時計製造に用いられる貴金属の中でも貴重で、特別なタイムピースに使われる素材といえばプラチナである。今回はプラチナモデルの中でも、さらに限定数も少なく、なかなかお目にかかることができないであろう腕時計を5本選び紹介しよう。
Text by Mark Bernardo
2022年2月8日掲載記事
アーミン・シュトローム「ツァイトガイスト」
アーミン・シュトロームは、時計学上の重要な発明である、ふたつの独立した振動子を柔軟な共有サスペンションで結び、計時精度への円滑な動力伝達を実現する特許取得の「レゾナンス・クラッチ・スプリング」を発表してから5年目を迎える。2016年に始まったレゾナンスシリーズより、このたび第5弾となる「ツァイトガイスト」が発表された。直径43mmのケースはプラチナ製で、文字盤の役割を果たすオープンワークが施されたムーブメントにはステンレススティールや真鍮、ジャーマンシルバーなどが採用されている。文字盤からはレゾナンス・クラッチ・スプリングだけでなく、ふたつのテンプが手巻きムーブメントの縁に取り付けられ、約80時間のパワーリザーブに貢献している様子が鑑賞できる。特筆すべきはそれぞれのテンプに連動したふたつのスモールセコンド表示であろう。本モデルはユニークピースとして製造された。
アーノルド&サン「ルナマグナ プラチナ」
腕時計としては最大級の3Dムーンフェイズが目を引くアーノルド&サン「ルナマグナ プラチナ」。直径12mmの大理石とアベンチュリンでできた球体の月が、満天の星空を思わせるアベンチュリンの文字盤に浮かんでいるのが特徴だ。この月球儀はムーブメントの厚さの中にぴったりと収められ、文字盤側、ケースバック側ともサファイアクリスタルガラスによって鑑賞可能となっている。時刻表示をするオフセンターの文字盤はマザー・オブ・パール製で、青焼きの針とローマンインデックスが組み合わされている。ポリッシュ仕上げの直径44mmのプラチナケースには、高級時計にふさわしい入念な仕上げの施された手巻きキャリバーA&S1021が搭載され、約90時間のパワーリザーブを保持している。世界限定28本。
F.P.ジュルヌ「オートマティック」
2001年に発表されたF.P.ジュルヌ初の自動巻きムーブメント搭載「オートマティック」にオマージュを捧げた本モデルは、プラチナケースとサテン仕上げのイエローゴールド文字盤を備えている。自動巻きキャリバー1300.3は、現在のF.P.ジュルヌのムーブメントのほとんどで採用されているゴールドではなく、ロジウムメッキの真鍮製で、文字盤の仕上げはフランソワ-ポール・ジュルヌが初期に採用していた手仕上げのものに近い。ケースサイズは直径40mmで、サファイアクリスタルを風防とケースバックに用い、エレガントで控えめなリュウズを備える。20年前の既存作と比べて異なるのは、パワーリザーブ表示を8時半位置に、大きくなった日付窓を11時半位置に配したことや、オフセンターの時分表示のサブダイアルに配されている数字がわずかに大きくなった点であろう。ムーブメントにはオープンワークが施された受けが採用されている。世界限定99本。
パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF スプリットセコンド クロノグラフ」
パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF」シリーズより、希少性の高いタイムピースが発表された。一体型スプリットセコンド・クロノグラフムーブメントを搭載し、ケース、ブレスレット、文字盤のすべてがプラチナで出来ている限定モデルだ。文字盤には12時位置にアプライドで楕円形に配されたPFロゴや、2層で表示されるスモールセコンドなどの要素を見ることができ、また人間工学に基づいたティアドロップ型のクロノグラフプッシャーなどの特徴もある。ムーブメントにはパルミジャーニならではのオープンワークが施されたキャリバーPF361を採用し、毎時3万6000振動の高振動で約65時間のパワーリザーブを保持している。このムーブメントは主に金無垢のパーツで構成されており、2017年にGPHGの受賞歴があるクロノール ムーブメントの現代バージョンだ。モノクロな外観に合う、マットなサンドブラスト仕上げが文字盤、ケース、ブレスレットに施されている。世界限定25本。
ヴァシュロン・コンスタンタン「トラディショナル・スプリットセコンド・クロノグラフ・エクストラフラット コレクション・エクセレンス・プラチナ」
2021年、ヴァシュロン・コンスタンタンの特別なプラチナコレクション「コレクション・エクセレンス・プラチナ」に加わったこの限定モデルは、2015年に開発された薄型のスプリットセコンド・クロノグラフムーブメントであるキャリバー3500を搭載する。プラチナ950製のケースは直径42.5mmで、厚さはわずか10.72mm。角型のクロノグラフプッシャーも含めてポリッシュ仕上げが施されている。同じくプラチナ製のサンドブラスト仕上げの文字盤は、戦中・戦後における同ブランドのスプリットセコンド・クロノグラフ搭載モデルにオマージュを捧げたヴィンテージスタイルだ。その縁にはプリントされたタキメーターの目盛りやホワイトゴールド製のアプライド・インデックスがあしらわれている。3つ目のインダイアルはそれぞれ、3時位置がクロノグラフの60分積算計、9時位置がスモールセコンド、6時位置は約48時間のパワーリザーブを表示する。アリゲーターストラップのステッチにもシルクとプラチナの縫い糸が用いられた。世界限定15本で、それぞれに個別シリアルナンバーが入る。
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