複雑機構を搭載した時計のなかでも、おすすめなのは美しさが特徴的なトゥールビヨンモデルだ。とりわけジラール・ペルゴの独自機構搭載機には、見た目で差が付く時計を見つけやすいだろう。トゥールビヨンの魅力とジラール・ペルゴのモデルを紹介する。
複雑機構「トゥールビヨン」について
トゥールビヨンは、優れた時計製造技術がなければ作れない複雑機構のひとつである。まずは、トゥールビヨンの歴史と仕組みについて理解を深めよう。
コンプリケーションの代名詞
トゥールビヨンとは、重力により生じる時計の誤差を減らす機構のことである。トゥールビヨンを搭載した時計は、装着時の姿勢に関係なく、どの向きから重力を受けても精度を高く保てる。
「パーペチュアルカレンダー」や「ミニッツリピーター」と並び、トゥールビヨンは世界三大コンプリケーションのひとつに数えられている。
これらの機構のうち、トゥールビヨンは最も作るのが難しいとされている機構だ。ブランド側は威信をかけてトゥールビヨンモデルを開発し、一方のユーザー側はステータスシンボルとしてトゥールビヨンモデルを身に着ける人も多い。
トゥールビヨンの誕生と歴史
トゥールビヨンが初めて世に誕生したのは1800年頃のことだ。発明したのは、天才時計師として業界の歴史に名を残すアブラアン-ルイ・ブレゲ(1747~1823年)である。
1775年、パリのシテ島に自身の工房を設立し、数々の画期的な機構を発明したブレゲは、時計の歴史を2世紀早めたといわれている人物だ。懐中時計を同じ向きで携帯し続けると精度が落ちる原因を研究し、ブレゲはトゥールビヨンで時計が受ける重力の分散に成功する。
1930年には、フランスの時計ブランドLIPが、トゥールビヨンを初めて腕時計に搭載した。クォーツ時計の登場によって一時期は注目されなくなったものの、1983年にブレゲが発表したトゥールビヨンモデルで人気が復活し、現在に至っている。
トゥールビヨンの仕組みと構造
時計の心臓部であるヒゲゼンマイに偏った重力が加わると、精度が落ちてしまう。ヒゲゼンマイに加わる重力をできるだけ均一に分散させることが、トゥールビヨンの役割だ。
トゥールビヨンは、ヒゲゼンマイやアンクル、テンプ、ガンギ車といったパーツを、キャリッジと呼ばれるかご状のパーツにまとめている。秒針の歯車となる四番車が固定されるため、一般的にトゥールビヨンモデルは秒針を持たない。
キャリッジがゆっくりと回転する独特の動きも特徴だ。この動作を鑑賞してもらうべく、多くのトゥールビヨンモデルの裏蓋はスケルトン仕様となっている。
トゥールビヨンの種類
トゥールビヨンには、キャリッジをブリッジで固定するタイプ以外にも、いくつかの種類が存在する。代表的なタイプを知っておこう。
見た目が美しい「フライング トゥールビヨン」
「フライング トゥールビヨン」は、キャリッジが浮いているように見せる機構である。通常のトゥールビヨンに比べ、見た目がより美しくなっている。
通常はキャリッジの上部もブリッジで押さえているが、フライング トゥールビヨンでは上部のブリッジをなくし、下部のブリッジのみでキャリッジを支える仕組みになっているのだ。
これにより、時計内部の構造や動作をより楽しめるように作られていることが、フライング トゥールビヨンの大きな魅力である。
ブリッジを見せるデザインへ「スリー・ブリッジ トゥールビヨン」
ブリッジに見せるパーツとしての役割を与えて、エレガントな表情に仕立て上げたのが「スリー・ブリッジ トゥールビヨン」である。ジラール・ペルゴが1867年に発表した機構だ。
初期型の誕生以降、ジラール・ペルゴはブリッジのデザインに数度の改良を加え、2021年には最新型のトゥールビヨンを発表した。
香箱、輪列、トゥールビヨンが縦一直線に並べられ、3本のブリッジがそれぞれを支えている。最新型のブリッジは地板の役割を果たしており、ブリッジがケース内で浮き上がって見えることも特徴である。