アメリカの国民的スポーツ、そのピラミッドの頂点に君臨するのが野球だ。野球の歴史的な神秘性と偉大な選手たちの煌めくようなパワーに触発されて、いくつかの時計メーカーがこのアメリカならではのスポーツをたたえるタイムピースを世に送り出してきた。ここでは、野球の魅力を伝える4本の時計と、時計に関連したオブジェ1点を紹介する。
Text by Mark Bernardo
2022年1月25日掲載記事
オリス「ロベルト・クレメンテ リミテッドエディション」
オリス「ロベルト・クレメンテ リミテッドエディション」はピッツバーグ・パイレーツの伝説的選手であり、社会福祉にも貢献してきたロベルト・クレメンテにオマージュを捧げている。ブラックとゴールドのアクセントの効いた文字盤はクレメンテが着用したパイレーツのユニフォームにインスパイアされている。ロベルトの背番号21の日付表示にはゴールドがあしらわれた。ねじ込み式リュウズが付属したステンレススティール製ケースはソリッドケースバックを備え、そこには野球殿堂博物館のイメージとクレメンテのラテン系選手として初めて3000本安打を記録した歴史的業績をたたえる3000本の限定ナンバーが記されている。搭載するのは自動巻きキャリバー754。野球ボールを彷彿とさせるダブルステッチが施されたブラウンのレザーストラップが組み合わされている。
ユリス・ナルダン「ビッグユニット クロノグラフ」
2012年に発表されたユリス・ナルダン「ビッグユニット クロノグラフ」は、その名を冠した殿堂入り投手、ビッグユニットことランディ・ジョンソンとのコラボレーションにより、野球の雰囲気を上品かつさりげなくまとったものだ。クロノグラフ秒針のカウンターウェイトには野球ボール型の小さなアイコンが配置され、ベゼルには通常「50」の位置にジョンソンのダイヤモンドバックス時代の背番号である「51」の数字が記されている。6時位置のサブダイアルの外周には、「Big Unit」と「Limited Edition」の文字があしらわれている。この時計はブラック・オン・ブラックのモノクロームの外観だ。文字盤とベゼルにはローズゴールド、レッド、ブルーのアクセントが効いている。ブラックラバーのコーティングが施されたステンレススティール製ケースは直径45.8mmで、30秒クロノグラフ、スモールセコンド、日付表示を備えた自動巻きキャリバーUN-35を搭載し、約42時間のパワーリザーブを備えている。
RGM ウォッチ「PS-801-BB“ベースボール イン エナメル”」
左/ローランド G・マーフィーにインスパイアを与えたウォルサムのヴィンテージポケットウォッチ。
「PS-801-BB“ベースボール イン エナメル”」は、ペンシルバニアのランカスターに拠点を置くRGM ウォッチが2014年に発表したシリーズである。創業者であるアメリカ出身の時計師ローランド G・マーフィーが国立時計博物館を見学中に発見した、野球をテーマにしたエナメルダイアルを持つ、1892年のウォルサムの珍しい懐中時計からヒントを得ている。3年の歳月をかけ、マーフィーは専門の職人を探し出し、時位置に野球選手の細密画を描いたグランフー・エナメルの文字盤を腕時計用に再現したのだ。見事に仕上げられたエナメルダイアルの裏側には、クラシカルな形状のブリッジ、ポリッシュ仕上げの青焼き部品、手作業による仕上げ装飾が施された自社製キャリバー801ムーブメントが搭載されている。楔形の巻き上げリュウズを備えたポリッシュ仕上げのケースもランカスターで作られている。
オーク&オスカー「アシュランド」
2019年のMLBのシーズン後、シカゴに拠点を置くオーク&オスカーはウィルソン・スポーティング・グッズとパートナーシップを組み、リミテッドエディションの時計を開発した。この腕時計はアメリカの国民的娯楽である野球のファンにしっかりと訴求する巧妙な仕掛けを備えている。「アシュランド」というモデル名は、ウィルソン・スポーティング・グッズの元々の社名であり、長い間スポーツ用品やアクセサリー、洋服そしてメジャーリーグ・ベースボールのための公式グローブを作ってきたアシュランド・マニュファクチャリング・カンパニーに由来する。直径40.0mmのケースにはウィルソン独自の「ウィルソン コッパー A2000プロストック」製のレザーストラップが付属し、野球場の芝を連想させるグリーンダイアルには、白いファウルラインのようなインデックスと12時位置にホームベース型のアイコンがあしらわれている。「イニングトラッカー」と呼ばれる回転ベゼルには1から9の数字が配され、各イニングの上下に断続的に仕切りが付いているため、試合中のイニングの経過を把握することができる。
特別編/野球バッドを象ったオブジェ
ニューヨークの職人工房ベルド・ベイエ(Berd Vay'e)は、世界中のアンティーククロック、懐中時計、腕時計からムーブメントパーツを抜き出し、飛散防止用の高級樹脂であるルーサイトの中に閉じ込めた人目を引くミニチュアサイズの野球バットのオブジェで有名になった。その名もふさわしく「America's PasTIME」と名付けられ、フロリダにオープンしたウォッチサロン「Goldsmith & Complications」で発表された。これは小売店とベルド・ベイエ、そしてシカゴカブスのスラッガー、イアン・ハップとのパートナーシップから生まれたものである。ハップが「野球と時計の特別な邂逅」と表現する17インチのミニチュアサイズの野球バットは、型抜きされたルーサイトの内側に時計の部品と、ハップ自身が使用した木製バットの破片が浮かび上がっている。この作品は、本棚や机、コーヒーテーブルなどに飾れるようデザインされており、世界限定30個、価格は4000USドルで発表された。
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