高度な技術と知見を元に、奇想を極めた腕時計を生み出し続けるウルベルク。「UR-112 アグリガット オデッセイ」は、デジタル式の時分針表示とパワーリザーブ表示を備え、秀逸な仕上げのチタンとステンレススティールケースを組み合わせた仕様だ。さながら手首の上の宇宙船のような存在感を放つこのモデルで、ウルベルクは自らのリミットをさらに広げている。
2022年4月6日掲載記事
長いシャフトを組み込んだ自動巻きムーブメントで実現する奇抜な時間表示
2022年2月にウルベルクが発表した「UR-112 アグリガット オデッセイ」。その外観には平面、曲面、溝、彫刻、ネジ、接合面など、さまざまな要素が組み合わされている。いずれもマットとツヤ、サンドブラストとポリッシュを繰り返す仕上げだ。緻密で繊細な仕事は、UR-112の特徴である"コックピット"、つまり透明なシリンダーの中で行われるデジタル表示を際立たせている。このモデルはスペシャルプロジェクト・ラインに含まれ、ここではブランド創設時のコンセプトであるワンダリングアワーとは一線を画している。
サファイアクリスタル製のシリンダー内にデジタル式でジャンプ表示されるのは時間と分だ。左側が時間、右側が分で、分は1分単位ではなく、5分単位で表示される。それぞれブラックアルミニウム製の三面体の柱にアラビア数字で刻まれ、スーパールミノバが塗布されている。
パワーリザーブや秒表示は、側面にあるふたつのプッシャーを押して溝付きのステンレススティール製カバーを垂直方向に開閉させることによって確認できる。秒表示は、赤色のアルマイトのブリッジに取り付けられたシリコンディスクで構成されている。カバーは上面がポリッシュ仕上げ、下面はミラーポリッシュ仕上げ、縁はマイクロビーズ加工によるものだ。中央のボディはチタン製で、サテン仕上げ、溝加工、サンドブラスト、マイクロビーズ加工が施されている。2枚のステンレススティール製ウィングは、ボディに収まるようになっている。
このケースの構成要素には、それぞれ独自の質感が与えられている。まさに芸術作品と呼べるだろう。ウルベルクの共同創業者でチーフデザイナーでもあるマーティン・フレイは、「工房の時計師の傍らで、私たちのクリエイションが生まれるのを間近で見る幸運に恵まれました。また組み立ての最終工程にも立ち合いました。素材に生命の息吹が吹き込まれ、そして私の頭の中にしかなかった仕上げが目の前で現実化していったのです」と語っている。
そしてさらに、「紙の上で時計の輪郭を描き、洗練させる鉛筆の筆跡のように、チタンやステンレススティールの機械加工がクリエイションの過程を具現化していきます。そして職人の魔法と熟練の技によって、マイクロビーズ、サテン、ポリッシュ仕上げが施された完成品が命を持つようになります」と続けた。
共同創業者でマスターウォッチメーカーであるフェリックス・バウムガルトナーは、「今回、技術的な挑戦でもある宇宙船または未確認飛行物体を製作しながら、本当に自分たちが望むものをそこに込めました。このUR-112は純粋に常軌を逸脱していると思います。技術的にも、仕上げとしてもです。そのため5本という非常に限られた本数しか生産することができません。しかし、そこには時計作りの喜びがあるのです!」と語っている。
ケース内部には4ヘルツのモーター機構と調速機構を備えたキャリバーUR-13.01が内蔵されている。大きな香箱は約48時間のパワーリザーブを担保し、自動巻きローターと組み合わされている。キャリバーUR-13.01には、過去25年間のブランドの歴史を築いてきたモデルに見られるキューブやカルーセル式キャリングアームなどは備わっていない。
コックピット前面の表示モジュールと機械駆動をつなぐのは、数センチに及ぶシャフトだ。軽さと堅牢性を担保するこの軸はチタン製となっており、現在の時計作りでは一番長い部品ではないだろうか。この結合は、2本の90度のピニオンを介して時・分表示を駆動する新しい輪列によって実現されている。与えられた空間での回転を行うために遊星システムが採用されている。この運動学的アプローチにより、「UR-112 アグリガット オデッセイ」は全くユニークで型破りなデザインに仕上がっている。
Contact info:クロノセオリー Tel.03-6228-5335
https://www.webchronos.net/features/10164/
https://www.webchronos.net/features/38787/
https://www.webchronos.net/features/69661/