近年、時計の文字盤はよりカラフルになりつつあるが、色調や質感のパレットを広げるだけでなく、自然界の大地や動植物から得たインスピレーションを表現する腕時計も登場するようになってきた。今回は文字盤をキャンバスに自然の神秘を表現した5本の腕時計を紹介しよう。
Text by Mark Bernardo
2022年2月16日掲載記事
ショパール「アルパイン イーグル ケイデンス 8HF」
ショパールの「アルパイン イーグル」コレクションは、初のスポーツウォッチである1980年代の「サンモリッツ」のデザインDNAと、鷲の目の虹彩を思わせるモダンで有機的な質感のダイアルモチーフが融合したものである。自然をテーマにしたこのコレクションに加わった「アルパイン イーグル ケイデンス 8HF」には、2点のブランド初の試みがある。まずはショパール独自のルーセントスティールA223やエシカルゴールドではなくチタンを用いたこと、そして超高振動のムーブメント、キャリバーChopard 01.12-Cを初搭載したことだ。このムーブメントは、摩擦係数の高い部品にシリコンを多用することで、5万7600振動(8Hz)という驚異的な振動数を実現している。アルプスの村の屋根をイメージしたヴァルスグレーカラーの文字盤には鷲の虹彩模様、秒針には鷹の羽がモチーフのカウンターウェイトが採用されている。直径41mmのケースには、洗練された仕上げが施された一体型ブレスレットが組み合わされている。世界限定250本モデル。
グランドセイコー「エボリューション9 コレクション セイコー創業140周年記念限定モデル」
年輪が醸し出す自然美をイメージした文字盤デザインを備え、2021年に発表された「エボリューション9 コレクション セイコー創業140周年記念限定モデル」は、グランドセイコーが掲げる「THE NATURE OF TIME」という考え方に根差している。いくつもの仕上げを組み合わせたことで、年輪のような変化に富んだ木の質感が感じられる視覚的効果は、セイコーが140年かけて歩んできた成長のシンボルだ。直径40mmのプラチナ製ケースは鏡面研磨とヘアライン仕上げを組み合わせたファセットが特徴である。アワーマーカーや12時位置の「GS」アプライドロゴはゴールド製で、その証しとして6時位置にはSDマークが配されている。ムーブメントには毎時3万6000振動の振動数と約80時間のロングパワーリザーブを兼ね備えたハイビートキャリバー9SA5を搭載し、日差+5~-3秒の高精度を実現している。世界限定140本モデル。
モンブラン「モンブラン 1858 ジオスフェール リミテッドエディション 1858」
アルプス山脈東部、チロル出身の登山家ラインホルト・メスナーは2004年にゴビ砂漠の単独横断を成功させた。これにインスピレーションを受けたモンブランが、自社の山岳探検をテーマにした「ジオスフェール」コレクションに追加した限定モデルが「モンブラン 1858 ジオスフェール リミテッドエディション 1858」である。直径42mmのブロンズケースに砂漠色のフュメダイアルと、ジオスフェールコレクションの特徴であるコンパスをモチーフにした両方向回転ベゼルが組み合わされており、このベゼルはケースと同じくブロンズ製で、ブラウンセラミックスのインサートが施されている。文字盤の12時位置と6時位置にはそれぞれ北半球と南半球を表すふたつの回転する半球を配し、ヴィンテージ感のあるゴールドトーンのカテドラル針、9時位置に第2時間帯表示のサブダイアル、そして3時位置にデイト表示を備えた特徴的なワールドタイムウォッチだ。ムーブメントはセリタSW300-1をベースに自社製モジュールを搭載した自動巻きキャリバーMB29.25で、ゴビ砂漠の炎の壁のイメージで装飾されたケースバック内に内蔵されている。
ノルケイン「アドベンチャー ネベレスト 40mm グレーシャー」
ノルケインは2021年、アドベンチャーコレクションに「ネベレスト」シリーズを追加した。このシリーズの売り上げの10%は、ヒマラヤ山脈で命を落としたシェルパ(登山家たちのサポートを専門とするプロフェッショナル)の家族を支援し、その子供たちが教育を受けることができる環境を提供するチャリティー組織「バタフライ ヘルプ プロジェクト」に寄付される。ネベレストシリーズの中でも、ヒマラヤ山脈から影響を受けているのがグレーシャーモデルであり、氷のような白い文字盤に入る亀裂のような質感にその名は由来する。この模様はまたエベレスト登頂の行程のうち、もっとも難易度の高いクンブ氷河のギザギザしたクレバスをも想起させ、そこにベゼルのゼロマーカーや、センターセコンド針と6時位置の「CHRONOMETER」表記の赤色などがアクセントとなっている。直径40mmのステンレススティールケースはトランスパレントバックを備え、約70時間のパワーリザーブを保持し、スイスアルプスをシンボルとしたダブルNのロゴを配したローターを備えたノルケインのキャリバーNN20/1が鑑賞できる。
オリス「オカバンゴ エアレスキュー リミテッド エディション」
オカバンゴ・デルタは、ボツワナ北部、オカバンゴ川の氾濫原が造りだすアフリカ最大級の大湿地帯であり、世界遺産にも登録されている。オリス「オカバンゴ エアレスキュー リミテッド エディション」のグリーンダイアルはこの地からインスピレーションを得たものであり、そしてこのモデルはボツワナの人々や観光客に質の高い医療サービスを提供する航空医療レスキュー隊「オカバンゴ エアレスキュー(O.A.R)」の10周年を記念したものである。ベースとなったのは、レスキューパイロットの功績を称えるにふさわしいオリスのビッグクラウン プロパイロットシリーズだ。ジェットタービンをイメージしたケースサイドのコインエッジのモチーフや、モデル名の由来となっている大きなフルート型のねじ込み式リュウズなど、おなじみの特徴を見て取ることができる。直径41mmのステンレススティール製ケースにはセリタ製ムーブメントをベースとした約38時間のパワーリザーブを備える自動巻きキャリバーOris 751が搭載され、ケースバックには特別なエングレービングが施されている。
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