字以外の表記がないシンプルな逆回転防止ベゼルなど、古き良きチューダーのダイバーズウォッチを感じられる要素がちりばめられた。デイト表示の小窓を持たないところも、ヴィンテージスタイルが表れている。
搭載するムーブメントはCal.MT5400。C.O.S.C.公認で、ケーシングされた状態で日差6秒以内(-2、+4秒)の優れた精度や約70時間と実用的なパワーリザーブを備えており、ダイビングシーンのみならず、デイリーユースの腕時計としても活躍してくれるだろう。
“ビッグクラウン”から着想を得た「ブラックベイ 58」
近年、徐々に増え始めたブロンズ製腕時計。ブラックベイ 58のクラシカルな外観とマッチする。自動巻き(Cal.MT5400)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。ブロンズケース(直径39mm、厚さ11.9mm)。200m防水。ブティック限定モデル。68万900円(税込み)。
1958年に誕生したRef.7924からインスパイアされたブラックベイが、「ブラックベイ 54」だ。Ref.7924は、チューダー初の200m防水を備えたダイバーズウォッチであり、オリジナルのリュウズ形状から、ビッグクラウンの通称でも親しまれている。
ブラックベイの中でもユニークなバリエーションが展開されており、ベーシックなステンレススティールのほか、ブロンズやシルバー925、チューダーでは珍しい18Kイエローゴールドを使ったモデルも存在する。
レトロ感にあふれる「ブラックベイ プロ」
レトロとツール感にあふれたブラックベイ プロ。ファブリックストラップと、レザーとラバーライニングによるハイブリッドストラップもラインナップされている。自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ14.6mm)。200m防水。59万700円(税込み)。
固定式24時間表示ベゼル、GMT機能を搭載した「ブラックベイ プロ」。2022年に登場したコレクションで、39mm径の小ぶりなサイズやスケールが直接印字されたメタルベゼル、経年で焼けたような風合いを持つ蓄光塗料など、レトロ感にあふれる意匠となっている。
一方で性能は現代チューダーらしく、優れている。C.O.S.C.公認、約70時間のパワーリザーブ、200m防水を備えており、実用性は十二分である。
クロノグラフを搭載した「ブラックベイ クロノ」
ツール感の強い意匠が多いブラックベイだが、イエローゴールドやシャンパンカラーの文字盤によって、華やかさが添えられた「ブラックベイ クロノ」。自動巻き(Cal.MT5813)。41石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.4mm)。200m防水。90万5300円(税込み)。
2017年に誕生したコレクションが「ブラックベイ クロノ」だ。クロノグラフを搭載しており、タキメータースケールが印字されたベゼルやふたつのインダイアルを持つ。コレクションにブラックベイの名は付くものの、オイスター プリンス サブマリーナーではなく、1970年から歴史をスタートさせたチューダーの過去のクロノグラフモデルをほうふつとさせる意匠だ。
直径41mm、厚さ14.4mmの大ぶりのケースは存在感がたっぷり。また、搭載するCal.MT5813はブライトリングのCal.01をベースに改良が加えられたムーブメントとなっている。
防水性能に優れる「ペラゴス」
500mの防水性能に加え、ケースの9時位置にはヘリウムエスケープバルブを装備した本格ダイバーズウォッチのコレクションが「ペラゴス」だ。なお、200m防水の「ペラゴス39」も展開されている。自動巻き(Cal.MT5612)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm、厚さ14.3mm)。500m防水。70万2900円(税込み)。
「ペラゴス」はチューダーの本格ダイバーズラインである。ブラックベイと同様にチューダー オイスター プリンス サブマリーナーの系譜を継いでおり、高い実用性を大きな特徴に持つ。
ペラゴスの特徴は、ヘリウムを時計の外に逃がす仕組みにより500mもの防水性能を実現していることだ。ケースとブレスレットには、軽量かつさびにくいチタニウム素材が使用されている。
水中でブレスレット自動調整できることも、ペラゴスの実用性を高めている要素のひとつである。自社製ムーブメントを搭載し、精度も高められている。
探検に連れていきたい「レンジャー」
4つのアラビア数字とバーが並ぶインデックス、そして力強いアロー針が特徴的な「レンジャー」。自動巻き(Cal. MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径39mm)。100m防水。46万4200円(税込み)。
日付表示の小窓は持たず、時刻表示に特化したツールウォッチ「レンジャー」。チューダーでは「21世紀の探検時計」と銘打っている。1960年代に登場したRef.7995からインスパイアされたこの意匠は、2014年に誕生した「ヘリテージ レンジャー」でも採用されたが、このコレクションは日本では発売されなかった。しかし22年に「レンジャー」として改めてリリース。以降、ブラックベイやペラゴスと並んで、チューダーを代表するツールウォッチとして人気を集めている。
直径39mm、厚さ12mmとケースもコンパクトで、ベーシックな機能性と相まって、ビジネスシーンでも使えるツールウォッチだ。ジャケットの袖口から、さりげなく存在感を放ってくれるだろう。
古典的な意匠が美しい「チューダー ロイヤル」
2020年に発表された「チューダー ロイヤル」は、優雅さとスポーティーさを併せ持つモデルだ。1950年代に使われていたモデル名を復活させ、古典的な意匠を強調している。
チューダー ロイヤルの大きな特徴は、ポリッシュ仕上げとオルタネイティングカットを交互に配したノッチドベゼルで、ブランドのフィロソフィーを体現した、美しくも実用的なエレメントである。
ケースと一体化した5列インテグレイテッドブレスレットも特徴のひとつだ。また、41mmモデルに見られる12時位置のフルスペル曜日表示と3時位置の日付表示は、実用性と高級感を兼ね備えている。
ブラックベイのおすすめモデル
チューダーのブラックベイは、かつてのダイバーズウォッチを再解釈して生み出されたコレクションだ。多彩なバリエーションの中からおすすめモデルを紹介する。
チューダー「ブラックベイ」
自動巻き(Cal.MT5602-U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.6mm)。200m防水。59万1800円(税込み)。
2023年、超耐磁性能を誇るマスター クロノメーター認定の「ブラックベイ」が登場した。そして翌24年、そのカラーバリエーションとして、ブラック文字盤にブラックベゼルを備えたRef.M7941A1A0NU-0002がコレクションに追加された。
特徴的な形状のスノーフレーク針をはじめ、ブラックベイのスタイルはそのままに、いっそう高性能なCal.MT5602-Uを搭載している。
また、クラスプは“T-fit”クイックアジャストクラスプという仕様で、工具なしにサイズの微調整が可能だ。
チューダー「ブラックベイ 58 GMT」
自動巻き(Cal.MT5450-U)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。64万3500円(税込み)。
2024年新作時計の中でも非常に注目されているのが「ブラックベイ 58 GMT」だ。現在地のほか、ホームタイムも表示させるGMT機能を持ったモデルは、これまでもチューダーに存在していた。しかし本作は、GMT機能とともに、日付の早送り機能をも備えている。時針を単独で動かすというのがベーシックなGMT機能で、通常、日付はこの時針をぐるぐる回しながら切り替えていく。しかしチューダーでは日付の早送りも別途可能としたことで、日付、時針、それぞれリュウズでクイックリーに調整できるのだ。
直径39mm、厚さ12.8mmのコンパクトなケースや、グロッシーなブラック×レッドのベゼルといったデザイン面でも魅力が多く、チューダー人気を牽引していく存在となるだろう。
2021年に発表されたブラックベイの新作「ブラックベイ セラミック(Ref.M79210CNU-0001)」には、光沢を抑えたブラックセラミックが採用された、シックで力強い印象を与える1本だ。黒が生み出すダイアルとインデックスのコントラストが魅力といえよう。
チューダー「ブラックベイ クロノ」
自動巻き(Cal.MT5813)。41石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm、厚さ14.4mm)。200m防水。77万7700円(税込み)。
チューダーのクロノグラフ誕生50周年を経て2021年に登場したのが、「ブラックベイ クロノ」である。ブランドにおけるクロノグラフの歴史が凝縮された時計だ。
ムーブメントには、両方向回転ローターを備えた自社製ムーブメントCal.MT5813が採用された。スノーフレーク針やリベットブレスは、コレクションの美学に忠実であることを示している。
シルバーカラーのマーカー付きタキメーターにより、洗練されたクロノグラフにスポーティーな雰囲気が備えられた。ダイアルとサブカウンターのコントラストも目を引くモデルだ。