時計と自動車に向ける情熱が融合した、ローラン・フェリエ「スポーツ・オート」

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2022.04.05

ハイエンドな時計好きであれば、ローラン・フェリエのことは知っているだろう。創設者であるローラン・フェリエは、パテック フィリップに37年間勤めた時計師であり、自動車好きでもあった。氏の時計と自動車に向けるふたつの情熱が今回紹介する「スポーツ・オート」の起源である。

スポーツシックな直径41.5mmのクッション型ケースには、ブルーのオパラインダイアルにチタン製ケースと一体型のブレスレットが組み合わされ、そしてマイクロローター搭載の新しい自動巻きムーブメントが備えられている。

年産125本を予定しているこの時計について詳しくお伝えする。

Originally published on MONTRES DE LUXE
2022年4月5日掲載記事

プラチナ950製の錘を採用したマイクロローターによる新型自動巻きムーブメントを搭載

スポーツ・オート

自動巻き(Cal.LF 270.01)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。チタニウムケース(直径41.5mm、厚さ12.7mm)。12気圧防水。607万2000円(税込み)。

「すでにご存知の方も多いと思いますが、私たちは友人のフランソワ・セルヴァナンとともに、2009年にローラン・フェリエというブランドを設立しました。この旅の始まりを理解するためには、約40年前に遡る必要があります」とローラン・フェリエは語る。

 そして「1979年6月9日、ル・マンのサルト・サーキットでのことだ。フランソワと私は、ル・マン24時間耐久レースのスタート準備をしていました。チームを組んですでに数年が経つが、緊張は高まる。私たちのポジションはスタートラインから20番目でした」と続けた。

「3分55秒080の予選タイムにより、第5グループの1位となりました。午後2時、レースが始まる。フランソワは、我々のポルシェ 935でランキングに食い込むべく、スタートを切りました。24時間のレース後、トラック292周、走行距離3988.254km、"ユノディエール"の直線コースでの最高速度312km/h、雨の夜とまぶしい日の出。それから、最高潮のストレス、物資補給や修理、ドライバーチェンジのための24回のピットストップ。これらを経て、1979年6月10日午後3時、チームメイトのフランソワ・トリスコーニがゴールラインを超えました。ポール・ニューマンのすぐ後ろにつけ、全体の順位では3位。我々3人のようなアマチュアドライバーにとっては快挙でした!」

スポーツ・オート

アセガイ型の時・分針、バトン型の秒針、インデックスはそれぞれ18Kホワイトゴールド製である。

 この日、パドックではローラン・フェリエがフランソワに対してノーチラスを贈り、分かち合った成績に対する感謝の意を表したというエピソードが残っている。そしてこの贈り物に触発された根っからの実業家だったフランソワは、その後友人を冒険へと連れ出すことになる。「この快挙の後で、一緒にチームを組んで自分たちの時計を作り出すという冒険を続けるのはどうだろうか?」と。

 しかしながら2009年に時計ブランド「ローラン・フェリエ」が生まれるまで、30年の時が過ぎた。2022年現在、ル・マンにおけるあの素晴らしい表彰台から40年以上が経過しているが、「今でもこの記憶を毎週のように思い起こしていました」とローラン・フェリエは語る。「この思い出が私たちに“レース中に着用できる理想的なタイムピースを作ろう”と考えさせ、スポーツ・オートをデザインするに至りました」と続ける。

「スポーツ・オート」と名付けられたこの時計は、直径41.5mmのグレード5チタン製のケースを備える。ベゼルと緩やかなトノー型のミドルケースで構成されるフォルムはローラン・フェリエのデザインコードに則ったものだ。ベゼルは円形のサテン仕上げ、ケースサイドはミラーポリッシュ仕上げ、ミドルケースは垂直なサテン仕上げというように各部に異なる仕上げが施されている。それぞれがコントラストを成し、チタンの加工としては素晴らしいものである。

スポーツ・オート

スーパールミノバが塗布され、暗所でも視認性を発揮する。

 グレード5チタンを使用したメタルブレスレットにも、ポリッシュ仕上げの側面とサテン仕上げの垂直方向が強調されたデザインが採用され、センターリンクの傾斜した側面に至るまで丁寧なポリッシュ仕上げが施されている。

 ブランドの特徴であるボール型リュウズは、ここで初めてねじ込み式となり、ミドルケースへエレガントに組み込まれている。しっかりとした刻みは心地よい操作感を与えてくれる。このねじ込み式リュウズと120mの防水性能により、日常生活における快適な装着感を確実なものにしている。

 時計の上に被さるドーム型のサファイアクリスタルは、ローラン・フェリエのデザインコードを備えた文字盤を余すところなく見せてくれる。ブルーダイアルは、グラデーションのかかったオパライン仕上げだ。針とインデックスはホワイトゴールド製で、グリーンのスーパールミノバが塗布され、全体をまとめ上げている。6時位置にはブルーのスモールセコンドのカウンターがあり、グレーの目盛りによって引き立てられている。

 ミニッツトラックもグレーで、ロゴと中央の十字も同様に揃えられ、3時位置の開口部でデイト表示が行われている。トゥールビヨンモデルと同様に、「SPORT AUTO」の表記が、背景と同系色でセンターの針とスモールセコンドの間に配され、全体の構成をまとめている。

スポーツ・オート

エッジ部分の面取り、表面の鏡面仕上げ、内部の亜鉛メッキ、サテン仕上げなど、ムーブメントひとつあたり139工程以上の手作業による仕上げが施されている。

 搭載されるキャリバーLF270.01は、ローラン・フェリエの独自開発による2番目のカレンダー搭載自動巻きムーブメントだ。このムーブメントはデザイン、装飾、組み立て、調整のすべてがローラン・フェリエの工房で行われている。

「オフセンターのマイクロローターを備える自動巻きムーブメントは、スイスレバー式脱進機を搭載しています。スポーツウォッチとして適応するよう、耐衝撃性や耐振動性に優れるこのムーブメントは、従来のラチェット式に代わり逆回転防止ボールベアリングを搭載しています」とブランドは詳細を伝えている。
 
 マイクロローターにはプラチナ950製の錘が取り付けられており、地板と受けの間に直接配されることによって理想的な安定性と最大限の巻き上げが担保されている。完全巻き上げ状態で、安心できる約72時間以上のパワーリザーブを保持する。

 サファイアクリスタル製ケースバックは、スポーツカーに見られるような特別なネジによって留められ、ブランド最初の自動巻きムーブメントの設計コードが踏襲されている。

 LF270.01キャリバー1点に対し、139以上もの手仕上げの工程が必要とされる。マイクロローターを備えたムーブメントのローターブリッジにはとりわけ丁寧に手作業で装飾が施されている。角には面取りがされた後、リンドウの茎またはダイアモンドパウダーで仕上げがなされる一方、表面はミラーポリッシュとなる。その他にもムーブメントには複数の入り角があり、鉛で研磨した面や、サテン仕上げ、ペルラージュが施され、すべてがローラン・フェリエの工房において手作業で行われる。
 
 ローラン・フェリエの歴史の中で初めて、マイクロローターにプラチナ950を採用し、平行なサテン仕上げが施されたルテニウム加工のブリッジとのコントラストをより現代的にしているのも特筆すべき点である。


Contact info:ローラン・フェリエ(DKSH マーケットエクスパンションサービスジャパン) cg.csc1@dksh.com


ローラン・フェリエの創業10周年を記念した 2020年新作「クラシック オリジン オパライン」

https://www.webchronos.net/news/50180/
ローラン・フェリエ「トゥールビヨン グランスポーツ」にブレスレットモデルが追加登場

https://www.webchronos.net/features/46568/
元レーサーのローラン・フェリエ 2019 新作モデル「トゥールビヨン グランスポーツ」

https://www.webchronos.net/news/31105/