2020年夏、ティソは人気のダイバーズウォッチ「シースター」コレクションに、600mの防水性能と新しい波模様の文字盤を備えた「ティソ シースター 2000 プロフェッショナル」を追加してラインナップを強化した。今回は実際にこの腕時計を着用し、そのレビューをお届けする。
Text by Roger Ruegger
2022年2月15日掲載記事
プロフェッショナルダイバーに求められる高い機能性とクオリティを標準装備
ティソがシースターコレクションを発表したのは2003年のこと。ファーストモデル「シースター1000」は1000フィート(=30気圧)の高い防水性を実現した自動巻きダイバーズウォッチで、9時位置にヘリウムエスケープバルブを採用していた。また秒針のT字型カウンターウェイトも当時から見られる特徴である。デザインにおいて変化した点もあり、例えば2018年からは従来のスネークヘッド型の時分針の採用をやめ、代わりにポリッシュ仕上げの剣型の針が採用されている。
多くの時計ブランドがレトロなデザインのダイバーズウォッチに注力し始めた時に、ティソは過去に培った重要な要素をうまく使いながら、シースターに現代的な側面を加えていった。現代的な側面といえば、2019年にはシースターからに「シリコン製ヒゲゼンマイ」を採用した「パワーマティック 80(ETA C07.811ベース)」搭載モデル(Ref.T120.407.11.041.01)を発表し、つまり同コレクションの戦略的な展開をほのめかしたのである。ティソCEOのシルヴァン・ドラは、「シースターはティソの4番目のラインであり、販売面で非常に重要なラインとなりつつある。4年前にスタートしたばかりの新しいラインであるにも関わらずです。そしてこのラインにはティソの実力を示すことができる点でも重要です」とコメントしている。
このアプローチの明確な表現を裏打ちするのが2020年初頭に発表された「シースター 1000 プロフェッショナル リミテッドエディション クロノグラフ」(Ref. T120.614.11.041.00)であろう。ここでティソは初めてヘリウムエスケープバルブを内蔵したベゼルロック機構(10時位置)を開発し特許を取得した。この時から、「プロフェッショナル」という言葉は、飽和潜水の同意語となっている。このような環境で機械式ダイバーズウォッチを使用する機会は限られるかもしれないが(アメリカの労働統計局によれば商業ダイバーのうち飽和潜水士として働いているのは約10%)、ことダイバーズウォッチに関しては、技術的スペックが高すぎることに意義を唱える者はいないだろう。
2021年発表の「ティソ シースター 2000 プロフェッショナル」は、9時位置にヘリウムエスケープバルブを内蔵しているだけでなく、エングレービングが施されたセラミックスベゼルが備わっており、(シースター 1000のフラットなポリッシュ仕上げのセラミックスインサートベゼルに比べて)視覚的訴求効果を大きく高めている。さらに重要なのは、同時に発表された3仕様すべてに、シースター 2000 プロフェッショナル用に特別にデザインされた波模様のグラデーションダイアルが採用されていることだ。防水性能は2000フィート(=600m)に向上し、直径46mmのケースサイズは、既存の直径48mmのクロノグラフモデルと、43mmのシースター 1000 オートマティックとの程よい中間サイズとなっている。ブルーとターコイズモデルは手元で華やかに光を反射し、ダークグレーモデルはもう少し控えめなものを探している人にうってつけだ。
文字盤の波模様以外にも、シースター 2000 プロフェッショナルの6時位置には長方形のデイトウィンドウが備えられている。そして本モデルはISO 6425がダイバーズウォッチに対して求めるすべての基準に準拠している。搭載するのは、2013年にブランド創業160周年を記念してデビューした自動巻きムーブメント「パワーマティック 80」(ETA C07.111)だ。これは23石を備えるETA2824をベースとしているが、振動数を4ヘルツから3ヘルツ(毎時2万8800振動から2万1600振動)に抑えたことによりパワーリザーブを最長80時間へと増強している。それに加えてパワーマティック 80は、耐磁性のあるチタン合金のニヴァクロン製ヒゲゼンマイを採用している。名前から推察されるようにニヴァクロンはスウォッチ グループ傘下でテンワとヒゲゼンマイの生産に特化したスイスの専門会社、ニヴァロックス・ファーが開発したものだ。
つまりシースター 2000 プロフェッショナルは、これまでのティソの機械式ダイバーズウォッチの中でも(防水性に関しては)究極であり、ティソが期待される「男性的なカラーとしっかりしたサイズ感、個性的な文字盤と主張のあるドーム型サファイアクリスタル製風防、妥協のないデザインの組み合わせに基づく強いスタイル」を備えている。特に重要なのは、シースター 2000 プロフェッショナルはシースター 1000同様に、現代のダイバーズウォッチとして素晴らしい費用対効果と手首における存在感を示してくれるということであろう。
モデル名や位置付けを考慮して少し整合性の取れないところを挙げるとすれば、遊び心あふれた文字盤のデザイン、グラデーションが施されたカラー、エレガントな6時位置のデイトウィンドウではないかと思う。ただツールウォッチのデザインに、新風を吹き込むことを評価しない人がいるであろうか?
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