モンディーンの往年のデザインにセリタの自動巻きムーブメントを組み合わせた「エヴォ2オートマチック」

FEATUREWatchTime
2022.01.19

モンディーンは2021年夏に、「スイス国鉄の公式時計」として有名なデザインを用いた自動巻きモデル「エヴォ2オートマチック」をエヴォコレクションに追加発表した。デザイン、ムーブメントなどの詳細を、モンディーン社の取締役であるアンドレ・ベルンハイムのコメントとともに紹介する。

エヴォ2オートマチック

モンディーンは1986年以来生産している有名な鉄道時計の自動巻き式モデル「エヴォ2オートマチック」を、2021年に再投入した。
Originally published on WatchTime
Text by Roger Ruegger
2022年1月19日掲載記事

スイス人の誇りである時計産業と国鉄を融合させたデザイン

 他の鉄道会社同様、1902年に設立されたスイス連邦鉄道(ドイツ語、フランス語、イタリア語の名前の頭文字を取ってSBB、CFF、FFSと呼ばれる)も、初期の段階から、ヨーロッパにおける密度の高い鉄道網を構築し、安全に運営するために、時間に正確であることの大切さを認識していた。現在、スイス人は世界のどの国よりも列車で移動するとされ、国境内ではひとり当たり年間平均2400kmを利用している。スイスには、ヨーロッパで最も高い場所にある鉄道駅(標高3454m)、世界で最も長い鉄道トンネル(全長57km)、そして5200kmにも及ぶ鉄道網、2万1500kmの公共交通ネットワーク、1000kmの登山鉄道がある。つまり、スイスは時間に対して正確であることを真剣に捉えているのだが、それは国内で多くの時計が生産されているからという訳ではない。

エヴォ2オートマチック

赤い秒針は、乗務員や駅員が使う車掌用の棒の形状から来ている。

 1940年代、国営だった鉄道会社は、同期する駅の時計を導入し始めていた。スイスの電車が常に分単位で駅を出発していたからであり(これにより鉄道時刻表には秒単位の掲出が不要であった)、各時計は分単位で中央のマスタークロックから電話回線を通じて電気信号を受信し、分単位で分針を同期させていた。これらの時計はスイスのエンジニアでスイス国鉄の職員だったハンス・ヒルフィカー(1901年~1993年)によって設計され、ベルン州スミスワルドでW.モーザー・べア社によって生産されていた。ヒルフィカーは1932年にチューリッヒ駅の時計を設計しており、1943年には早くも秒針付きのプロトタイプに着手している。ただ、乗務員や駅員が使用する車掌用の棒の形状をなぞらえた赤い秒針(ローテ・ケレ/赤信号の愛称を持つ)が、1950年代以降公式に採用されているデザインの標準装備となるには、もう少し時間を待たねばならなかった。

エヴォ2オートマチック

オリジナルバージョンと比較して、より丸みを帯びた有機的なケースを採用し、直径40mmと35mmの2種類を用意した「エヴォ2オートマチック」。レザーストラップを組み合わせた35mmモデルは7万4800円(税込み)。

 オリジナルの時計の秒針は、マスタークロックから独立したモーターによって運針され、約58.5秒で1回転し、それから時計の上部で一時停止する。そしてマスタークロックから次の1分開始の信号を受信すると同時に、次の回転へと進むのである。ヒルフィカーによるスイスの現代生活への貢献は、この時計だけではない。彼は一体型キッチンのコンセプトを開発し、キッチン部品のスイス標準サイズの決定にも関わった。しかし赤い秒針は、国民が時間を守ることに最も大きな影響を与えた。これはスイスにおける計時の歴史の中で最も認知度の高い時計のデザインのひとつと言える(スイスには現在798の鉄道駅がある)。通勤客は赤い秒針を見るだけで瞬時に、電車に乗るにはどれくらいの時間が残されているのか(または電車が既に出発してしまっているのか)を知ったのだ。当然のことながら、このデザインは世界中で認められ、いくつかの賞を受賞している(また、2012年9月にリリースされたiOS6にApple社がこのデザインを無断で使用していたことがあり、結果としてスイス鉄道の特許を侵害したとして、その翌月に非公式ではあるが多額の賠償金を支払ったことが広く知られた)。

エヴォ2オートマチック

エヴォ2オートマチックはムーブメントにセリタSW200-1を搭載。

 モンディーンは1986年以来、このデザインをベースに掛け時計、置き時計、腕時計を生産するライセンスを保持している。当然だが、すぐにこの時計は家族経営の会社の主要商品となった。モンディーン社の取締役であるアンドレ・ベルンハイムは語る。「駅に設置されている時計のアイコニックで紛れもなくミニマルなデザインは、1944年から変わることなく受け継がれている。当時の設計図をもとに、私たちはこの時計を作り続け、1986年からモンディーン・ブランドの柱となっています。現在のコレクションは掛け時計から置き時計、腕時計まで幅広く、ケースの形状もピュアなものから少し丸みを帯びたもの、薄型のものや、ヒマシ油など持続可能な素材を採用したものまでさまざまです。また機能面でも特許取得の「バックライトテクノロジー」(後述)や、歴史的なスイス鉄道時計のように58分の運針と2秒の停止が特徴の「ストップ・トゥ・ゴー」などを展開し、一貫したデザインを幅広い顧客層に訴求することを可能としています」。

 そして現在、モンディーンは、自動巻きムーブメント(セリタSW200-1)を搭載したバージョンを「エヴォ2オートマチック」として復活させている。ベルンハイムは、「モンディーンでは機械式時計を約20年前から展開しており、例えば2012年には、ETA2801-2搭載の最初の手巻き式鉄道時計が限定400本で発表されています」と付け加える。彼は機械式という選択肢を選んだ他の理由にも言及している。「サステナビリティは、ここ何十年にもわたって重要な課題となっています。私たちはCO2ニュートラルな時計会社を目指しています。自動巻きムーブメントは明らかに私たちの戦略と時代性を反映したものであり、それが私たちの自動巻き時計の範囲を広げていくもうひとつの理由です」。

エヴォ2オートマチック

モンディーンのエヴォ2 オートマティックには、尾錠付きのレザーストラップが組み合わされている。

 自動巻きの新しいエヴォ2オートマチックを、モンディーンは「モンディーンの前衛的な評判にふさわしい、控えめながら印象的なデザインを前進させた」と表現する。ケースはより有機的になり、丸みを帯びた曲線がトランスパレントバックにつながっている。またケースのラグもわずかに細く改良され、リュウズも機能性を高めるために変更され、全体的にバランスの取れた外観となった。このモデルは赤色または黒色のレザーストラップが組み合わされた直径40mmバージョンと、黒色のレザーストラップ付きの35mmバージョンの2種類のケースサイズが用意されている。またどちらのケースサイズも、メッシュブレスレットモデルも展開している。この時計はスイスのソロトゥルンにあるモンディーンの工場で組み立てられ、すべての時計は30mまでの防水検査済みで、2年間の国際保証が付いている。

エヴォ2オートマチック

エヴォ2オートマチックのブレスレットモデル。自動巻き(Cal.SW200-1)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径35mm)。30m防水。8万1400円(税込み)。

 デザイン面では、スイスらしい赤、白、黒を基調とした文字盤デザインの、機械式ムーブメントを搭載した腕時計として、多くのスイス人にとっての誇りである時計産業と国鉄を融合させたデザインになっている。当然ながら、文字盤の視認性は抜群だ。モンディーンは黒い針、分目盛り、インデックスを蓄光塗料で覆わないことにした(同社は一部の時計で、超強力なスーパールミノバ素材を用いた「バックライトテクノロジー」というコンセプトを採用し、時計の針の裏側に塗っている)ので、夜行列車で移動する人は文字通り暗闇の中にいることになる。一方、価格は非常に魅力的で、デザインを訴求しながら他にはないオファーに成功している。

 ベルンハイムは、「この時計は伝統的な時計作りを大切にし、機械式ムーブメント、時代を超えたデザイン、長持ちするサステイナブルな製品に情熱を注ぐ人々のために作り出したのです」と締めくくっている。

エヴォ2オートマチック

(機械式ではないが)鉄道時計の最も大きなものはチューリッヒにある。高さは4mあり、駅の照明と中央ホールの解放感のあるガラスドームのもと、どの方向からも良く見える。チューリッヒの中央ホールを通る約30万人が日々この時計を見上げている。


Contact info:DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com


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