プロ仕様ダイバーウォッチ、オリス「オリス アクイスプロデイト キャリバー400」をテストする

FEATUREWatchTime
2022.01.11

プロフェッショナルという意味のプロ。実用性という点では、オリスの自社製キャリバー400を搭載した「オリス アクイスプロデイト キャリバー400」に匹敵する現代の機械式ダイバーズウォッチは、市場にそう多くは存在しないだろう。我々はこの時計を手に入れ、詳しくレビューを行った。

Originally published on watchtime.com
Text by Alexander Krupp
2022年1月11日掲載記事

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

自動巻き(cal.Oris 400)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約5日間。ブラックDLC加工チタンケース(直径49.5mm)。1000m防水。53万9000円(税込み)。


1000mの高い防水性能とユーザーフレンドリーな設計を両立

「オリス アクイスプロデイト キャリバー400」を通常のダイバーズウォッチと比較することは、完全装備のプロフェッショナルダイバーと趣味のスキューバダイバーを比較するようなものである。例えば深海ケーブルの敷設や水中パイプラインの修理など、厳しい状況下ではプロが担当する範疇であるために、ダイバーの装備はより高圧に耐え、なおかつ安全性と操作性を最大限に担保したものが必要である。

 今回のテスト機は、これらの特性をすべて備えている。水深1000mまでの防水性を備えたケースは、耐久性も非常に高い。潜水時間を計るベゼルとラバーストラップには、特許取得のセーフティメカニズムが備わっている。操作面においては、ベゼルからリュウズ、クラスプに至るまでユーザーフレンドリーな設計だ。

堅牢なケース

 直径49.5mmの大型ケースはDLCコーティングを施したチタン製で、水深1000mまでの防水性を備え、あらゆる状況のスポーツまたはプロフェッショナルユースに十分耐えうる。リュウズはねじ込み式で、その両側には衝撃から守るプロテクターが装備されている。ベゼルの目盛り付きインサートは、傷のつきにくいセラミックス製だ。オリスはカーブしたサファイアクリスタル製風防の文字盤側にのみ無反射防止加工を施しており、これにはふたつの利点がある。まず、ダイヤモンド以外では風防表面にキズがつかないという点。次に、黒い時計にとっては煩わしい両面に無反射防止加工を施した時計の多くに見られる青い光が、採光条件が変わっても発生しないという点だ。

 ケースバックは湾曲した完全なねじ込み式で、水の浸入を防ぐ。ケースを開けるために使用する6つの溝の深さは、このねじ込み式ケースバックがいかに厚いかを物語っている。ちなみに裏蓋にはフィートとメートルの換算ができる円形の目盛りが付いている。これは付加情報としては面白いが、目盛りが小さいことと、黒色のDLCコーティングの濃さのため、読みにくいのが難点だ。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

ラバーストラップにはセーフティアンカーと安全性を高めた5段階のクイックエクステンション機構を内蔵したフォールディングクラスプが付属しており、最大18mmまでストラップの長さを追加することが可能だ。

最大限の安全性

 ダイバーズウォッチには、高い防水性だけでなく、ベゼルが反時計回りにしか回らないことも重要である。例えば潜水中にダイバーの装備と時計がこすれて目盛りがずれた場合、ベゼルは実際の潜水時間よりも長い間隔を示す可能性があり、結果としてダイバーは当初想定したよりも早く水面へ浮上することになるが、遅れることはない。またその他の有効なセーフガードとして回転式インナーリングを使用することがあり、これは設定後にリュウズで固定することで、不用意な回転を防止することも可能だ。

 オリスはこの両方の保護対策を、ローテーションセーフティシステムと呼ばれる特許取得済みのメカニズムで実現。この機構は回転ベゼルの周囲の金属製リングと、溝付きのラバーコーティングで構成されている。このリングを上部方向に引っ張ると、潜水時間を示すベゼルの溝とつながり、分針と連動してリセットできる。もう一度リングを押し込むと、ベゼルはその場所に固定され、設定したい時間を示す。リングはまだ回転できる状況だが、潜水時間の目盛りと連動してはいない。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

ベゼルは潜水時の安全を考慮して設計されている。

 しかし、もし潜水前にリングを押し込み忘れたらどうなるのだろうか? その場合でも、一般的なダイバーズウォッチと同じレベルの安全性を確保することができる。セーフティシステムを導入しているにもかかわらず、オリスは逆回転防止機能付回転ベゼルも採用しているのだ。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

明瞭な2色の蓄光塗料。

 プロフェッショナルダイバーズウォッチの安全確保には、今回のテスト機にも搭載されているヘリウムエスケープバルブも重要だ。このバルブにより、数日間の加圧された深海での作業中に時計ケース内に蓄積されたガスが、時計と着用者がダイビングベル内で上昇する際に安全に排出される。この特徴は、外気圧が低下した際にケース内に過剰な圧力が発生し、時計の風防の破損やへこみを引き起こすことを防ぐ。

 しかし安全性ということになると、それだけでは足りない。回転ベゼルについては片がついたが、オリスは賢い特許取得の解決法をストラップにも考案した。それがクラスプから滑り落ちないようストラップに施された矢の形をしたストラップの先端だ。これは「セーフティアンカー」と呼ばれ、ストラップの長さを調整する際にピンを望む穴にきちんと納められなかった時やクラスプをちゃんと止められなかったときに活躍する。これらのミスはそれぞれ可能性が低く、両方が同時に起こる可能性は極めて低いのだが、諺に言われるように「備えあれば憂いなし」である。セーフティアンカーはあるが、ケースバックにある換算スケールを見る時になどのためにストラップは完全に開くことができる。これには矢の形をしたストラップの先端を絞り、クラスプからスライドさせるだけでいい。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

時計にはヘリウムエスケープバルブが組み込まれている。

便利な操作性

 クラスプには安全性を高めるだけでなく、実用性と着用性を強化する他の工夫もある。フォールディングクラスプを開くには、片側のセーフティプッシャーを押すだけという基本設計は使い心地がいい。今回テストに参加した編集者たちが感心したこのシステムは、信頼性が高いとの評価であった。その他にも5段階で最大18mmまで延長できるクイックリリース・エクステンションがあり、少しのコツを飲み込めば装着したままストラップを長くしたり短くしたりすることが可能だ。

 利便性の高い使い勝手は、大きく掴みやすいねじ込み式のリュウズにも表れている。ブラックDLCコーティングが施されたリュウズはこの腕時計の大きさに合わせたサイズになっており、操作の容易性を担保している。また回転ベゼルも非常に使いやすいものだ。ラバーは掴みやすい素材で、リングの深い刻みは滑りにくい感触を与えている。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

ねじ込み式リュウズには、ブラックDLCコーティングが施されている。

現代的なムーブメント

 自社製キャリバー400の特徴のひとつは、ユーザーを困惑させるかもしれない。時刻調整のためにリュウズを引き出すと、分針が1分半ほど前にジャンプするのだ。この現象はキャリバー400に特有なものではないかと思われる。リュウズを元の位置に押し込む時に針は動かないためこれは深刻な問題ではない。ただ数週間にわたって時計が数秒進み、リュウズを引いて調整したいと思うと、少し待ってからリュウズを押し込む必要があり、この調整は時に応じて必要となる。今回のテスト機は我々による測定で日差+0.5秒となっていたが、着用テストでは数週間で+2から9秒となっていた。

 テスト機の少し進みがちな傾向以外には、オリスのキャリバー400に特に改善を求めたいことはなかった。2020年秋に発表された自社製ムーブメントは長い約5日間のパワーリザーブを保持し、耐磁性は大幅に高められ、メンテナンスのインターバルは10年という長いものだった。これによりオリスは10年保証を提案しているが、防水性については毎年のチェックを勧めている。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

ねじ込み式リュウズには、ブラックDLCコーティングが施されている。

サイズは大きいが重くはない

 テスト機は推奨されるメンテナンス期間を検証をするのに必要な10年の時をまだ経ておらず、新型コロナウィルスの影響によりキャンセルされたためにコンサート会場にあるような大きなスピーカーの強い磁場にさらされることもなかったが、そんな中で長いパワーリザーブは大きな利点として映った。数日間放っておいて、また着用する際にも非常に便利であった。

 シャワーや水泳で時計を外す必要はないが、ビジネスミーティングやガラなどの機会にはおそらく着用しないと思われる。スポーティーなツールウォッチ然たる外観であり、ドレスシャツやセーターの袖の下には収まりにくいサイズだろう。直径49.5mm、厚さ17.5mmは小さくはないが、軽量なチタン製ケースのため、不快なほど重たくなることはない。158gという比較的軽い重量のおかげで手首にもよく馴染む。またストラップの最後の穴とクイックエクステンション機構の最も狭いステップに調整してもストラップが長すぎる場合は、ラバーストラップを単純にカットして、クラスプの位置を変えるだけでいい。全てがきちんと考え抜かれていて、偶然の産物ではないのだ。つまりプロフェッショナルダイバーは予期せぬ偶然を避ける傾向があるということだ。

オリス アクイスプロデイト キャリバー400

デイト表示は6時位置に配されている。


精度安定試験

(秒単位日差)
文字盤上 +1
文字盤下: −2
3時上: +1
3時下: +3
3時左 +3
3時右 −3
最大姿勢差: 6
平均日差: +0.5
平均振り角:
水平姿勢: 311°
垂直姿勢: 288°

スコア

ストラップ&クラスプ(最大10Pt): 迅速にできるラバーストラップの調整と紛失防止のセーフティアンカーは高く評価できる。9Pt
ケース(10): 1000mの防水性能、自動式ヘリウムエスケープバルブ、特許取得のセラミックインレイと夜光性スケールを備えたセーフティベゼル。9Pt
文字盤と針(10): インデックスと針、5本の波模様の作りは丁寧である。8Pt
デザイン(15): 余分なもののないツールウォッチ仕様。12Pt
視認性(5): 日常使いにおいては完璧な視認性を確保しており、蓄光塗料の光は潜水時間の最初の20分は弱いが、ミニッツスケールの視認性は潜水時でも平均以上である。5Pt
操作性(5): 大きなねじ込み式リュウズ、回転ベゼル、ユーザーフレンドリーなストラップは操作が容易だ。リュウズを引き出した時に分針が戻る傾向が見られる。4Pt
着用性(5): シャツのカフやセーターの袖下には収まらないが、軽量なチタン製のため、驚くほど着用性は良い。4Pt
ムーブメント(20): 追加巻き上げなしで約5日間稼働する自社製キャリバー400は、耐磁性が高く、メンテナンスは10年ごとで大丈夫だ。16Pt
精度(10): 平均した+0.5秒は計時性能としては許容範囲で、姿勢差は6秒と小さい。8Pt
総合評価(10): 価格はオリスとしては高い方だが、内容と比較して適性である。8Pt
合計: 83Pt

※本記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。


【動画】オリス待望の自社製自動巻きムーブメントを映像で紹介!!

https://www.webchronos.net/features/59901/
オリスの歴史においてカギとなる25の出来事について

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オリス「アクイス クロノグラフ」の着用レビュー

https://www.webchronos.net/features/34564/