2021年にシチズンが発表した「プロマスター メカニカル ダイバー200m」。軽量で頑丈な独自のチタニウム素材や高い耐磁性能の新型自動巻きムーブメントを採用する本モデルからは、長年シチズンで受け継がれるダイバーズウォッチのデザイン哲学も感じ取ることができる。この時計を実際に着用したWatchTime編集部によるレビューをお届けする。
Text by Roger Ruegger
2022年2月23日掲載記事
200m潜水用防水性能と第2種耐磁性能を兼ね備える高い機能性が魅力
2021年3月、シチズンから機械式ダイバーズウォッチの系譜を継ぐ「プロマスター メカニカル ダイバー200m」が発表された。時計業界で似たような外観のダイバーズウォッチが多く生み出されるなか、異彩を放つ個性を備えたモデルだ。色違いで3種類が展開された中から、今回はモノトーンに赤色がアクセントに加えられたRef.NB6004-08Eを着用レビュー用にピックアップした。
ケースは2ピース構造で、直径46mm、厚さは15.3mmあり、ラグからラグまでの長さは約50mmある。手首に装着したときの存在感は抜群だ。素材にはチタニウム加工技術と表面硬化技術を施したシチズン独自の「スーパーチタニウム」を採用する。これはステンレスに比べて40%軽量な素材であり、そのため時計の見た目の大きさに対して軽い着け心地をもたらすものである。
本モデルからは無骨でインダストリアルな印象が漂っている。サイズ感だけでなくデザイン要素も大きな要因だ。ベゼルと文字盤には、スタッズのような細かいピラミッドパターンが施されている。文字盤には見る角度によって濃淡が変わるグラデーションも採用されている。ベゼルの縁周りに配された凹凸の大きな形状もまた、この時計の特徴のひとつであり、ベゼルを掴みやすくして操作性を高める役割を担ったものだ。このようなディテールから、個性を確立するとともに、機能美を追究するシチズンのデザイン哲学が感じ取られる。
余談ではあるが、シチズンのダイバーズウォッチの重要なアーカイブのひとつに、1982年発表の「プロフェッショナルダイバー」がある。これは当時世界で最も高い1300mの耐圧性を記録したモデルであり、独創的なケース形状を特徴としたものだ。その個性のひとつが、凹凸の大きな回転ベゼルであった。プロマスター メカニカル ダイバー200mに、このDNAが息づいているように感じられる(なお「プロフェッショナルダイバー」のオマージュモデルとして、「プロマスター メカニカル ダイバー200m」と同時期に光発電ムーブメント搭載の「エコ・ドライブ ダイバー 200m」も発表されている)。
特筆すべきはシチズンがこの時計に、キャリバー9051(ミヨタキャリバー9015の派生版)を搭載したことだろう。これは刷新された「シリーズエイト」コレクションで導入された新しい自動巻きムーブメントであり、センターセコンドとデイト表示を備えている。このムーブメントのヒゲゼンマイをはじめ一部のパーツには耐磁性を持つ素材が採用されている。シチズンによると「1万6000A/mの磁気を発する機器に、1cmまで近づけても性能が維持できるレベル」ということだ。耐磁性に加え、同ムーブメントは約42時間のパワーリザーブを備え、日差-10から+20秒の精度を保持している。
視認性に関しては改善の余地があるだろう。ベゼル上のインデックスは背景に対してコントラストが弱く、ピラミッドパターンも視認性を高めることには貢献していない(面白いことにベゼルの視認性は陸上よりも水中の方が高い)。しかしながら文字盤に関しては高い視認性が確保されている。面積の広い時針や、赤色の縁取りがされた分針、大きなインデックスには蓄光塗料が十分に塗布されており、暗所でも読み取りやすくなっている。
「プロマスター メカニカル ダイバー200m」について語るべき点は他にも多い。ISO規格対応の200m潜水用防水は、ほとんどのダイバーにとって十二分のものだろう。また延長可能で利便性の高いダイバーズストラップが付属することも付け加えたい。税込み13万2000円という価格に対する仕上げと品質は素晴らしく、ドーム型サファイアクリスタル風防やグラデーションダイアルといった要素は未来的な雰囲気も醸し出している。
時計業界で似たり寄ったりのダイバーズウォッチが多く発表される中、プロマスター メカニカル ダイバー200mには多くのコレクターの心を引きつける個性が多く備えられた。それでありながら、本モデルは幅広いシーンで活躍できる時計として作り上げられている。シチズンの歴史的なビジュアル側面、そして現代的な素材を見事に融合させ、意外性と新鮮さを兼ね備えたダイバーズウォッチが完成したのだ。
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