自動巻きの時計、どこまで手で巻けばいいの?

2022.03.11

Q:自動巻きの時計、どこまで手で巻けばいいの?

自動巻きの時計が止まってしまった場合、手巻き機能付きのムーブメントの場合はリュウズを回せば主ゼンマイを巻くことができます。でも、一体どこまで巻けばいいの?

広田雅将

2022年3月11日掲載記事


A:秒針が動き出す程度に留めておいた方がいいでしょう

 自動巻きの時計が止まった時は、どこまで手で巻けばいいのか、という悩みをお持ちの方は少なくないようです。いくつかのメーカーは、仮に自動巻き時計が止まった場合、リュウズを何回巻けばいいかを指定しています。しかし、そうでない場合がほとんどです。

 筆者としては、自動巻き時計を手で巻くことを推奨しません。丸穴車と角穴車の間をつなぐ部品や、自動巻き機構が摩耗してしまうからです。仮に手で巻く場合は、秒針が動き出すまで巻き、あとは腕に載せて、自動巻きで巻き上げるのが良いでしょう。その際は、手巻き時計のような速いスピードではなく、ゆっくりとリュウズを巻き上げること。巻き上げるスピードを遅くすると、自動巻き機構への負荷は減り、摩耗が抑えられます。

ETA2892A2

代表的な自動巻きムーブメントCal.ETA2892A2。リュウズによる手巻きも可能だが、丸穴車と角穴車の間をつなぐ部品(デクラッチ)はあまり頑丈ではないため、負担を極力かけない方が無難。手巻き回数は最低限、針が動かすくらいまでが理想的だろう。

 なお、自動巻き時計のほとんどは、主ゼンマイの巻き過ぎを防ぐため、ゼンマイの終端にスリッピングアタッチメントという部品が付いています。この部品のおかげで、主ゼンマイが巻かれた状態でローターが回っても、ゼンマイが香箱の中でスリップして、巻き過ぎを防ぎます。

 香箱の中でパチンパチンという音が聞こえたら、スリッピングアタッチメントが滑っている状態です。自動巻き時計を手で巻く場合も、パチンパチンという音が聞こえたら、巻き過ぎと考えていいでしょう。自動巻き時計を手で巻くときは、ゆっくりと、しかも巻きすぎないこと。

 機械式時計の遅れ進みを調整する緩急針に変えて、テンプの錘を調整するのがフリースプラングテンプです。ショックに強いこの機構は、スポーツウォッチにはうってつけです。一昔前はパテック フィリップとロレックスしか使っていませんでしたが、今ではかなり普及するようになりました。もっとも、フリースプラングテンプが載ってなくても、ショックに強いムーブメントは多くあります。


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