2022年 A.ランゲ&ゾーネの新作時計まとめ

2022.03.31

A.ランゲ&ゾーネ ウォッチズ&ワンダーズ ブース

Photograph by Yu Mitamura


リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター

リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター

A.ランゲ&ゾーネ「リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター」
手巻き(Cal.L122.1)。40石。2万1600振動/時。Pt(直径39.0mm、厚さ9.7mm)。2気圧防水。ブティック限定50本。

「リヒャルト・ランゲ」ファミリーに、伝統にならった仕様でありながら現代にふさわしい進化がなされたミニッツリピーター機能を搭載する「リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター」が追加された。ブティックのみの取り扱いで50本限定となる。

 腕時計の鳴り物機構の中でも、分単位の正確さで作動するミニッツリピーターは最も難しく奥が深い複雑機構である。A.ランゲ&ゾーネにおけるミニッツリピーターの歴史は、19世紀末の懐中時計までさかのぼり、2013年にはラトラパント・クロノグラフや永久カレンダーなどを多数搭載するグランド・コンプリケーションでミニッツリピーターを復活させている。さらに、15年にはデジタル表示された時刻と打鐘数が一致する「ツァイトヴェルグ・ミニッツリピーター」を発表し、その技術力の高さを証明してきた。

リヒャルト・ランゲ・ミニッツリピーター

 今作の打鐘機構は伝統的な形式に則ったものだ。すなわち、低音と高音に調律されたふたつのゴングを備え、ケース9時側のスライダーを操作すると、低音で正時、重複音で正15分、高音で分の数を鳴らす。そして今作は、この伝統的な打鐘機構に3つの進化が加えられている。

 ひとつ目は、ハンマー打ち機構の一時休止省略機能である。任意の時間の0分から14分までは、正時を打った後に正15分を打つ必要がないため、従来の機構では正時から少し間をおいて(一時休止して)分を打鐘する。しかし今作はこの一時休止を省略し、正時の後に直ちに分を打鐘する。

 ふたつ目は、打鐘機構破損防止の保護機構である。従来は、ミニッツリピーター作動時にリュウズを引き出すと故障の原因となっていたが、これを防止するために、作動中はリュウズが引き出せない仕組みとなっている。

ミニッツリピーター ムーブメント

 3つ目は、ハンマーブロッカーである。これは、ハンマーがゴングを叩くたびに、一瞬だけハンマーを初期位置に留め、ハンマーが反動で再びゴングに当たらないようにする機構である。

 また、音質も高められた。明るく澄んだ音を長く響かせるため、ケース素材であるプラチナの音響特性と調和するようにゴングを手作業で調整し、組みつけている。部品を組み立ててはテストを行い、不十分であれば分解して部品を再調整することを繰り返し、今作は完成に至っている。そのため、仕上げにかける時間の大部分は、完璧な音響を作り上げる事に費やされている。

 このように組み立てられる手巻きムーブメントCal.L.122.1は、他のラインナップと同様にランゲ最高品質基準に準拠するものである。特に今作のハンマーはブラックポリッシュが施され、手作業で曲げられたゴングも艶やかに研磨されている。

Cal.L122.1

 このムーブメントを収めるケースは、同社の“構造とデザインが一体でなければならない”との基本理念に基づいており、プラチナ950製ケースは直径39mm、厚さ9.7mmに抑えられ、側面にはサテン仕上げが施される。またダイアルは、ゴールド無垢の表面をホワイトエナメルで覆った自社製であり、メインダイアルの外周部と中央部、スモールセコンドが別パーツとなっており、手作業でひとつのダイアルにつなぎあわされている。




オデュッセウス

オデュッセウス

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」Ref. 363.117
自動巻き(Cal.L155.1 DATOMATIC)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ti(直径40.5mm、厚さ11.1mm)。12気圧防水。ブティック限定250本。

 A.ランゲ&ゾーネ初のチタン製ケースとブレスレットを採用した「オデュッセウス」の限定モデルが追加された。ブティックのみの取り扱いで限定250本である。

 オデュッセウスは、同社初のステンレス製スポーティーモデルとして2019年に発表されたコレクションだ。ドレスウォッチを得意としてきた同社にとってチャレンジングなモデルであったが、良質な外観だけでなく、使い心地に配慮された操作系としなやかなブレスレットによって、その完成度は高く評価されている。

 そして22年の新たなチャレンジとして、オデュッセウスはチタン製ケースとブレスレットを身にまとった。同社の“決して立ち止まらない”信条を体現したモデルである。ケース直径は40.5mm、厚さ11.1mmでステンレスモデルと同等であり、ねじ込み式リュウズも同様に採用されて試験圧12バールに耐える防水性能を備える。ブレスレットもステンレスモデルと同様に微調整機構を内蔵したエクステンションバックルを備える。

 チタンはステンレスよりも約43%軽量であるため、既に評価を集めている装着感は、さらに高まっていることが期待できる。またチタンの表面は、光沢仕上げ、マット仕上げ、ブラシ仕上げが使い分けられており、光の反射によってさまざまな表情を持つものとなっている。

 従来モデルと同様に複数パーツが組み合わされた立体感にあふれるダイアルデザインは、新色のアイスブルーカラーに仕立てられた。また、ステンレスモデルでは同心円、18KWGモデルではダイアル中心から放射状の凹凸が与えられていた時リングの装飾は、本作では繊細なギョーシェ彫りの溝がゆるやかな弧を描いてインデックスに伸びるデザインが与えられている。この有機的な揺らぎのある独特な曲線は、この特別な本作に刻まれた銘となることだろう。

Cal.L155.1

 ムーブメントは従来モデル同様に、オデュッセウス用に設計されたCal.L155.1 DATOMATICを搭載し、パワーリザーブは約50時間、3時位置にアウトサイズデイト、6時位置にスモールセコンド、9時位置に曜日表示を備える。また、ブラックロディウム加工を施したプラチナ製分銅付センターローターを備え、A.ランゲ&ゾーネの最高品質基準に準拠した入念な仕上げが施されたムーブメントは、ケースバックから鑑賞可能である。




グランド・ランゲ1

グランド・ランゲ1

A.ランゲ&ゾーネ「グランド・ランゲ1」Ref.137.033
手巻き(Cal.L095.1)。42石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KPG(直径41.0mm、厚さ8.2mm)。

 直径41mm、厚さ8.2mmの新たなケースにグレーダイアルを収めた、「グランド・ランゲ1」が発表された。従来モデルも厚さ8.8mmと薄型設計であったが、さらに薄く仕立てられたことで、一段とエレガントなデザインを得ることとなる。

 初出の2003年以来、A.ランゲ&ゾーネのコレクションで不動の地位を築いているグランド・ランゲ1は、直径38.5mm、厚さ9.8mmの「ランゲ1」よりも一回り大きく、そして薄いのが特徴である。このプロポーションを実現するのは、12年の刷新から搭載する手巻きのCal.L095.1である。同ムーブメントのケース径に合わせて針の軸も若干外側に配置されており、細部に至るまでランゲ1ファミリーのデザインコードを踏襲している。また、ランゲ1のCal.L121.1では主ゼンマイをふたつ重ねたツインバレルであるが、Cal.L095.1は直径の大きな香箱ひとつによってパワーリザーブ約72時間を実現している。洋銀製地板および受けを持つムーブメントの仕上げはランゲ最高品質基準に準拠するもので、アイコンとなるグラスヒュッテストラップ模様の4分の3プレートやゴールドシャトンをはじめとして見どころが多い。

Cal.L095.1

 本作は18Kホワイトゴールドモデルと18Kピンクゴールドモデルの2種類が用意され、ケース素材に合わせて針やインデックスもコーディネートされている。組み合わされるグレーダイアルはグランド・ランゲ1コレクションに追加される新色となる。ダイアルは、ゴールドで縁取られた二窓式アウトサイズデイトや、一段低く加工されたサブダイアル、そこに載せられるローマ数字と菱形のインデックスと立体感に富み、わずかに荒らされたマットな質感や、レコード盤のようなアジュラージュ仕上げによって表情も豊かである。

 薄型化によってカフスへの収まりが良くなったのに加えて低重心化も期待でき、こちらも装着感の向上に寄与することだろう。

グランド・ランゲ1

A.ランゲ&ゾーネ「グランド・ランゲ1」Ref.137.038
手巻き(Cal.L095.1)。42石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG(直径41.0mm、厚さ8.2mm)。

Contact info: A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845


頭ひとつ飛び抜けた実用性を備える、A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」

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