創刊100号記念巻頭コメント
2005年10月にささやかに始まった『クロノス日本版』は、今号で100号を迎えました。支えてくださったすべての皆様に、まず御礼申し上げます。
2020年に感染拡大したコロナ禍にあって、私たちは、自分たちに何ができるのかを自問してきました。独裁者がウクライナに攻め込み、人々が戦禍に苦しむ中ではなおさらです。私たちの愛する時計趣味とは、世界が平和であることが、成立の前提であり、しかしそれは、わずか2年であえなく崩れ去ってしまったのです。病気や爆撃に苦しむ人々がいる中で、時計をことほぐことに意味があるのか?
それは、この世界に生きるすべての人々にとっての、重い自問であるはずです。
しかし、私たちは確信しています。創刊以来、私たちは国を、性別を、職業を、そして年齢を超えて、あらゆる人たちと楽しさや喜びを分かち合う機会を得ました。それをつなぐのは時計でした。このような困難な時期にあって、連帯を語るのは偽善かもしれません。しかし、私たちは、時計を含むすべての趣味が、あらゆる制約を超えて、人々に喜びとつながりをもたらすことを強く確信しています。それはささやかな「平和」かもしれません。しかし、個々人の平和は、やがて周囲に平和をもたらすかもしれない、と考えるのは、荒唐無稽かもしれませんが、決して無意味ではないはずです。
次の100号までに、『クロノス日本版』に、そして社会に、何が起こるのかはまったく予想できません。しかし、趣味は、喜びは、そして人とのつながりは、いっそうの価値を持つはずです。そして、その一助として、私たちが今後も皆さんのそばにあり続けることができれば、それに勝る喜びはありません。改めて、皆様のサポートに心から感謝します。
『クロノス日本版』編集長 広田雅将