WatchTime編集部がグルーベル フォルセイのCEO"アントニオ・カルチェ"と膝を突き合わせ、時計に対する情熱や今後のグルーベル フォルセイへのビジョンについてインタビューをした。
Text by Roger Ruegger
2022年2月1日掲載記事
2020年12月、アントニオ・カルチェはグルーベル フォルセイのCEOに就任した。業界のベテランであり、訓練を受けたエンジニアである彼は、ピアジェ、パネライ、コルムとキャリアを重ね、ジラール・ペルゴとジャンリシャールを保有するソーウィンド グループではCEOを務めた。WatchTime編集部はカルチェと膝を突き合わせ、時計に対する情熱や今後のグルーベル フォルセイへのビジョンについてインタビューする機会を得た。
Q.時計業界を選んだ理由は何ですか?
A.私はいつも時計に対する情熱を抱き続けてきました。スイス・ニューシャテル出身ということもあり、時計製造の仕事やデザインには常に敏感でした。そのため、この業界で働く意欲を自然と持っていたことは言うまでもありません。
Q.初めて買った時計は何ですか? また、今着けていらっしゃる時計は?
A.私の最初の時計はボーム&メルシエでした。そして今日はグルーベル フォルセイの「バランシィエ S2」を着けています。本モデルはデザインとモダンさを兼ね備えた新しい価格帯の時計です。
Q.時計がコレクションされる理由は何だと思いますか?
A.収集されるためには、価値あるものである必要があります。歴史的な意義、ユニークさ、他との違い、製造方法、生産数、品質などがその価値を高めてくれるでしょう。時計はさまざまなものが絶妙なバランスで組み合わさって価値が生まれる、非常に興味深いコレクターズアイテムです。またコレクターズアイテムは、時代を超越したものでなければなりません。
Q.グルーベル フォルセイの時計でお気に入りのコンプリケーションはありますか?
A.そうですね、地球儀を配した「GMT アース」や均時差表示を備えた「QP イクエーション」などいくつかあります。その他にも、「ダブル・トゥールビヨン30°」のような、さまざまなトゥールビヨンも印象的です。これらの複雑機構はその精度の高さによって多くの付加価値を与えてくれます。
Q.グルーベル フォルセイに来て、最初に実行した変更はなんでしたか?
A.変更というよりも、進化させたことですね。必要なのはブランドとグルーベル フォルセイで働く120名の従業員のために持続可能な未来を担保することです。つまり素晴らしいクラフツマンシップを活かしながら、新作の提案、流通、コミュニケーションを通して、世界規模の視野と戦略を実行し、進化することが必要なのです。
たった数年でグルーベル フォルセイが成し遂げてきたことは信じられないようなことばかりですが、栄光に浸ってばかりではいられません。グルーベル フォルセイは常に限界を押し広げ、さらに一歩先を行く方法を模索しています。この考え方はロベール・グルーベル、ステファン・フォルセイ、そしてチームの全員と私自身が共有するもので、私たちのコラボレーションは非常にエキサイティングなものです。私たちの責任は常にこの最高レベルの上を目指す気持ちを維持することであり、私自身のマスタープランにおいてもこの方向性は今後何年にもわたって継続することをお約束します。
Q.グルーベル フォルセイでの目標のひとつは、20万スイスフランから35万スイスフランの価格帯での販売量を増やすことがあると伺っています。どのようなターゲット層や市場を想定していますか?
A.ブランドの将来にとって、顧客層を広げることは重要だと考えます。もちろん専門性を維持する方向性に変わりはありません。新しい価格帯での商品展開で、デザイン性と現代性をふんだんにタイムピースに持たせることにより、より若い顧客層にも訴求していきます。ただし既存のコレクターの方々も大切にしていきます。
Q.現在の年産は約100本でいらっしゃいます。どのようにこの数字を上げていきますか?
A.クオリティに関しては絶対に妥協しませんので、着手するのは効率性です。2022年には180本以上の時計を生産・納品できるようにすでに手を打っており、これだけでもかなりの増産となります。
Q.生産本数を増やすには、より多くの従業員とトレーニングが必要となると思います。今後数年におけるチームの成長をどのように思い描いていらっしゃいますか?
A.チームの成長は欠かせませんが、同時に基幹設備の整備も必須だと思います。現工房の近くに土地を確保し、新しい工房とアトリエを組み込む大規模な拡張計画が進行中です。
Q.限られた生産本数からは、自然と特別な顧客グループが発生すると思います。グルーベル フォルセイの「典型的な」顧客像とはどのようなものでしょうか?
A.現在までの提供商品は非常にニッチで、一定の特別なコレクターにのみ訴求するものでした。これからは新価格帯における提案商品の進化によって若い顧客層にアプローチしていきますが、品質、職人技、本物に対する深い理解を持つ、特別な顧客層であることに変わりはありません。
Q.アメリカ市場が果たす役割はどのようなものでしょうか?
A.アメリカは私たちにとって、常に戦略的に重要な地域です。私たちは長年にわたってこの地域で大きな成功を収めてきましたが、発展の可能性はまだまだあります。グルーベル フォルセイにとって戦略的かつ重点な市場であり、大きな成長の余地を秘めているため、今後2年の間に優先的に大きな投資が行われる予定です。
Q.最近、スポーティーな時計が増えてきました。グルーベル フォルセイから女性向けの時計も出てくるのでしょうか?
A.もちろん、レディスウォッチの分野に進出することは考えています。
Q.eコマースは戦略の一部にありますか?
A.現在のところeコマースは、私たちの戦略にはありません。独立系ブランドとして、お客様と個人的に接し、サービスを提供することは、私たちのビジネスにとって不可欠な要素であることに変わりはありません。その一環として現在、中古認定のプログラムの拡張を進めており、それにはeコマースの要素が組み込まれています。しかしパーソナルなアプローチを大切にした手から手へのスタイルは変わることはありません。
Q.大切な戦略要素のひとつにコミュニケーションがあります。若いコレクターに、グルーベル フォルセイの時計に投資する意味があることをどのように伝えていくおつもりですか?
A.今日、ブランドについて語っていく必要があるというのは正しい認識です。グルーベル フォルセイが提案するユニークな製品について知ってもらう必要があります。更なるステップを踏めるよう、これに関する新しいビジョンに着手しています。
Q.コレクションの中でも、お気に入りはどのモデルですか?
A.今年の初めに発表した「GMTスポーツ」はとても気に入っています。とてもモダンな外観を持ち、装着感もよく、チタン採用のため非常に軽量です。ただ、時計作りの傑作である「ハンドメイド1」や「グランソヌリ」に無関心でいることはできません!
Q.時計業界を変えられるとしたら、どんなことをしたいですか?
A.個人的には、この業界は素晴らしいノウハウの恩恵を受けていると思いますが、製品に関しては一部のブランドを除いて、創造性や差別化に欠けていると思います。また新しい顧客層には夢が必要であり、そのために私たちはコミュニケーションに工夫を凝らす必要があると思います。
https://www.webchronos.net/features/64354/
https://www.webchronos.net/features/52579/
https://www.webchronos.net/features/28746/